『大聖堂』ケン・フォレット著
内乱吹き荒れる12世紀のイングランドを舞台にした、壮大な人間ドラマです。
最悪系サイコパスの権力者たちと、人と街の発展(と自らの野心)のために闘う聖職者、動乱の世でけなげにたくましく生き抜く人々。その誰ひとり完璧にいい人も、優れた人もいない。完全な勝利もない。
そこが読んでいてスカッとできないところでもあり、共感できるところでもある。
最悪系サイコパスの権力者たちと、人と街の発展(と自らの野心)のために闘う聖職者、動乱の世でけなげにたくましく生き抜く人々。その誰ひとり完璧にいい人も、優れた人もいない。完全な勝利もない。
そこが読んでいてスカッとできないところでもあり、共感できるところでもある。
15年前もいまも、彼らの葛藤こそが、胸に沁みます。
人並外れたリーダーシップと人徳を備えた人物が、権力者を前に委縮したり、住民にカリスマ性を発揮できずおろおろしたりしながらも、必死に気持ちを奮い立たせる姿であったり。
時には恥ずかしい思いもし、人前でこっぴどくやられ、それでも顔を上げて生きていく姿。
仕事で「わたしなんて…」「あの人だから…」と拗ねたり諦めたりしがちだったあの頃、こんな偉大な人物も同じ思いはするのか、ここで踏みとどまって挑戦するかしないかなのだな、と思ったものです。
(ポーランド・クラクフのユダヤ人街にある、コーパスクリスティ大聖堂)
大聖堂と街がどのように生まれて、発展し、衰退し、変化していったか、というのも、物語のもうひとつの軸で、読みどころ。この秋の東欧旅行で教会や聖堂をたんまり見たので、久しぶりに読みたくなったわけです。
質も量もヘヴィー級の読書を楽しみたいとき、歴史好き、人間ドラマ好き、ヨーロッパ好きにもおすすめ。
続編もあります。