ここ数日間、音響のエピソードを書いてきましたが・・・現在の仕事は事務です。
というか、音響という仕事をメインの職業にはしませんでした。
 

学生時代、編集作業をするのが速かったので、名古屋にある音響会社の人に
「大学を卒業したらウチに就職しなよ」と誘われました。
東京での仕事で知り合ったフリーの音響さんに「卒業したら東京に出ておいで。
いっくらでも仕事あるから、一緒にやろう」と誘われました。

私は、どちらも断り、ある会社の事務員として就職しました。
自分の所属する劇団の公演と、依頼された土日のイベントだけ、それまで通り音響を続けました。
音響という仕事自体は好きだったのです。

それではなぜ、事務員になったのか。
なぜ、音響という仕事を選択しなかったのか。

それは、単に自信がなかったからです。 耳に。
音響という仕事は、音を客観的に聴けなければなりません。

技術面は、勉強すればなんとかなります。
というか、よほど難しいものじゃなければ、私もできるぐらいにはなっていました。

しかし、問題はセンスです。
サウンドチェックと言って、音響が自分の耳で聴きながら音を調整する仕事があるのですが、
それが、どうにもダメでした。
「ダメ」と言っても、誰かに文句を言われたわけでも、客から苦情が来たわけでもありません。
自分の中で、自信が持てなかったのです。

それは、なぜか。
自分の音楽の好みが偏っているから、です。

かつて、音響の先輩に「BUCK-TICK好きを捨てなければ、音響として幅が広がらないよ」と
言われたことがあります。
私も、自分でそう思っていました。
だって、客観的に聴いているハズなのに、どうしてもB-Tサウンドに近付けたくなってしまうのです。
「今井なら・・・」と無意識に思ってしまっていたり。
B-T
じゃなくても、インダストリアルっぽいというか。

聴きやすく、神経に障らないように、と心がけてサウンドを作るのですが、
本当は、私が求めるものは、逆なのです。
なるべく聴きやすいサウンドを上手く作ることはできるかもしれない。
いや、できます。
というか、そうしてきました。

でも、無理があります。
自分の心に反する作業をするのは、無理があります。

自分のセンスを変えるのも、難しい。
B-T
を聴いてはいけない、ということではありません。
B-T良し、でもその他も良し」という状態になるべきだということです。
一つのジャンルに固執するのがいけないのです。
でも無理です。 B-Tが最上なのです。 もうずっと。

ということで、私は音響を自分の職業とするのをやめました。
これで良かったと思っています。
B-T
のおかげで「音」が好きになり、「音」に関わる仕事が楽しかったけど、
あのままやっていたら「音」に苦しめられ、「音」自体を嫌うようになってしまっていたかもしれない。

それに、ホンネを言えば・・・客の方が断然ラクだしね~。