メスティアから山道を車でさらに50km行ったところに、秘境と呼ばれるウシュグリ村がある。
スヴァネティ地方の最奥、コーカサスの山々に抱かれた標高2200~2300m。定住者のいる村としては、ヨーロッパで最も高い地点にあるのだそう(ジョージアはヨーロッパかアジアか、という論争もあるが)。
交通手段はメスティアからの車のみ。観光客向けの日帰りバスが出ているので、前日に予約した。出発は朝10時で、夕方までに戻ってくる。料金は往復50ラリ(2,700円くらい、現金のみ)。
(観光バスのチケット売り場。こういう店が中心部にいくつかあって、どこも行先や金額は同じみたい)
翌日、9:30には乗り場へ。4WDのミニバンらしき車。トレッキング姿の若者3人と、軽装の中年男性(のちにロシア人観光客と判明)が一緒。
(休憩地点にて。ここからでも充分美しい。標高が変わると木々の映え方や葉っぱの色もがらっと変わり、一斉に紅葉している場所もあった)
運転手と助手席のロシア人のおしゃべりは、2分と止まることはなかった(ロシア語での弾丸トーク。運転手は地元民のようだが、バイリンガルなのか、なにか、気になった)。身振り手振りをまじえて大声でがなりたてながら、曲がりくねった山道を爆走し、それでも無事故なのは才能なのか、運なのか。
車が減速するのは、牛や馬が道をふさいだとき。安全運転させるために、もっと牛を歩かせたらいい。
車は山をひたすら登りきると、今度はずんずん高度を下げていく。最後に少しだけ未舗装の区間を通り、1時間半ほどでウシュグリ到着。
午後から雨予報で、厚い雲のかかったウシュグリ村。よそものを寄せ付けない空気を醸し出し、これはこれで秘境感が増す。
奥の雪山はシュハラ山(標高約5,200m)。一緒に行ったロシア人によると、その向こうはロシア連邦の構成国であるカバルダ・バルカル共和国だそうだ。
若いトレッカー3人は宿泊するようで、それぞれ宿で降りて行った。観光して日帰りするのは、ロシア人とわたしの2人だけだ。帰りは3時頃の出発でいいか、と聞かれ、よいことにする。あの道を暗くなって通りたくない。
(1本の幹線道路のほかは、未舗装のこんな道ばかり。これはきれいな方。左の建物はゲストハウス。右は住居だろうか、廃墟も多そう)
不便な場所で雪も深く、今では通年で定住している住民は少ないらしい。古くくすんだ石造りの建物が並ぶ未舗装の細い路地に、色とりどりのウィンドブレーカーを着た大勢の観光客。その不釣り合いさが奇妙に写る。たまに、観光客相手の仕事をしているらしい住民の姿がある。
道中は大声でがなり立ててた運転手さんが、敬虔なおももちで祈りを捧げる姿に胸をうたれた。ジョージアではこうした姿はごく当たり前で、宗教が生きていることを感じる。
(民家の一室をミュージアムとして営業しているらしい。ぼろいくせに風情がありすぎる)
小雨がぱらついてきて、気温もぐっとさがってきた。午後2時頃、「もういいかな?」ということで、早いけどメスティアに戻ることになった。雨の山道を爆走するなんてごめんだ。その前に帰りたい。
(現役なのかわからないベンチと扉)
正直なところ、村のなかを「観光」するだけなら、2時間で充分だった。同じような光景が続くので。
30分ごとくらいに時間を区切り、車で少しずつ移動して観光させてくれたことので、かえって好きなところを歩き回れる時間がなかった。ちょっと誤算。山の方をのんびり散歩したかった。
特に正午の前後は日帰りの観光客が一斉に訪れる時間帯。ウシュグリのよさを味わうのは、宿泊がベストですね。
ともあれ、ウシュグリに早い冬が降る前に来れてよかった。間に合った。帰国から10日もしたら、天気予報はもう氷点下と雪マークが示されていた。
帰りも飛ばしに飛ばして、1時間強でメスティアに帰着。
こちらも小雨が降り出し、前日とうってかわって寒かった。早めに食事に出かける。
前日と同じレストランで、この日は寒いので屋内の席へ。
食べたかったジョージア版ソーセージ「クパティ」と、野菜スープ。半分ずつのポーションがあればなあ…。おいしいんだけど、ソーセージは妙に獣っぽく、スープの油も胃に重い。ちょっと疲れが出てきてカゼっぽいので、そのせいだろう。
早く休みます。毎日そうだけどね。