マケドニア(現 北マケドニア共和国)の首都スコピエから、バスでアルバニアの首都、ティラナに向かう。
農地や林が続く道を走り、国境を越えてアルバニアに入ると、あきらかに雰囲気が変わった。
さっきまではのどかな田園風景、それがいまは、荒野に映るのだ。なにが違うのかわからない。不思議に思いながらバスに揺られていた。
日が暮れたころ、街が現れた。
記憶がデフォルメされている可能性もあるのだが、その街は暗かった。窓に明かりは灯らず、街灯もほとんどない。赤信号で止まると、暗い中を人々が歩いていて、どうにも陰気な雰囲気だ。
「ここがティラナじゃありませんように。ここで降ろされませんように!」と真剣に祈った。
幸いその街は通り過ぎ、もう少し大きめの街が現れた。19時頃だったか、それなりに明かりの灯ったそこそこ大きなホテルの前に停車すると、そこが終点。
カイロの旅ノートにあった通り、大勢の男性がホテルの前で堂々と宿の客引きをしている。10人か、もっといたか。
わずかだが英単語を知っていた、気の良さそうな男性のところに泊まることにした。
そうそう、この時の旅は、ボーイフレンドと2人旅。お相手は英語が流ちょうで旅慣れてもいる。なので、ひとりで冒険したわけではありません。
しかし、この2人旅は不愉快の極みだったため、旅の思い出がよみがえるときは見事にその人の姿が欠落している。
さてさて、3人で宿に向かう。
その道中も暗い。
なんの店だろう、とショーウィンドウをじっとのぞくと、アッとびっくり、暗闇に目が慣れると向こうから大勢の人がこっちを見てることがわかった。なんとなくレストランぽく感じたが、わからない。彼らが暗闇で食事をしているのか、スモークガラスなのか・・・。
すぐに住宅街になり、そのなかの小さな一軒家が、客引きのおじさまの自宅だった。その離れが本日の宿。民泊のようなものですね。たしかシャワーやトイレも離れにあって、古いが清潔でなかなか心地よかった記憶がある。
おじさまは親切で、寒くはないかと毛布を増やしてくれたり、地酒を飲ませてくれたりした。この人も相当な呑んべいと見た。
おそらく、宿泊客がいない日は長距離バスがくるたびにホテルの前で客引きをしているのだろう。
なんとも陰気な印象の国に不安はあったが、このおじさまのおかげで人心地つけたのはありがたかった。
こうしてアルバニア1日目終了。
つづく。