三州製菓株式会社 その2

先月号で三州製菓株式会社(代表取締役社長・斉之平 伸一氏 以下、同社)が折り紙付きのダイバーシティ企業、ホワイト企業であることを紹介した。女性の活躍が時代の脚光を浴びるなか、業種は全く異なるが、同社の取組みは変革へのヒントが溢れている。

一人三役制度
妊娠、出産、育児、介護など女性は男性に比べライフイベントが多く、働き続けることへの障害が存在する。同社では出産、育児などの事情があっても継続勤務できるよう、さまざまな支援制度を用意している。その一つが、一人三役制度である。育児や介護などで急な早退や休暇など職場を離れる必要が生じたとき、周りのスタッフが代役を務めカバーする制度である。同社では、各社員が担当分野の専門的な知識・能力を持ち、さらに担当外の2つの業務の応援能力を併せ持つことに取組み、成果を上げている。

仕組み創り
 同社では、日常業務のなかで他の業務への理解を深めるため、助け合いの事例を連絡ノートに記録し、毎日、朝礼で発表する「一日一善活動」を実施している。そして、各職場の助け合い事例をグループウエアー上で共有するとともに、毎月、ベストプラクティス(成功事例)を「月間優秀社員賞」として表彰するなど、助け合いの風土づくりを進めている。

委員会活動
同社には上記の「一人三役」委員会、「月間優秀社員」委員会のほか、小柄で力の弱い女性でも使いやすい機器の開発等を行う「一人一研究」委員会、新入社員の指導を担当する「シスター&ブラザー」委員会、「クレーム・ゼロ」委員会など、13の委員会がある。委員会は部門横断型組織で、年間予算の執行を含め担当するプロジェクトを主体的に回す権限が与えられている。委員会の30%は女性が委員長を務め、女性の活躍推進にも寄与している。また、意欲の高い若手、女性に幾つもの委員会に参加してもらうなど社員が主体的に推進するとともに、業務全般への理解を深める場にもなっている。

言行一致
 同社では有給休暇の取得を奨励している。単に掛け声だけでなく、年初に各社員の有給休暇の要望をまとめ年度計画に組み込む。有給休暇の日数をそれぞれの給与明細に印字するなどして取得しやすい環境を整えている。(実績83%))金融業界においても有給休暇だけでなく、同社と同様に産休・育休、フレックスタイム、短時間勤務、パート社員の正社員登用など多彩な制度が整えられているが、特筆すべきは、同社には制度だけでなく、制度に心があること。驚くほどきめ細かに諸制度が実践の現場に落とし込まれている。
今回、卓越したリーダーシップで同社を牽引している社長の斉之平伸一氏から直接話を聞く機会をいただいた。聞けば聞くほど、ここまでやれば、経営理念・経営方針が社員に浸透する。社員のモチベーション・能力も高まる。業務の質が向上し、創造的な新商品も生まれる。そして、顧客に喜ばれ、業績にも反映する。同社の好循環を実感した。

経済産業省からホワイト企業として紹介されたこともあり、同社の昨年の採用活動(2016年4月入社)には学卒2名の採用に対して400名の応募があった。社長は「8名まで絞り込んだが、それ以上は絞り込めず8名全員(男性3名、女性5名)を採用してしまった。来年の新卒採用は休止しなくては」と話されたが、言葉の奥に、これからも三州製菓を発展させる。そんな決意と自信が感じられた。