ジョージアの映画。

 

舞台は首都トビリシ。主人公のエレネは作家で、79歳の誕生を迎えたけれど、家族はみんな忘れている。
ある日同居する娘が、夫の母、娘からしたら姑を同居させると言い出す。そして何十年も前に別れた恋人からの突然の電話が。


それによって起こる小さな軋轢から、彼らの過去が浮かび上がってきます。



ジョージアは1991年にソ連から独立した国。日本ではかつてロシア語読みの「グルジア」と呼ばれていました。

姑はソビエト時代の元政府高官。
一方、主人公は両親をその政府の弾圧で失う過去をもちます。本人も人生を大きく傷つけられた。
いまは貧しいながら穏やかに見える暮らしも、ついこの間まで政治に翻弄された過酷なものだったことが伺えます。

タイトルの「金の糸」というのは、日本の金継ぎを指しています。割れたり欠けたりした陶磁器を、漆を使って接着し、そのうえを金粉で装飾する日本の伝統工芸。

過去と現在、ソビエト時代と独立した現在、弾圧した側とされる側、その大きくて深い溝を、思いやりという金で継いでいけるのか。

監督のラナ・ゴゴベリゼさんは、自身の父がスターリンの粛清で処刑され、母は強制収容所に送られ、その経験が映画に反映されているということです。


社会問題も考えさせられましたが、老いること、許すこと、生きること、いろんな思いが去来する、静かなよい作品でした。

 

『金の糸』
2022年公開 、2019年製作、ジョージア=フランス
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ

 

アマゾンプライムにて。