金融機関に在籍していたころから、

貯蓄広報委員会(事務局・日本銀行)が毎年調査公表している

[家計の金融行動に関する世論調査」をウォッチングしています。

同調査はさまざまな切り口で調査、集計されていますが、ここで取り上げるのは金融資産の保有額です。

上の表は 平成27年の 二人以上の世帯(金融資産非保有の世帯を含む)

の金融資産の保有状況です。

世代別にみると高齢世帯の金融資産が多い状況がお分かりいただけると思います。

全世帯の平均値は 1209万円 (平均すると 1209万円金融資産を持っている)

そして 問題なのは 中間値 400万円です。

中間値・・・聞きなれない言葉かもしれませんが・・・・

平均値は 全世帯の金融資産の合計値を全世帯数で割ったものですが、

中間値は 金融資産の保有額の少ない順に並べて(多い順でも同じ)

列の真ん中になる世帯の保有資産額です。

 

平均値が 1209万円で 中間値が 400万円

なぜ こんな数字になるのでしょうか?

これは何を意味しているのでしょうか?

 

その秘密の一つは・・

上の表の 金融資産の非保有者(%)にあります。

全世帯の 30.9%が 金融資産を保有していないのです。

ですから 金融資産の少ない順に並べた場合

例えば 全体を100人とした場合

最初の30人は 金融資産ゼロの世帯が並ぶことになり

そして列の真ん中(中間値)に 金融資産 400万円の人がくるのです。

これは 極端に言えば

国民の半分が 金融資産の平均値の三分の1以下であることになります。

(金融資産の平均値に届かない世帯(国民)が70%近くになります)

 

平均値 1209万円が 実態とはかけ離れた数字ということになりますが、

それは 上の表の 金融資産保有者の平均値が 1819万円であること

(ゼロの人が3割いるが、ゼロを除いた金融資産保有者を抽出して

平均した場合の数値)が平均を押し上げているのです。

 


 

上の表は 平成19年と平成27年の 平均値、中間値、非保有率

金融資産保有者の平均です。

この8年間の間に

平均値 1259万円から 1209万円に減少し

中間値が 500万円から 400万円に大きく減少し(20%減)

金融資産非保有者の割合が 20%から30%に増加し

逆に、金融資産保有者の平均値が 1624万円から 1819万円に増加

個人金融を持っている人、持っていない人の格差が拡大しているのです。

(ある大手証券は 金融資産5000万円以上1億円未満を準富裕層 <構成比 全体の4.8%>金融資産1億円以上を富裕層<構成比 全体の1.3%>、と定義しています)

 

アメリカ大統領選挙で 大方の予想を裏切り トランプ氏が当選しました。

要因の一つは 現在の政治・経済体制のもとで 置き去りにされた

白人ブル―カラーの心をとらえたことが挙げられています。(中間層の没落)

 

日本は米国ほど 貧富の格差がないと言われていますが

・上記の金融資産をみれば 平均の1209万円の 3分の1(中間値400万円)にも届かない層が国民の半数を占めている。(まさに中間層の没落です)

・金融資産だけではなく不動産の所有の有無を加えれば、さらに格差は拡大する

・大学生の 53%が奨学金を利用、奨学金返済という負債を抱えて社会人としてスタートしている現状がごく普通にある

・子供の6人に一人が貧困家庭である(貧困家庭・・・世帯の可処分所得の中央値の半分以下の世帯)

・正規雇用の減少、非正規雇用の拡大 雇用条件の格差

 

これ以上格差の拡大が続けば 日本でも 今の政治経済体制に ノー

そんな時代が来るようにも思えます・・・・