当初の思惑は、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアの3ヵ国周遊だった。
南コーカサスと呼ばれる、周囲をロシア・イラン・トルコ、そしてカスピ海と黒海に囲まれた3国だ。
しかし、それまでの2ヵ月間だらだらゴロゴロするだけの毎日を過ごしていたために、体力気力をすっかりなくしていた。
歩く自信、荷物をまとめる自信、飛行機に乗る自信、外国でバスやタクシーに乗ったり、買い物をしたりできる自信が、なかった。
1ヵ国でもできる気がしないのに、2ヵ国、3ヵ国なんて、無理。そんなわけで、最後まで迷ったものの、いちばん旅がしやすそうなジョージアを、単独で旅行することにした。
いまのわたしは無職、いやモラトリアムと言おう、いつでも旅行ができる。フライトを調べ、購入ボタンをクリックするだけになった。そこからも長かった。
毎日、やっぱり無理、今日も買えなかった、今日も決断できなかった、明日こそ、今日こそ、こんなならいっそ旅行なんてやめてしまおう、やっぱり行こう、できる、できない、と、葛藤する日が1ヵ月以上続いた。
1日中、葛藤以外してない。
自信を取り戻すために外を歩いたらよいのではないか、パッキングを始めてみればどうかなどと考え、いつでも出発できるよう冷蔵庫の整理まで済ませた。中途半端にスーツケースに荷物を広げたまま、空の冷蔵庫で何日も過ぎた。
行こうとしている地域が早い冬を迎え、散歩に適さなくなる前に。
それだけが唯一のリミットだ。
そうしてある日、決死の覚悟で5日後に出発するフライトの予約をした。
もともと8月下旬から行くつもりが、結局9月下旬の出発となった。ぎりぎり、季節は間に合うだろう。
チケットを買ってからは、自動運転で準備は完了した。
当日を迎え、なんなく空港に行き、出国手続きをし、搭乗した。
そんな自分が信じられないような、当たり前のような。
ここまで、出発までの長いウダウダの話でした。
次回から、ちゃんと旅行の話。