駅のホームで電車を待つ間
サクッと
スマホのポップアップだけ
確認したが
旦那からの新着通知はなかった



利用する路線は
午後出社の時なら
電車内でもスマホを見るスペース位はあるが
朝のラッシュ時は
そうもいかない


隣の人や前の人が何を見ていようと
干渉しない素振りを決め込むのは
この土地特有

 
その時の私にはありがたく感じる心境ではあったが
本命のGPSログを
スマホ画面に展開することは
さすがにできなかった


ふと、


ホームに並ぶ
この人達にとって
表の私は
どんな風に
見えるのだろう

と思った



……珍しくもない朝の風景の中
並んでいるOLの1人といったところだろうか


パンツスーツの外見だけなら
バリバリのキャリアウーマンにでも
見えるだろうか


裏の私は
どん底で生きる気力もなく
何とかホームに並んでいる
数日前にサレ妻になったばかりの女



見える世界とその裏の真実の世界は違うと
自ら証明している気分だった



ということは
逆に
ここに並ぶ人達の中に
配偶者を裏切っていない人が
一体どれくらいいるのだろうか



不倫なんてきっかけは
どこにでも転がっていることを
見てきたはずなのに
自分の旦那の不倫は
見抜けなかった私



真面目そうなあの人も
優しそうなあの人も
もしかしたら……



そんな
とんでもなく失礼な想像を
脳内で繰り広げてしまった



配偶者を裏切らない信念を持ち
実際に守りぬける精神力を持った人は
数える程しかいないのではないだろうか



離婚を選んだ場合
その後の自分を
イメージしてみるも
そんな希少な人と
お互いフリーで出逢い
そこから、お付き合いが始まるなんてことは
極めて低い確率に思えた



仮に出逢えたとしても
自分も他人も社会も秩序も
何もかも信じられなくなった私が
まずすることは
本当に既婚者ではないか
お付き合いしている人がいないか
嘘がないか
身辺調査から始めるだろう



これからお互いを少しずつ知って
お付き合いをはじめましょうという段階で
そんなことをして
果たして信頼や愛を築けるのだろうか


そこまでして誰かと一緒に
過ごしていきたいと思うだろうか


……もう、その気力も時間も
さきたくないと思えた


離婚を選んだ場合は
私は生涯
「おひとり様」で
生きていくのだろう



性欲は強くは無いが
完全に衰えたわけではない



若い頃に思っていた
フリーの身なら自由だという考えが
私の中から
消滅してしまった




仮に1夜限りだとしても
本当に既婚者じゃないのか
彼女持ちじゃないのか
身辺調査無しでは
その気にもなれない



調査無しに
身元もフリーであることも
間違いなく
わかっている人となると
仕事関係者しかいないわけだが……



相手の気持ちは勿論のこと
仕事に影響が出ない
両者の利害の一致が必要不可欠
……考えただけで何かと面倒だ



誰かと一緒にしたいと
思える日がきたならば
リスクを承知で
女性用風俗でも利用するしか
道はないのだな……



つい先日まで、旦那といつかはできる
その気になればできる
タイミングがあえばできる
なんて、呑気に思っていた自分だったのに……



自分の人生が
変わったんだという現実を
また1つ噛み締めていた



1人で生きていくという強さは
表面上の
綺麗事では済まされない



好きだの嫌いだの関係なく
1人がいいと心底思えなければ
離婚をしても私は後悔する



逆も然りで
生涯「おひとり様」は
寂しいからなどと
目先の利益で
旦那と一緒に生きることを選んだなら
私は必ず自分の決断を後悔する



私が決断する時
自分に何が必要なのか
漠然とだが見え始めた