『 静が丘駅乗車2両目 』
中途半端な時間に終わったカリキュラム。
残っているのは卒業論文に追われた、学生が大半だった。
校門近くの、銀杏の落ち葉に埋もれたベンチで、音楽雑誌を真剣に読む彼がいた。
程なくして待ち合わせが終わり、一緒に電車で帰る事に。
まだ車内は混雑無く、イヤホンを共有した二人の対応はまったく違っていた。
いつもの曲を聴く彼は、ウトウトし膝には先ほどの音楽雑誌が。
その逆に彼女の方は、片手間で聴き肝心な集中は、先ほど図書館でコピーした卒業論文の資料を読み、ペンでチェックし、またチェック。
《 中村橋駅 》 到着
いつもの乗車の多い駅に着き、人ごみと雑踏が本来の日常を再現した。
ただ朝とは違い、まだ夕方には早い時間帯なので雰囲気が違うが。
その混雑に、今までウトウトしていた彼が
ハッ!
と起きた勢いで彼女のイヤホンが外れた。
『 あっ・・・ 』 外れたイヤホンを拾い
それでも資料を読み続ける彼女の耳に、少し強引にイヤホンを押し込んだ。
2曲ほど前にリピートし、そしてまた目を閉じた。
彼女が横目で
チラ
『 またこの曲? 』
『 ? 』
閉じた目を軽く開け、彼女を横目で確認した後また閉じた。
付き合い始めの二人にはこのバンドで始まり、いつも二人の場面には合わせるように曲を載せていった。
いつもの帰り道にも・・・
目を閉じたまま深呼吸のあと
『 パスタかピザ食べに行く? 』
資料から目を離さず、
『 いいよ。私は今日はパスタね 』
『 バス 』
携帯の画面はメールBOXで、彼に送る途中だった。
学生時代の電車に比べ、バスで通勤可能な会社までは確実に座れた。
携帯を見つめる頭は、窓ガラスにつけながら・・・
『 また言い過ぎたかな・・・ 』
実際彼女も学生時代は、学ばなきゃいけない事の前に、覚えなければいけない
カリキュラムに追われて、何とかこなして社会人に。
その後はまた、会社の研修カリキュラムに追われて・・・
社会人の責任感なんて今は全然分からないし
分かってはいた。
大学を卒業しただけじゃ社会人と認められないし、知識を詰め込んだだけじゃ
大人の一員となれないし・・・
いつも家では彼に言ってる割に、自分が研修のテキストを読むのは、何となく気が引ける。 社会人の余裕と言うか・・・見栄的に
だからといって、いつも空いているバスの中でも読む気にならない。
一人になるこの時間は、学生時代に保存してあった、メールを何となく読み返したり・・・・
『 卒業論文は本当に順調なの?資料不足と課題の要点をもっと絞り込んだ方が 』
消去
『 卒業論文は本当に順調なの?私も研修の毎日で忙しいけど、時間あったら相談に 』
消去
『 卒業論文は本当に順調なの?言い忘れたけど朝御飯は夕べの残りが冷蔵庫にあるから、早めに帰ったら食べてね?私は遅くなるかも知れないから。 』
送信
放り込むようにバックに携帯をしまい、だるそうな頭を持ち上げ窓の外をふと見た。
・・・・『 あれっ! キッチンの換気扇止めたっけ? 』
『 電車 』
いつも居たい場所があった。
扉と座席の30cmの隙間にピッタシ肩を当てて、雑誌を読む場所が。
しばしすると必ず乗客が多い 《 中村橋駅 》に着いた。
予想通り車内は混雑気味に。
後はお決まりの体を反転させ、他の乗客に背を向け雑誌を読める体勢にする。
毎週買う事にしてる、経済雑誌を読み始めた。
・・・本当は、バックに音楽雑誌もあるのだが、
今日は、この雑誌にしときたい気分だった。
まあこのての雑誌を読まないと、仲間の話題においていかれると言うか、
読む事によって何か変わるというか、読んでる自分が少し背伸びしたというか・・・
・・・・いざと言う時にブツブツ言われない為というか。
その雑誌によく掲載されているコラムがあった。
社会の舞台に上がらず、批判 と 同情・乗っかり・逆行ばかり言うライターが目に止まり、よく読んでいる。
今月のテーマは 『 環境保全を見解し、未来の地球を大予想! 』
結局、どっちも他人事ね? ( ん? )
駅までの道のりで彼女の小言が頭に浮かんだ・・・
ちょうど読み終わった所で大学のある駅
《 静ヶ丘駅 》に到着した。
まあ駅に着けば降りるというよりは、押し出される感じでホームに降りた。
人ごみの中歩きながら、さっきまで読んでいた経済雑誌をバックにしまった。
その時ポケットで携帯がなっていた。『 あっ! ・・・部屋のカーテン閉めたっけ? 』
・・・・そのことかな?


