今日は雨だ
雨の日はあまり好きじゃない

コツコツコツコツ

毎日同じ道を行き
同じ道を帰る

コツコツコツコツ

今日もだ駅前で
道いっぱいに自転車が広がっている
邪魔だなと思いつつよけて歩く

コツコツコツコツ

キー!
後ろからくる自転車の音に驚き
何故か私がよける
何をそんなに急いでいるのだろう

コツコツコツコツ

駅前には私と同じように
同じ毎日を借り換えしている人が集まっている
通勤ラッシュは憂鬱でしょうがない
いつものように電車ですし詰めにされ30分でやっと着く

ふぅ
やっとのことでたどり着いた
いまの改札は電子マネーになりだいぶ便利になった
なんせタッチすれば通れるのだから

どん!

割り込みだ

チッ

舌打ちが聞こえてきた
確かに私は歩くのが遅い

「すいません」

コツコツコツコツ

やっと会社に着いた

私の仕事は事務だ
単純作業で簡単だが
ミスをすればすべてがずれてしまう
そうなれば人の手を借りてミスを探さなくてはならない
打ち間違えの無いように必死だ

勤務時間は8:00から17:00
休憩一時間
残業はない

仕事を終え来た道を帰る
やはり帰宅ラッシュにあたってしまう。

すし詰めになり
改札を通り
皆が散っていくなか
邪魔な自転車をよけて
いつもの道を帰る

「ただいま」

飼っているマルチーズのシロが出迎えてくれる

私は独り暮らしで
父と母はもういない

「ただいま」

仏壇に手を合わせる。

今日も大変だったよ
雨の日は音が聞こえづらいからね
駅前はもう少し整備できないのかな?
もうなれちゃったけど

仕事はミス無くうまくいってるよ
みんな優しいから楽しくやってる

「あ、改札でぶつかってきた人がいたな、舌打ちまでされて
あれはさすがに腹が立ったな」

でも仕方ない
私は目が見えないのだから

そう
雨の日は音が聞こえづらい
避けようにも物が見えない
早く歩こうにも段差が見えない
怒ろうにも顔が見えない
改札の場所も定期をかざす位置も

親の顔も
シロの色も
見たことがない

私の目は棒なのだから
コツコツと音をたてて進み
音の違いで壁が有るか無いかを判断する
とても不便だ

でもそれを恨んでいるわけではない

嫌なところが見える分
良いところも大いに見える

手を添えてくれる者
暖かく迎え仕事を与えてくれた
職場の皆さん
悪い人だけではない


これから何年も同じ毎日の繰り返しになるだろう
たぶん一般の人よりも規則正しく
歩く場所さえも変わらずに

それでも私は幸せです

「シロ、ご飯にしようか」

前へ進もうと思ったんだろ?
今のままじゃダメだと思ったんだろ?

じゃあその気持ち
忘れちゃダメだろ

今まで安全なところに隠れて
踏み出すことができなかった

フラフラしてる毎日に嫌気がして
何か始めなきゃと思って
でも今の生活が崩れるのが怖くて

それでもやっと一歩を踏み出したんだ

その気持ちに答えろよ
後悔とか先の不安とか
そのときになって考えろ

今は前だけ見て
先を見据えろ
立ち止まるな
ふりかえるな

今の気持ちに答えろ

前へ前へ
真冬の夜に一人で帰る

歩いているのに芯まで冷える

ふと見上げるすんだ空は

真夜中なのに明るくてらす街灯達で

きれいなはずの星空がかすんでみえた

なぜか涙が一粒こぼれた

でもそれはすぐに乾いて

また歩きだす

なんだか空っぽの器が動いてるみたい

そういえば前に泣いたのはいつだろう

泣いたらスッキリするって聞いたけど

泣こうと思っても泣けないよ

すぐに泣ける人が羨ましい

もう寂しさも感じなくなってきてるから

ひとりで住む家に

ひとりで寝る布団

すこしあったかい