1973年シカゴ生まれのシアスター・ゲイツ。
彫刻と陶芸作品を中心に多種多様なジャンルで活動し、2004年には愛知県常滑市で陶芸を学んだそうだ。
「アフロ民藝」という言葉はゲイツ本人が作ったようで、
「アメリカの公民権運動(1954-1968年)の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の「民藝運動」の哲学とを融合した、独自の美学を表す」
そうな。
ゲイツの言葉で言えば、その2つに共通していたのは、「地域性を称え、美への意識を高め、文化の力を尊ぶ、揺るぎない態度」とのこと。
そもそも日本の民藝運動についてはフワッとしたイメージしか持ってないので、よくわかったとは言えないが……。
展示は、まず空間がかっこよかった。作品が置かれた空間。
泥臭さと緊張をはらんだ静けさがあって、怒りかどうかはわからないけども、なにか訴えてるのなあという印象。
彼のアメリカでの活動を紹介するパネルが展示された部屋があり、それを読むと作品の意味するものをもう少し理解できた。
例えば、アフリカ系アメリカ人が多く住み、貧困や暴力やドラッグなど問題を抱えた地域で、都市再生のプロジェクトを行っている。空き家物件をコミュニティスペースとして再生。
麻薬密売所だった民家は、黒人の歴史や地域にまつわる映画を上映する場所に再生されたり。
地域の雇用拡大にも貢献しているそうだ。
地域おこしというだけでなく、貧困や暴力といった社会問題の解決として力を持つアート。
鑑賞してきれいだなあ、かっこいいなあ、と味わうアートとは違うかもしれない。
味わうことももちろんできるけれども。社会に対する態度を突き付けられるような、そんな経験でした。
■シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝
会期:~2024年 9月1日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
同時開催の「MAMコレクション018:グエン・チン・ティ」も鑑賞。
グエン・チン・ティはゲイツと同じ1973年に、ハノイで生まれた映画監督、映像アーティスト。
「複数のスクリーンとサウンドが同期する映像インスタレーション」。
こちらも、なんらかの社会の影(戦争とか?)を抱えているような感じでもあり、でも具体的なことを示すわけではない。
こちらもよかったので、森美術館に行ったら両方ぜひご体験を。
■MAMコレクション018:グエン・チン・ティ
会期:~2024年 9月1日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)