経済・金融環境が激変するなかで業務は多様化、複雑化している。金融機関は地域特性を考慮し何に傾注すべきか判断を迫られている。先月号で「ひだしん」のクラウドファンディングなどの新規業務への取組みを紹介し「ひだしん」の「決断力」と「柔軟性」を称えた。「決断力」には「実行力」が、そして「柔軟性」には「創造力」が不可欠であるが、「ひだしん」は見事に結実させている。そんな事例を紹介する。

 

ヒダシンリビング

 「ひだしん」は平成27年11月に同信組初となるインストアブランチを開設した。同店は既存店舗(東山支店)を地元スーパーマーケット内に移設リニューアルオープンした店舗である。愛称は「ヒダシンリビング」。地域のお客様にとっての「リビング」のような場所でありたいとの想いが込められている。

 インストアブランチであるヒダシンリビングは土日祝日を含め年中無休(年末年始を除く)。スーパーマーケットの営業時間に準じて午前9時半から午後7時半まで営業する。従来の勤務体制の延長線上で考えれば職員は複雑で変則的なシフト勤務を強いられるが、「ひだしん」ではヒダシンリビングのために新たに週休3日制を導入(1日10時間勤務)して正攻法で解決した。

「ひだしん」の預金残高は2339億円。店舗数16か店。役職員数は179名である。(平成28年3月末現在)限られた役職員数のもとで、サービス品質の向上を図りながら全店フルバンクイングの従来型店舗体制を革新したことも注目に値する。

インストアブランチ

 

ビズコンヒダ

 「ひだしん」は平成26年7月に課題を抱える地域の事業者の最も身近で頼りになるよろず相談窓口としてビジネスコンシェルジュヒダ(略称ビズコンヒダ)を開設している。

コンシェルジュはホテルの職種の一つ。宿泊者、来訪者の相談や要望に応える「よろず承り係」。それが様々な業界に波及したものである。相談や要望、悩みごとは多種雑多である。顧客の声に耳を傾け、実現困難な事であっても最初からノー(できません)と言わず、対案を考え、出来る限り期待に応えるのがコンセプトである。

ビズコンヒダには、すでに600件を超える多くの相談が寄せられ成果を上げている。専担者など充実した体制で活動しているものと思っていたが、事務局を置き、相談ブースを設けてはいるが、専担者は置かず本支店の役職員が連携して運営されている。「ひだしん」は「ビズコンヒダ」をアイコンに全員が当事者意識を持って「街のコンシェルジュ」を目指している。

 

ぶれないモノサシ

「決断力」と「柔軟性」をキーワードに「ひだしん」の取組みの一端を紹介したが、その根底にあるのは、「ひだしん」は地域ための組織であること。すべての業務・商品・サービスは信組の理念、価値観をぶれないモノサシとして構築されている。

 

最後に、辛辣な質問にも丁寧にお応えいただいた、常務理事の山腰和重氏、総務部の奥原氏に感謝する。