ジョージアでぜひ観たかったのが、国民的画家ニコ・ピロスマニの作品。

 

黒々とした野太い線が印象的な、素朴とも原始的ともいえる絵は、フランスの画家、アンリ・ルソーを彷彿とさせる。おみやげ物屋では彼の絵を使った商品が溢れていて、人気のほどがうかがえる。

 

まずはトビリシのナショナル・ギャラリーに向かった。

 

 

 

 

1862年、ロシア帝国統治下のジョージアの生まれ。「放浪の画家」「孤高の画家」と呼ばれ、独学で絵を習得し、各地を放浪しながら絵を描いて暮らしていたそうだ。作品が評価されはじめるのは最晩年で、1918年に貧しいまま亡くなったという。

 

 

(左の写真?の人物がピロスマニ。彼の描く絵の人物と似てる)
 

ジョージアに来る前は、彼の独特な絵は、彼自身の個性が生み出した作風なんだと思っていた。だが1週間ほど滞在してから絵を見ると、人も自然もジョージアの印象そのままのように感じられた。当のジョージア人が賛同するかはわからないが。

 

 

「門番」1905年頃

 

 

実際、ジョージアの人の顔は、濃い。彫刻刀でピシッと削ったような強く厳しめの顔立ちを、黒々した濃い髪や眉やまつげがくっきりと縁どっている(もちろん、全員ではない)。
公衆トイレでうっかり鏡に一緒に写ったら、自分の顔なんてインク切れの印刷かと思うくらい薄くて、顔だと認識できないほどだ。

 

そして灰にけぶったような、どこか荒々しさのある黒と白も、ジョージアの人と自然の印象に重なる。

黒いキャンバスを使ったとどこかで読んだので、その風合いかもしれない。

 

 

「ロバの橋」
 

表情の読めない人物と暗めの色合いに、一見不気味な、なにかよからぬ場面が描かれているように感じる。でも、説明を読むとどうもそうでもないようなのだ。そこにある風景、人物のありのままなのかなあ、と想像する。

 
 

「カヘティの列車」
 

 

日本で有名と言えるのは、「女優マルガリータ」という作品だろうか。絵よりも、エピソードが知られている。
貧しい画家のピロスマニは、女優マルガリータに恋をして、彼女の家の前をバラで埋め尽くした。その話をもとに生まれたのが、加藤登紀子が歌ってヒットした『百万本のバラ』。この逸話が事実かどうかは定かではない。

 

 

「女優マルガリータ」 (1909年)

 
 

展示された作品は20点もなかったと思う。やや物足りないが、来館者も少なく1点1点じっくり見ることができた。
4年前発行のガイドブックで12ラリと紹介されていた入館料は、いまは倍以上の25ラリ(約1,400円)。

 



トビリシ中央駅の近くに彼の終の棲家があり、見学できる。家の前の通りはピロスマニ通り。近くまで行きながら、別の日にゆっくり来ようと思って、ついに行かず。

 

 

絵を見た後は、前日につづき日本食屋さんへ。

 

トビリシには日本食屋さんがそこそこある。ホテルの前の短い通りだけでも、ざっとスシ屋2軒とラーメン屋1軒。この日はGoogle Mapで見つけて行きたいと思ったお店がわりと近かったので、そちらへ。

 

「おこめ家」

 

 

しょうゆラーメンと塩昆布おむすびの、炭水化物づくし。合計30ラリ(約1,700円)。上品な和のお味が、疲れのたまった体にしみわたる。食べ慣れた味って、ほんとにすごいパワーだな。とってもおいしかった。

 

 

(落ちついた立地のおこめ家さん。テラス席はお隣の別のお店)
 
 

 

店主らしき日本人の方と少しお話しした。お店の方も、店の雰囲気も、お料理も、落ち着きがあってホッとする。癒されました。ありがとうございます!