仮想通貨サービスは「取引所」だけではなく、DeFi、ウォレット、カストディ、決済、データ提供など多層的に分かれます。 本記事では特定サービスの評価を目的とせず、役割と収益構造を分類し、全体像を整理します。
仮想通貨領域のサービスは、外見上は似ていても、実際には役割や収益構造が異なる場合があります。
そのため「何をしているサービスなのか」を分類せずに比較すると、判断の前提が混在しやすくなります。
本記事では、特定の企業・サービスを推奨または否定することを目的とせず、
仮想通貨サービスをビジネスモデル(役割と収益構造)の観点から分類し、全体像を整理します。
前提:分類は「優劣」ではなく「役割の違い」を明確にするための作業
本記事で扱う分類は、どのモデルが優れているかを示すものではありません。
仮想通貨領域では、サービスが複数の役割を兼ねることも多く、用語だけでは実態が把握しにくいことがあります。
まずは、役割(何を提供しているか)と収益構造(どこで収益が発生しうるか)を分けて整理します。
分類1:取引所・ブローカー(売買の場を提供するモデル)
役割
- 暗号資産の売買・交換の場(マーケット)を提供する
- 注文のマッチング、価格提示、約定処理を担う
- 法定通貨との入出金や、オンボーディング(口座開設)を支援する場合がある
主な収益構造(例)
- 取引手数料(メイカー/テイカー等)
- スプレッド(実質的な価格差)
- 入出金手数料、各種サービス手数料
- 上場関連収益、マーケットメイキング等(形態は事業者により異なる)
整理の観点
取引所・ブローカーは「売買の体験」が中心になりやすく、利用者は価格と流動性、手数料体系などの影響を受けやすい傾向があります。
ただし具体的な提供形態は事業者ごとに異なり、同じ「取引所」という呼称でも、実態は一様ではありません。
分類2:ウォレット(保管・署名・送受信を担うモデル)
役割
- 秘密鍵の管理、署名、送受信(オンチェーン取引)を支援する
- ユーザーの資産管理インターフェースを提供する
- DeFiやDAppsへの接続ハブとして機能する場合がある
主な収益構造(例)
- スワップ機能の手数料
- 提携サービスからの収益(オンランプ、ブリッジ等)
- プレミアム機能(セキュリティ強化、サポート等)
整理の観点
ウォレットは「資産の保管」だけでなく「アクセス権(署名)」を扱うため、
セキュリティ設計や運用の考え方が重要な論点になります。
同時に、ウォレットの種類(自己管理型/管理型など)によって責任分担の前提が変わります。
分類3:カストディ(保管を業務として提供するモデル)
役割
- 資産保管を専門業務として提供する(主に機関・法人向けの場合が多い)
- 権限管理、監査、運用ルールを整備する
主な収益構造(例)
- 保管手数料(AUM連動等)
- 運用・管理に付随する各種手数料
- コンプライアンス・レポーティング等の付加サービス
整理の観点
カストディは「安全性」の議論と結びつきやすい一方、
実務上は監査・権限分離・運用規程など、企業側の業務設計が重要になります。
分類4:DeFi(プロトコル型:オンチェーンで金融機能を提供するモデル)
役割
- 交換、貸借、流動性提供、デリバティブ等の機能をプロトコルとして提供する
- スマートコントラクトにより、ルールをコードで実装する
主な収益構造(例)
- プロトコル手数料(スワップ、借入、清算等)
- ガバナンストークン設計に伴うインセンティブ構造(形態は様々)
- フロントエンド提供者が別途収益化するケース
整理の観点
DeFiは「事業者」というより「仕組み(プロトコル)」として提供されるため、
どこまでがコードで、どこからが運用(フロント、コミュニティ、開発体制)なのかを分けて捉える必要があります。
また、プロトコルの設計・監査・アップグレード方針などが議論の対象になります。
分類5:オンランプ/オフランプ(法定通貨との接続モデル)
役割
- 法定通貨と暗号資産の交換・入出金・決済接続を提供する
- KYC/AMLなど、本人確認や不正対策を含む場合がある
主な収益構造(例)
- 交換手数料、スプレッド
- 決済・送金関連手数料
- 提携事業者からの手数料収益
整理の観点
オンランプ/オフランプは制度との接点が強く、地域ごとの差が出やすい領域です。
サービスの分かりやすさよりも、前提となる制度・提供範囲の確認が重要になります。
分類6:インフラ(ノード、RPC、データ、セキュリティ等の提供モデル)
役割
- ブロックチェーン利用に必要な接続・処理基盤を提供する(RPC、ノード運用等)
- データ提供(インデックス、分析、監視)を行う
- セキュリティ(監査、モニタリング、リスク管理)を支援する
主な収益構造(例)
- サブスクリプション(API利用、処理量課金)
- B2B契約(運用・監視・監査支援)
- エンタープライズ向け導入費用
整理の観点
インフラ領域は一般利用者からは見えにくい一方、エコシステム全体の前提を支える役割を持ちます。
「サービスの見た目」ではなく「背後の基盤」がどのように構成されているかが論点になります。
補足:サービスは複数モデルを兼ねる場合がある
実際の市場では、単一の分類に完全に当てはまるとは限りません。
取引所がウォレット機能を持つ、ウォレットがスワップやオンランプと統合されるなど、
複数の役割が一体化したサービスも存在します。
そのため、名称やカテゴリだけで理解するのではなく、提供している役割と収益が発生するポイントを分けて整理することが重要になります。
まとめ:役割と収益構造を分けて捉えると全体像が整理される
仮想通貨サービスは、取引所・ウォレット・カストディ・DeFi・オンランプ/オフランプ・インフラなど、
複数の層に分かれた役割によって構成されています。
本記事で整理したのは、特定サービスの評価ではなく、市場の全体像を理解するための分類です。
役割と収益構造を切り分けることで、サービス比較や情報解釈の前提を揃えやすくなります。