銀魂夢:かざぐるま(桂)
子どもじゃない、と言い掛けて口を噤んだ。ありがとう。微笑むと桂は優しく目を細めた。
かざぐるま
暖かな掌で頭を撫でてもらうのが好きだった。晴れた日には河原を散歩して。時折飴をくれる。どうやら桂は私のことを随分子どもだと思っているらしい。歳が5つ離れるとそうなるのだろうか。
桂が私の元を去るときもそうだった。泣かないでくれいい子だから。まるで子ども。同じラインに立つことは許されないの?悔しくて悔しくて、気力で涙を留めた。
いい子だな、そう言って桂は私の髪を指で梳く。去り際に手渡されたかざぐるま。逆にむこうが子どもなのでは?と思い呆れて笑った。
あれから3年。私はずっとこの地に留まっている。桂がいつ帰ってきても出迎えられるように。貰ったかざぐるまは色あせてしまったが、大事に置いてある。もし彼がこれを見たら、また子どもだと笑うだろうか?もうそれでもいい。
どうやら桂は攘夷活動で江戸を賑わせているらしい。元気そうなのはいいことだがあまり心配させないでほしい。私に言わせれば彼の方がよほど子どもだ。
まったく
「生きてりゃいいから。死なないで。」
私は大丈夫。
待つことも恋だから。
かざぐるま
暖かな掌で頭を撫でてもらうのが好きだった。晴れた日には河原を散歩して。時折飴をくれる。どうやら桂は私のことを随分子どもだと思っているらしい。歳が5つ離れるとそうなるのだろうか。
桂が私の元を去るときもそうだった。泣かないでくれいい子だから。まるで子ども。同じラインに立つことは許されないの?悔しくて悔しくて、気力で涙を留めた。
いい子だな、そう言って桂は私の髪を指で梳く。去り際に手渡されたかざぐるま。逆にむこうが子どもなのでは?と思い呆れて笑った。
あれから3年。私はずっとこの地に留まっている。桂がいつ帰ってきても出迎えられるように。貰ったかざぐるまは色あせてしまったが、大事に置いてある。もし彼がこれを見たら、また子どもだと笑うだろうか?もうそれでもいい。
どうやら桂は攘夷活動で江戸を賑わせているらしい。元気そうなのはいいことだがあまり心配させないでほしい。私に言わせれば彼の方がよほど子どもだ。
まったく
「生きてりゃいいから。死なないで。」
私は大丈夫。
待つことも恋だから。
銀魂夢:言ってご覧よ(銀時)
背中合わせって私は好きだ。お互いの顔は見えないけど背中から体温が伝わる。ひどい喧嘩をした後も体温は優しい。一人分の布団に二人で入り、銀時の様子を窺う。まだ寝息をたててないから、眠りに落ちる前だろう。
私はこんなにも銀時が好きなのか。
遊郭に売り飛ばされそうになった私を奪い去ったのは銀時。俺の仕事はもう終わり、どこなと行きなと手放したのも銀時。結局銀時のそばにいる私。何も言わない銀時。
不安定。だって銀時が何を考えてるかわからないもの。だから私は自分勝手に解釈して、そばにいていいんだと、信じている。
「眠れねぇか?」
銀時が呟いた。質問に応えず私は慌てて寝たふりをする。銀時は小さく息をつき、ぐるりと体をこちらに向けた。
後ろからぎゅうと抱き締められて、心臓が跳ねる。背中も暖かいけど、腕の中も居心地がいい。
「私…」
「ん?」
「私、ここ居ていい?」
銀時はふと笑った。
「居ろよ、好きなだけ」
ほら、ずるい言い方。
私はこんなにも銀時が好きなのか。
遊郭に売り飛ばされそうになった私を奪い去ったのは銀時。俺の仕事はもう終わり、どこなと行きなと手放したのも銀時。結局銀時のそばにいる私。何も言わない銀時。
不安定。だって銀時が何を考えてるかわからないもの。だから私は自分勝手に解釈して、そばにいていいんだと、信じている。
「眠れねぇか?」
銀時が呟いた。質問に応えず私は慌てて寝たふりをする。銀時は小さく息をつき、ぐるりと体をこちらに向けた。
後ろからぎゅうと抱き締められて、心臓が跳ねる。背中も暖かいけど、腕の中も居心地がいい。
「私…」
「ん?」
「私、ここ居ていい?」
銀時はふと笑った。
「居ろよ、好きなだけ」
ほら、ずるい言い方。
銀魂夢:ほら、生きてる(土方)
初めてあの女を「拾った」とき、まるで、まるで狂犬のようだった。油断すれば噛み砕かれる。それほど悪意と殺意と悲哀に満ちていた。散らばる死体。女の家族だろう。濁った目は天井を仰ぎ、二度と動かない。
「うぁー、うー」
精神が参っているのか、女は虚空に手を伸ばし、ひたすら空を掴む。浪人に斬られたのだろうか。長い髪は半分だけ、とても短く刈られている。
「おい、しっかりしろ。」
女は俺の声に反応し、憎しみの目を向けた。血が乾いた爪で頬をかすめる。
「やめろ、殺したのは俺じゃない」
女には届かない。仕方がないか。眼を閉じて動きを止める。ガリと厭な音を立てそうなほど、女の爪が頬を捉えた。女は一瞬躊躇した。その隙をつく。鳩尾に拳を入れた。女は呻き声も上げずに倒れ込んだ。
俺はとりあえず安堵して、煙草に火をつける。女を左肩で支える。
「…んで、」
「あん?」
「なんで、死ななかったんだろ」
女の双眼から涙が落ちる。ため息を一つついて、涙を拭ってやった。
「んなこと云うな。」
「…」
「もうちょっと生きてから云え。」
女はそのまま意識を手放した。いや最初から意識なんかないのかもしれない。
「生きろ」
俺がお前に
生きて慾しいと
望むんだから。
「うぁー、うー」
精神が参っているのか、女は虚空に手を伸ばし、ひたすら空を掴む。浪人に斬られたのだろうか。長い髪は半分だけ、とても短く刈られている。
「おい、しっかりしろ。」
女は俺の声に反応し、憎しみの目を向けた。血が乾いた爪で頬をかすめる。
「やめろ、殺したのは俺じゃない」
女には届かない。仕方がないか。眼を閉じて動きを止める。ガリと厭な音を立てそうなほど、女の爪が頬を捉えた。女は一瞬躊躇した。その隙をつく。鳩尾に拳を入れた。女は呻き声も上げずに倒れ込んだ。
俺はとりあえず安堵して、煙草に火をつける。女を左肩で支える。
「…んで、」
「あん?」
「なんで、死ななかったんだろ」
女の双眼から涙が落ちる。ため息を一つついて、涙を拭ってやった。
「んなこと云うな。」
「…」
「もうちょっと生きてから云え。」
女はそのまま意識を手放した。いや最初から意識なんかないのかもしれない。
「生きろ」
俺がお前に
生きて慾しいと
望むんだから。