前回は事務方に骨抜きにされてしまう、みたいな書き方をしましたが、勿論ドクターたちも黙っていません。経営的に一番痛手となるのはやはり、辞めてしまうこと。

辞めて「開業する」、「他の病院に勤める」、「親や親族が経営する地盤を継ぐ」パターンがあるのですが、特にやっかいなのは開業するドクターです。遠くで開業してくれれば特に問題はないのですが、あてつけのように近所で開業する人が少なくありません。何故かって?自分が診ていた患者を根こそぎ連れていくために他なりません。

患者の多くは心理的に、かかりつけの医師が変わることを望みません。病気が治っていないのに途中で先生が変わったら「大丈夫?」って思うのは当たり前ですし、病気が治ってからも定期的に通院して、いつもの薬を出してもらうような人は、大体が『お医者様は神様です』世代の高齢者です。

「自分の事をよく分かってくれている」という安心感と義理堅さは何ものにも勝るんですね。

そこにきて、以前勤めていた病院の診療圏に居を構えれば、肉体的にも金銭的にも患者の負担はさほど大きくなりませんから、そのドクターの大ファン以外にも結構な人が流出してしまいます。

元の勤め先に10年から15年も勤めれば、病院の顔みたいな存在でしょうから、内科医で生活習慣病関係なんかを多く診てきたドクターなら、開業と同時にかかりつけの患者が何百人もできてしまいます。

ピカピカのクリニックで、リースしたCTやら最新鋭の内視鏡やらを導入すれば、新規の患者もそれなりに集まるので、半年で1,000人くらいのカルテができちゃった、なんて話も珍しくないみたいです。

「でも、開業するには相当な労力と時間がかかるのでは?」と思われる方も多いかもしれません。

が、開業医予備軍は病院で勤務している時から、親しいMR(製薬会社の営業さん)や道具屋さん(医療機器の営業さん)、もしくは開業した友人から情報収集しつつ、開業を手伝ってくれるコンサルタント会社にあたりをつけます。

今は開業を専門に請け負う医療コンサルタント会社がたくさんありますから、要望を伝えるだけで、クリニックの立地確保から室内デザイン、ホームページ作りや宣伝、看護師や事務など従業員の手配まで何でもやってくれます。なので、病院で診療を行いながらも開業は順調に進むわけです。

情報を提供した業者も二次営業先ができて万々歳!!

そして退職の日、多くの患者と多額の退職金を手に、院長や上司の苦々しい笑顔に送られて、悠々と病院を後にします。明日からはつまらないシガラミや無益な会議から開放されて、やりたいことだけをやれる喜びに包まれて!(ただし、レセプトだけはしばらく苦労するかもしれませんが)

 

おめでとうございます。今後も患者紹介の連携お願いしますね。あ、でも一つ忘れてました。他にも持っていってしまうんです。職員を。

何故か中堅どころの看護師が多いのですが、そのドクターの診療に近い位置にいたから、というだけではないようです。まさにバラ色なんでしょうねぇ。。

「それでもやっぱり厳しいんじゃないの?」と思われているあなた、杞憂だと思います。

だって、開業した先生で「辞めて良かった!」と言わなかったドクターを見たことがないんですから。