自作小説 Dr-BIG

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★あらすじ★

世界中枢都市、バタウォ。

世界の各地から金が集まる、言わずと知れた富豪の街。

そんな富豪の街でも数々の問題を抱えていた。

アンダーグラウンドと呼ばれる下層には、飢餓に苦しみ今にも死にそうな街の裏側がある。

一方、ゴールデンゲートと呼ばれる表の街には、
金に物を言わせた人たちで仕切られているという闇も点在していた。

この世界は、狂っている。

STEP1
1話
STEP2
2話
STEP3
3話



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前回までのあらすじ
 世界の中核をも担う都市。タバウォは、金持ちの街だ。
 最先端を日々開拓する言わば超先進国だが、不安も多く抱えていた。
 闇の部分と言われた場所の一部、地下街ではカーズ・タバンが研究に日々を費やしている。
 理由は、娘の病気を少しでも良くする為だった。
 ゴールデンゲートと言われる地上では、諸事情により研究の妨げになると感じたカーズが
妻の反対を押し切って地下へと降りた。
 そんな或る日、娘の身を心配した妻からの電話で地上に戻ることに。
 娘を誰よりも心配しているカーズの元へ娘を誘拐したとの電話が鳴る。
 犯人の言うとおりに、エリー運河の倉庫を訪れたところでカーズは気付いてしまう。
 これは娘と妻が私を驚かそうと仕掛けた、ということ。疑念が晴れたのは、娘が前から
欲しいと言っていた50ドルするという“ある物”が決め手だった。
 クリスマスというイベントさえも忘れていたカーズは、娘へのプレゼントを握りしめて
自宅へと急いだ。



「ただいま」
私の声は、玄関を響いてリビングへと聞こえる質量で自然に声は大きく飛び出す。
リビングへ進入すると周囲を見回して、大きな白いソファの片隅にリボンの付いた
娘へのプレゼントを載せると上着もそっと置く。

「ヒラリー、サーチェ。分かっているんだぞぉ」

二階に目星を付けて、捜索を開始した。
幾ら見渡しても見当たらない姿に嬉しささえ感じてきたら、
各部屋の扉を豪快に開け放しては照明のスイッチを入れる。
私の機嫌は、正しく上々だ。一通り二階を探し終わったが、
どうやら、ここにはいないようだからと笑いそうになる口元にぎゅっと力を加えて、
下の階へと踵を翻した。

「キャーッ」

階段を下りていると、妻の悲鳴が家の中に響いた。
声がした方、私は慌てて押し扉を開く

「ここは、え」

到達したのは、クリスマス用に飾りつけされた中庭だった。
リビングからは見え辛い。
家からは一番裏にあるからと頭の中、瞬間的に納得をする。
「ヒラリー」
確かに妻の声がしたと、妻を呼んでも返事はない。
明るくライトを当てられた中庭を見渡して、その真ん中辺りへと近寄ってみる。
瞳の中、映り込んだのは惨劇だった

「おい、ヒラリー。おいッ」

妻が倒れていた。
丸いホールケーキが置かれた白いテーブルの裏側、腹部から血が流れる。
手が震え、足も震わせながら妻を抱き寄せると微かに息遣いが聞こえてきた。

「あ、あなた。ごめんなさい、あたし、あ」

「しゃべるな、分かっている」

あ、な、た。
微かに聞こえた声は想像のかもしれない。
涙は、痛いと思えるくらいに溢れ出た。

「パパ」

背中の方から声がした。
紛れもない、娘の声だった。

「サーチェ」

「パパ。ママが、ママが」

「うん」

「ママが急に倒れて、それで」

「分かった。お前は、大丈夫なのか?」

「うん。ごめんね、パパを騙そうとしたの、ママにお願いして」

「分かった。分かったよ」

「ママは、ママは」

私は首を横に数回横に振ると、娘の小さな瞼から大粒の滴が零れた。
絶えたヒラリーを膝の上に抱え、サーチェを抱き寄せた。
誰がこんなことを、怒りは溢れるように出る。

「本物の警察に電話をしないと、な」

「パパ。ウィルとジルに会ったぁ?」

「ああ、もちろん。お巡りさんだったからな、偽物の」

手振り身振りの演技を見せた彼ら、だった。
最初は気が付かなかったのだが、思い返してみれば納得してしまうほど、後悔しかない。
ウィルは妻の同僚で第3倉庫にもいたアイツだし、ジルは娘の学校の担任、
思い返すほどに悔しくてならないが、私を騙す為にグルになっていたのだ。

「サーチェは、ここにいて」

「パパは?」

「携帯を取ってくるよ」

「うん」

娘のサーチェに妻の元で待っているように宥めて、リビングのソファの場所。
掛けたままのジャケットを左手に抱え、右ポケットから携帯端末を取り出した。
またしても、クラークの顔を思い出す。私は古い時代の物が好きだからと理由を付けて、
未だに携帯電話付き正方形の端末を使っていた。
次世代と呼ばれる携帯端末は腕時計型へと進化していたが、娘にはまだ与えてはいない。
ジャケットに腕を通し、携帯電話を握りしめて中庭へと向かう。
ただ、予期せないことが待ち受けていた。
突発的に声が飛び出す。

「サッ、サーチェ」

「動くな」

娘の後ろで蠢いているのは、不気味な仮面を付けた奴だった。
白い仮面、向かって右側の細い目のところにだけ縦の赤いラインが入っている。
細い体だからと身構えるが、娘の顔の近くには光り輝く鋭く長い物を突き付けていた。

「おい誰なんだ、お前。娘を、娘を離せ」

「僕のことを忘れたのかい?」

「は、何を言っているんだ」

「ケイビムだよ。ケイビム・ヘイロイスキ」

「ケイ。どうして」

「俺は、お前を許さない」

「何を言っている」

「お前には失望したんだ。お前が悪いんだ」

彼は、私を必要としていたんだ。
ケイビムが勤めている会社から新薬開発共同研究の提案を断って以来、
彼は会社を辞めてしまったと聞いたことがある。

「パパは悪くない。悪いのは、お前でしょぉ。ママを」

「何を生意気な」

「お前なのか、妻を。ヒラリーを」

「まあな、可笑しなことをいっていた。この生意気な娘みたいに」

だから。と言うと娘を突き飛ばした。
娘は杖を上手く使えずに倒れてしまった背中に、刺さったナイフが見えた。
あーッ、私の声は闇に増幅されて響いているように大きく鳴る。
ナイフをゆっくり娘の背中から抜くと、こちらに体を向けた。

「カーズ。あなたの味方と成りえる者は、ミナゴロシだ」

「サーチェ」

声は酷く濁って、涙に震えてしまう。
これ以上、許さない。
言葉よりも先に体が反応していた。

「きさまーッ」

私の体は、熱く燃え上がる。
夢中で足を動かすと、憎い顔面が目の前にあった。

「ひぃ、どうして。そんな」

感覚も無い手のひらで歪んだ顔を押し潰して黒いニット素材の腹の辺り、
左手の拳の骨先を押し込むように、いや、突き抜けるようなイメージで力を込めた。

「何だぁあああ」

声が途切れたのは、ひょろりとした体が中庭の奥にある柵と大樹の間に
めり込むような音と共にだった。
私は慌てて、娘のところへ急いだ。

「サーチェ」

私は、サーチェを両腕で抱くと顔に近づけた。
顔が青白く、ナイフが刺された傷口からは血が溢れるように流れる。
手でぎゅっと抑え込んだのだけれど、手遅れだった。

「パパ」

「ん、なんだ?」

「私ね、嬉しかった」

「ああ」

「パパとママの子供で」

「ありがとう、ビック先生」

「ああ、サーチェも。私の子供に生まれてきてくれて、ありがとう」


最後に、娘が呼んだ名前。

『Dr.BIG』

娘のサーチェが付けてくれた、私のニックネームだった。
私のことを本当のヒーローのように思っていた娘は、私の手を見る度に
『大きな手』だと言って『何でも治せる』とも勇気さえもくれたのだ。


『ありがとう。ヒラリー、サーチェ。私は幸せだったよ』


「約束よ、ママと私の分まで生きて」
空気を噛むように言い放った娘の最後の言葉。
このままだと、私は、犯罪者になるのだろうか。
愛しい妻と、娘を手にかけたと悍ましい男として世界に報道される。
それでも、よかった。
でも。
じゃあ、娘の言葉を守れないではないか。

「約束よ、ママと私の分まで生きて」
夜が明けるまで、頭を働かせて考えた末に出た結論。
妻と娘を、そして私を狙い二人も殺したアイツを家の中へと移動させてから
我が家に放火することだった。

今に至っても遺体の損傷が激しければ解剖をしたところで、私が生きているという
ことは分からないはずだ。と、そんな話を大学の仲間に前に聞いたことを思い出した。
ケイビムを放火近くに寝かせて、娘と妻は話すように部屋の端へ並べる。
その場所から中庭へと伸ばした油の線、迷いを振り切るように火を放った。
勢いよく、燃え上がる炎。
空をも衝くように放たれる火の子は、やがて西の空に光り出した星をも飲み込んだ。


『私は。今日で、カーズ・タバンという名を捨てるんだ』


気づいてしまったんだ。
変な力、体つき。
感じた不快な重圧感は、筋肉が増加していたということ。
これまでの私は、もう存在しない。

今日で最愛の家族とは、別れなければならない。

燃え上がる炎を背に、ジャケットにあるフードを目深に被ると
騒然とする住宅街の声へは耳を塞ぎ、暗く不気味な闇の中へと足を進めた。


ヒラリー。
サーチェ。

ごめんな、守ってやれなくて
ごめん。


だから、さよなら。


― 1年後 ―

アンダーグラウンドと呼ばれる地下街、3階建ての角部屋。
玄関近くの古いダイヤル式の黒い電話の前で、男が戸惑っていた。
確実に間違い電話であるのに、声が出ない。

「お前は誰なんだ」

「私は・・・・」

不意の問いに根本的な否定。
もしくは正すことさえ忘れて、1年前の出来事を思い出してしまう。

「お前は誰なんだよ」

頭に入り組んだ問いを払い除けるように、声は一層強くなる。
一方的な問い、間違い電話であっても私には答えられない理由があった。
お前は誰だ。
それを最後に男の声は消えていた。
ただ受話器は耳から離れない、不通の一定した音色が催促するように鳴っている。
なまえ、、、
名前はカーズ・タバン。

いや、違う。
私は?

そうか。
私は…、 Dr.BIG 。





私はヒーロー、だ。











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Dr.BIG
‐ THE EVENING STAR ‐



『 TAKE OVER 』


FULL PART


END