2025年5月9日、ドイツ連邦刑事庁(BKA)およびフランクフルト検察庁は、国際的な仮想通貨犯罪対策の一環として、仮想通貨交換プラットフォーム「eXch」を摘発し、同サービスから約3,400万ユーロ(約55億円)相当の仮想通貨を押収したと正式に発表しました。
この摘発は、同プラットフォームが2025年2月に発生したバイビットの大規模ハッキング事件において、盗難資産のマネーロンダリングに使用された疑いがあるためです。 

 

https://jp.cointelegraph.com/news/germany-seizes-38-million-crypto-bybit-hack-linked-exch 引用:コインテレグラフ

 

押収資産とeXch閉鎖の背景

押収された仮想通貨には、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ダッシュ(DASH)など複数の主要銘柄が含まれており、今回の押収額はBKAの歴史上、3番目に大規模な仮想通貨押収事例となりました。

同時に、ドイツ国内に設置されていたeXchのサーバーインフラも押収され、プラットフォーム自体が閉鎖に追い込まれました。BKAはこの摘発について「国際的な仮想通貨犯罪撲滅に向けた重要な一歩」と位置付けています。

マネーロンダリング対策(AML)なしで運営:犯罪資金の温床に

BKAの調査によれば、eXchは2014年から運営されていた仮想通貨「スワップ」サービスであり、ユーザーがビットコインやイーサリアムなど複数の仮想通貨間で簡単に交換できる機能を提供していました。しかし、このプラットフォームはKYC(本人確認)やAML(マネーロンダリング防止)といった法令遵守対策を一切講じておらず、違法資金の洗浄に悪用される温床となっていました。

実際、eXchはこれまでに推定19億ドル規模の仮想通貨取引を仲介しており、その一部が犯罪行為に関連したものであると指摘されています。特に2025年2月に発生したバイビットからの15億ドル相当の盗難事件に関しては、盗難資産の一部がeXchを通じて資金洗浄された疑いが強まっています。

eXchを通じたマネーロンダリングの手法

BKAは「バイビットから盗まれた巨額資産の一部が、eXchを介して他の仮想通貨に交換され、出所を隠蔽するために利用された」と発表しています。さらに、ブロックチェーン調査の専門家ZachXBT氏も、eXchが過去の複数の著名な仮想通貨犯罪案件に関与していたと指摘しています。

他の事件でもeXchが資金洗浄経路に

ZachXBT氏によれば、eXchは以下のような複数の仮想通貨関連犯罪に関与していた可能性があります:

  • マルチシグ盗難事件

  • フィックスド・フロート攻撃

  • ジェネシス債権者を狙ったハッキング(被害総額2億4,300万ドル規模)

また、近年増加しているフィッシング詐欺や不正アクセスによる資金流出事件でも、eXchは犯罪資金の交換・移動に利用され、当局からの資産凍結命令やブロック要請に一切応じない姿勢を貫いてきました。

ラザルス・グループによる利用:盗難資金の流れ

2025年2月のバイビットハッキング事件直後には、北朝鮮系ハッカー集団「ラザルス・グループ」が盗んだ3500万ドル相当の仮想通貨をeXchで資金洗浄したと報告されています。

ラザルスは、バイビットから不正流出した5,000ETHを新たなウォレットアドレスに移し、eXchを経由して他の仮想通貨へ交換。その後、Chainflipなどのクロスチェーンプラットフォームを介してビットコイン(BTC)にブリッジし、最終的な資金洗浄を完了させたとされています。

サービス終了とその背景

当初、eXchはバイビット事件への関与を否定していましたが、2024年4月中旬、Bitcoin Talkのフォーラム上で「5月1日をもってサービスを終了する」と突然発表。

この投稿では、「運営に対するインフラ攻撃や外部からの干渉が増え、活動継続が困難な状況になった」と述べ、「我々の目標が誤解され、国家機関のSIGINT(信号情報活動)の標的となる hostile environment(敵対的環境)下で、運営する意味はない」としています。

ドイツ当局「仮想通貨マネロン対策の重要性」を強調

フランクフルト検察庁の上級検事ベンヤミン・クラウゼ氏は、今回の摘発について「迅速かつ匿名でマネーロンダリングが行われる仮想通貨スワッププラットフォームへの対抗措置の重要性」を強調しました。

クラウゼ氏は「仮想通貨スワップサービスは、ハッキングや盗難カードデータの売買など、犯罪資金の出所を隠蔽する地下経済の中心的なツールとなっている」と述べ、今後もこの種の違法取引プラットフォームに対して厳しい姿勢で臨む考えを示しました。


今後の見通し:仮想通貨犯罪対策の国際連携強化が急務

今回のeXch摘発事例は、国際的なサイバー犯罪対策において、匿名性の高い仮想通貨交換サービスがいかに重大なリスクとなっているかを浮き彫りにしました。
今後は、欧州のみならず、アジア・米国を含む各国の金融・司法当局が連携し、違法資金の追跡・押収、マネーロンダリング経路の遮断、そしてAML規制の厳格化に取り組むことが求められています。

特に、スワップ型やクロスチェーン型の匿名サービスに対しては、さらなる規制の適用や、サービス提供者への法的責任追及が国際的な議題となるでしょう。