新緑がまぶしい季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
暑くもなく、寒くもないよい季節に、双石山(ぼろいしやま)に登ってまいりました。
宮崎では有名な登山スポットらしく、軽く調べたところ3~4時間のコースで、私のような初心者にはちょうど良さそうです。
姥ヶ嶽神社で安全祈願をしてから山に入ります。
山に入ったとたん、木々の多さに圧倒されます。歩きにくいことはないのですが、昼なお暗い山道は怖いくらいの雰囲気があります。
倒木や岩を割る木の根や、ところどころに咲くツツジの花など、見所たっぷりです。
1時間もかからずに山頂に到着しました。
順調なペースです。山頂からさらにルートを進むと、針ノ耳神社周辺に奇岩が点在するスポットがあるそうです。
少しの休憩をとりまして、針ノ耳神社に向けて進軍再開します。
ここまで調子よく歩いてきましたが…ふと気付くと、登山道を示すロープやテープが見当たりません。いつの間にか足元は及び腰でないと歩けないような悪路になっています。

「登山道からはずれてるのかな?」(←のんき)
「元の道はどっちだろう…まあ、歩けるほうに歩いていこう」(←浅はか)
道のない山中を無理やり進んでゆくとやがて、目の前に岩に囲まれた淵が現れました。水は澄んでいますがどれくらいの深さか、はっきりわかりません。
「これじゃ前に進めないな…お?淵の向こう側が少しひらけているじゃないか。きっとあっちが登山道だ」(←バカ)
「よし、何とかしてこの淵を越えよう!」(←大バカ)
「岩が邪魔だけど、よじ登ればむこうに渡れるんじゃないかな」(←有罪)
岩肌はじっとり濡れていていますので、滑らないよう慎重に…慎重に…
ツルッ!
「アッー」と思ったときには、時すでに遅し。
すっ転んでそのまま水に向かって滑り落ち、一気に胸のあたりまで水につかってしまいました。
ふ、深い、冷たい
一瞬でパニックですよ。
必死に岩にすがりついて、なんとか体を引き上げましたが立ち上がる気にもなれず、しばらく呆然とへたりこんでしまいました。
「ひょっとしてヤバイかも…?」
ひょっとしなくても激ヤバだと思います。這い上がった場所は、登山道でもなんでもない小さな渓谷でした。事ここに至って初めて「遭難」の2文字が脳裡に浮かびました。
―そういえば、この山に登るってこと、誰にも言ってないなあ
―救助要請って、どうすればいいんだろう、110番か、119番かな
―そもそも携帯の電波がないのか、どうしよう
どんな事を考えながら被害状況の確認です。
転倒したときにあちこちアザを作りましたが、折れたり切れたりした箇所はありません。
持ち物を点検したところ、次のような状況でした。
カメラ 生存(歓喜)
会社携帯 生存(安堵)
アイフォン 死亡(悲嘆)
タバコ 全滅(ポケットの中が大惨事)
ライター 生存(さすがジッポだ、なんともないぜ)
カメラと会社携帯は防水のリュックにしまっていたため被害を逃れました。アイフォンの死亡はショックですが機種変更するつもりだったし、と自分に言い聞かせてあきらめます。
そして今回最大の被害は…
メガネ 沈没(絶望)

転倒の衝撃でメガネが吹っ飛び、淵に沈んでしまったのです。
視力0.1以下のこの身にとって深刻な事態です。それでなくともうす暗い山の中を、道を探して歩き回らなければなりません。
写真を撮るという目的は「生きて下山する」ことにとって代わられました。この後の撮影データはカメラが故障していないか確認で撮った次の一枚だけです。

撮影時間のデータから推測するに、道を見失って彷徨していたのは2時間程度だったようですが実に長い2時間でした。木の枝が顔に当たらないよう両手を前に突き出し、おぼつかない足取りで歩く姿は、きっとゾンビのようだったと思います。

登山道を示す赤いテープを見つけたときは涙がこぼれそうになりました。
案内地図によると一本はずれた別のルートに出てしまっていましたが、そんなことは些細な問題です。
自販機を見つけてもお札が濡れていて何も買えなかったことも、山に入った場所から離れてしまい5キロ以上歩かないと車まで戻れないことも、車に戻ってもメガネがないため運転できないことも、本当に些細な問題にすぎません。
このルートを歩こうとして…

生き残った会社携帯で代行運転を呼びミッションクリアです。
代行運転の方の第一声は「こんなところに飲む場所があるんですか?」でした。
無理もありません、店どころか人家もないような山奥でしたから。
下山してからよくよく調べたところ、冗談でなく遭難騒ぎがたまにある山だそうで、下調べって本当に大事なんだなとシミジミ教訓を噛みしめたのでした。





















