読者のみなさまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球


さて、お約束から1日遅れてしまいましたが、いよいよ「未来へ続く恋」-Final-が完成しましたので

ぜひ、お読みください。


みなさま納得のFinalとなっているとよいのですが…o(;-_-;)oドキドキ

どうか、お楽しみいただけますように・・・音譜


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    一条紗江子物語・・・

   ~未来へ続く恋~ ≪Final≫



「なんだぁ~ハグだけ?キスくらいしなかったの?」
田辺響子が、つまらなそうに顔をしかめた。


「はあ?一応空港よ!恋愛ドラマじゃあるまいし、ハグだけでもドキドキよー!」
私は、呆れ顔で答えた。



惣介を見送ってから3日目の休日。
私は、今回の出来事の黒幕である田辺響子を問い詰めてやろうと、朝から彼女のオフィスへ押しかけ

ていた。


「それでそれで?・・・その先はどうなったの?」
終始ふくれっ面で報告をしている私とは対照的に、身を乗り出して話の先をせがむ田辺響子は、まる

で女子高生が恋の話をする時のように瞳をキラキラとさせている。


「その先もなにも!あのままアメリカに行っちゃったんだからその先なんて何もありませんよ。明後日

帰ってくるって今朝メールが来たから、空港まで迎えに行く約束をしました!報告終わり!! 今度

は私がいろいろ聞く番よ!」

「なによ~そんなに怒ることないじゃない!・・・恋に目がくらんで見抜けなかった紗江子がいけないの

よ~」
田辺響子は、にやにやとしながらからかうように言った。


「だいたい、何で入江先生と組んだりするの?~もうこれじゃ弱みを握られたようなものだわ!」
「あら、お互い様じゃない。紗江子だって切り札は持ってるでしょ?・・・」
「そんなのもう時効よ・・・だいたいこっちには守秘義務があるけど、入江先生には何の義務もないじゃ

ない?」
「まあ、真面目ね~今度は入江先生の逆襲が始まるかも・・・ふふふ」
「もう!他人事だと思って!!」


さも楽しそうに笑う田辺響子を睨みつけながら、私はずっと聞きたいと思っていたことを口にした。
「ねえ、響子先輩もちゃんと話を聞かせてよ。」


すると、田辺響子は呆れたような表情を浮かべながら答えた。
「もう~終わりよければそれでよしでいいじゃない?・・・」

「でも、私はちゃんと知りたいの!」


詰め寄る私に観念したのか、田辺響子は仕方なさそうに話し始めた。

「あのね、紗江子が惣介君と再会した日ここへ来たでしょ?・・・あの時の紗江子を見ていて思ったの。

今の紗江子ならきっと惣介君とやり直せるって。だって、なんだかんだ言ってもあなたはずっと惣介

君のことを忘れられずにいたでしょ?・・・」


私は、素直に頷けず、曖昧な微笑みを田辺響子に返した。

すると彼女は、小さなため息をひとつついてからさらに話を続けた。


「それで、あなたが帰った後、すぐに入江先生に電話したの。最初はただ惣介君の様子を聞こうと

思っただけだったのよ。でも話しているうちに、入江先生に動いてもらうのが一番いいと思って・・・」
「それで?・・・彼に何て指示したの?・・・」
「指示なんて大げさなことはしてないわ。ただひと言”どんな手を使ってもいいから紗江子を追いつめ

て”って言ったの。入江先生もそれだけで理解してくれたのか、あっさり引き受けてくれたしね・・・」
「ええーー!!」


驚く私を見て、田辺響子は満足そうな笑みを浮かべた。


「あとは、これと言って指示もアドバイスもしてないわよ・・・紗江子は私が主犯だと思ってるみたいだ

けど、私はただの言いだしっぺで、結局はほとんど入江先生にまかせっきりだったもの」
田辺響子は、記憶をたどるように考えながら言った。


「そうなのー!?」
「ええ、そうよ。入江先生と紗江子は似てるのよ。だから入江先生もどうすれば紗江子が動き出すか

手に取るようにわかったんじゃない?」
「そんなぁ~!」
私は、情けない声を上げながらガクリと肩を落とした。


結局は、全てが入江直樹の思いのままに操られていたのだと納得せざるを得なかった。
彼自身も言っていた・・・私の気持ちが理解できると。


彼と妻の愛し合う姿を見て自分が変われたことは、素直に認めるし感謝もしている・・・
しかし、カウンセラーとしてのプライドは彼に操られたことを悔しがっていた。


「あーあ!そんな顔して!そこが紗江子の悪いところよ。恋の話と仕事を一緒にしないの!そんな

だからまともな恋もできなかったんでしょ?・・・」
さすがに、田辺響子には私の気持ちなどお見通しだ・・・見事に心の中を指摘されて、黙り込んでしま

った私を田辺響子が呆れ顔で見ていた。


<俺が愛したのは、心理カウンセラーの君じゃない・・・生身の一条紗江子だったのに・・・>


そう・・・惣介を追いかけた時、私は確かに生身の私だった。
2年前の私にはできなかったこと。
そして、私にそうさせてくれたのは間違いなく入江直樹・・・


―悔しいなんて思ったらバチが当たるわね・・・




「そういえば、琴子さんは何か言ってた?・・・彼女のことだからすごく喜んでくれたんじゃない?」
田辺響子は、言い過ぎたと思ったのか、急に優しい笑顔を見せながら私の顔を覗き込んだ。


「えっ?・・・ええ、とてもね・・・」
私は、曖昧に答えながらあの翌朝のことを思い出していた。


惣介を見送った翌朝いつも通りに登院すると、病院の門を入ろうとしたところで入江琴子が追いかけ

て来た。
しかし彼女は、私を呼び止めたままうつむいて何も言おうとしない・・・
『琴子さん、おはよう。どうしたの?そんな顔して・・・』
私は、入江琴子が言いにくそうにしていることをある程度推察しながらあえて尋ねた。
きっと、惣介のアメリカ行きを長期だと勘違いして慌てて私に知らせに来たことを気にしているのだろ

う・・・と。


案の定、彼女は意を決したように顔を上げると勢いよく頭を下げながら『ごめんなさい!』と言った。


『何を謝ってるの?・・・私、琴子さんに謝られるような覚えがないけど・・・』
私は、少し大げさなくらいに驚いて見せた。
すると、入江琴子はバツの悪そうな顔をしながら話し出した。
『栖原さん、本当はアメリカからすぐに帰ってくるのに、あんなに大騒ぎしちゃって私恥ずかしくて・・・

あの後、幹ちゃんから一条先生がタクシーに飛び乗って行ったのを見たって聞いて生きた心地が

しなくて・・・』


どうやら、入江直樹はあの後私がオフィスに押しかけて彼を問い詰めたことは話していないらしい・・・
私は、恐縮しきっている入江琴子の背中を撫でながら安心させるように答えた。
『そんなこと、気にしなくていいのに・・・それにすぐに帰ってくるとわかっていても私はきっと空港へ行

っていたと思うわ。だから、むしろ私の方が琴子さんにお礼をいわなくちゃ・・・いろいろ心配してくれて

ありがとうね』


それは、本当に素直に口から出た言葉だった。
たくさん悩み、迷いもしたけれど、昨日の自分の選択を思い出しながら、幸せを実感した瞬間だった。


私の言葉に、最初はきょとんとした表情を浮かべていた入江琴子は、不意にはっとしながら半信半疑

な顔で聞き返した。
『えっ?っていうことは、一条先生?・・・さ、栖原さんと?・・・』


私は、微笑みながら大きく頷いた。


その後のことは、今思い出してもなんだか照れくさくて、それでいて胸が熱くなる・・・
私が頷いた瞬間、満面の笑顔になった入江琴子は飛びつくように私に抱きついた。
他人である私の恋のことなのに、彼女はまるで自分のことの様に全身で喜びを表していた。
私の首にかじりつきながら『良かった。良かった』と何度も繰り返し言ってくれた彼女に、私はそこが

病院の入口であることすら忘れて同じ数だけ『ありがとう』と答えていた。


それから後のナースステーションでの大騒ぎは言わずもがなだ。
当然のように、私は大勢のナース達に取り囲まれて、質問攻めに合う羽目になった。


そして、入江直樹はいえば、廊下ですれ違ってももうあの時のように声を掛けてくることもなく、まるで

何事もなかったようにクールな態度のままだ。

ただ、すれ違った後振り返ると、彼の方が小刻みに震えていることがあった・・・私にわからないよう

に笑っているのかもと思うと、正直面白くない・・・



私の話を聞き終えると、田辺響子はくすくすと笑いながら言った。

「本当に琴子さんって可愛いわ・・・今回のことで、一番の功労者は琴子さんよね。ただそれを本人が

気づいてないっていうのが残念だけど・・・」





それから、私と田辺響子は外で食事でもしようということになり、彼女のオフィスを後にした。
ドアを閉める時「K's office」と書かれたプレートを見て、ほんの10日程前にここを訪れた時のことが

思い出された。
あの時、突然の惣介との再会に思った以上に動揺している自分をもてあまし、救いを求めてここへ

来た。


ドアの前で立ち止まってしまった私を、先に階段を降り始めていた田辺響子が振り返った。
「紗江子?どうしたの?・・・」


「うん・・・この前ここに来た時のことを思い出してたの。あれからまだ半月もたってないのに随分と私

の運命の歯車は勢いよく回ったんだなと思って・・・」
ちょっと感傷的につぶやいた私に、田辺響子は微笑みながら首を振った。
「違うわよ紗江子。運命の歯車ならもう1年以上前から回り始めてたのよ・・・」
「えっ?・・・」
「紗江子にとっての運命の相手は、惣介君だけじゃないわ。入江先生と琴子さん夫婦との出会いもま

た運命だったのよ。紗江子が入江先生や琴子さんに影響を与えたように、紗江子にとっても2人との

ふれあいがあってこその今の紗江子なんだから・・・ねっ?そう思わない?・・・」


私は、ゆっくりと階段を下りると、田辺響子の前で素直にうなづいた。
そして同時に、2年前の惣介との別れの日から、今この瞬間までのさまざまな出来事が真っ直ぐな

1本の線で繋がったような気がした。
もちろん、その線が確かに未来へも繋がっていくと信じることもできた。


「響子先輩?・・・ありがとう。」
私は、ほんの少し照れながら、それでもしっかりと頭を下げた。


「ずっと紗江子の心のことだけが心配だったのよ。本当によかった。絶対に幸せになりなさい」
田辺響子は、姉のような優しい笑顔でうなずいた。



「さぁて、どこで食事する?今日は紗江子の恋が復活したお祝いに私が何でも奢ってあげるわよ!」
「本当?・・・わあ、何食べようかな・・・」
「あっ!でも、これで惣介君とのデートもするようになったら益々私と遊んでくれなくなるってことよね?

・・・やっぱりご馳走するのやめた!紗江子が奢りなさい!」
「ええ?・・・何言ってるの?ちゃんと響子先輩とも遊びますよー」
「うそうそ。絶対に彼氏の方が大切に決まってるもの!」
「じゃあ響子先輩も旦那様とデートすればいいでしょ?」
「旦那と彼氏とじゃ違うのよ!」



自分だけが彼らに影響を与えているとばかり思っていた。
しかし、気づけば、何よりも私を変えてくれたのは、入江夫妻の恋の形。


心のブレーキを外す勇気。
何があっても未来を信じる強さ。
そして、時には自分の心に素直に従うことの大切さ。

2年前の私には、それはひどく難しくて、だからこそ一度は手放してしまった恋だった。
しかし今、自分の変化を知り、惣介ともう一度巡り合うことができて、私はやっと本当の恋を手に入れ

ることが出来た。


「ちょ、ちょっと響子先輩!待ってよー!」
私は、ズンズンと先へ行ってしまう田辺響子を追いかけた。
「わかりましたよ~何でも響子先輩のお好きなものをどうぞ。謹んでご馳走させてもらいますから~!」


「あら!本当?・・・いつものイタリアン?それとも今日は中華にでもしようか?・・・ついでに琴子さんも

呼んじゃう?」
「ええっ?それはダメよ。そんなことしたら、また明日ナース達に囲まれちゃうもの!」
「あら~楽しそうでいいじゃない!私も仲間に入れて欲しいわ」
「もう~子供じゃあるまいし!!」



その時、私達のじゃれ合うような会話をかき消すように、東の空から一機のヘリコプター現れて西の

方へと飛んで行った。
私は、空を仰いでヘリコプターを目で追いながら思い出さずにはいられなかった・・・
あの日、何の変哲もないはずの一日を運命の日に変えてしまった出来事を。


私の気づかないところでどれ程運命の歯車が回っていようと、あの日からすべてが始まった・・・
私は、太陽の光の輪の中に飛んでいくヘリコプターが小さな点になるまで見送りながら、たくさんの感

謝の思いが溢れて来るのを感じていた。


―心からありがとう・・・


響子先輩に・・・入江先生に・・・琴子さんに・・・私をずっと思い続けてくれた惣介に。



そして、私はそっと願った・・・


どうか、惣介の心のファインダーに写る私が、いつまでも今のこのままの私でありますように。
私の心に焼きついた惣介の想いが、彼の写した写真のようにいつまでも色鮮やかなままであります

ように。


そして、再び光を灯した私達の愛が、たとえ見えない明日も遥か遠い未来ですらも、何も恐れること

のない大きくて温かな想いで満ちていますように・・・と。




                                              END


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さて、いかがでしたか・・・はてなマーク


長い長い時間がかかってしまいましたが、なんとか全8話終了いたしましたC=(^◇^ ; ホッ!


賛否両論はあると思いますが、キューブ的にはこれはあくまでもイタキスのAnother storyということで

書かせていただきました。

主人公は一条紗江子であっても、直樹と琴子の恋から波及するエピソードということでご納得いただ

ければと思いますニコニコ



そして、これにて夏からダラダラと続いた『臨時営業』を終わらせていただくことになるわけですが、

『再・開店休業』のご挨拶は、また別記事にてさせていただきますね。

まずは、感想などお聞かせいただければ幸いですひらめき電球



途中しばらく間があいてしまい、お待たせしてしまったことをあらためてお詫びいたします。

一条先生の恋のお話「未来へ続く恋」、長い間、お付き合いくださいましてありがとうございました音譜


                                               By キューブ



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