友人と国立新美術館で『蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる』を観ました。
かっこいい抽象画が見れると思っていたら、想像を超えていた。

蔡國強さんは1957年中国に生まれ、20代の終わりから10年近く日本で活動していたそうです。その間に、火薬を使ったあぶないアートを開拓してしまった。
仕切りのない広々した空間に、入り口側半分には大きな平面の作品が並んでいます。
「火薬ドローイング」は初期は紙、やがてガラスや鏡がキャンバスになっていく。抽象的ではありますが、コンセプトは直感的に伝わってくる。確かに爆発なのだけど、宇宙の痛いくらいの静けさも感じられます。

 

 

友人と一緒に見ていると、作品の中に見えるものが違うのがおもしろい。
ある作品で、わたしには背中が燃えて身もだえしながら走っている大勢の人が見えたものが、友人は、なんだっけ、マグロだっけ、全然違うものを見ていたりした。

 


半分から先は電球アートみたいなのがいくつも天上から吊るされていて、その間を自由に歩き回れるようになっていました。遊園地みたいで楽しい! よく見るとアインシュタインの顔だったり、宇宙人やUFOや天使だったり、どうやら宇宙とか未知との遭遇がテーマらしい。


色や光り方は刻々と変わります。会場は撮影OK、フラッシュと動画はNG、でした。

ところどころにあるモニターで、彼のインスタレーションが見られました。それは、屋外で行う爆発イベント。

 

YouTubeでもいくつかありました。会場で見た動画の方が迫力を感じるのですが、一端でも伝わると思います。

これは先月(2023年6月)岩手県いわき市の海岸で開催されたイベント。これ、花火・・・?


とにかく巨大なものや危険なものに血が騒ぐというのは、人間のサガでしょうか。ピラミッドにバベルの塔、噴火に山火事に高層ビルの解体、そして蔡國強さんの爆発イベント。世界各地で壮大な爆発を起こし、老若男女が大喜び。
どんだけ二酸化炭素を増やすんだ、地球温暖化の元凶め、と思いながら魅入られてしまう。

 

規模はどんどんでかくなっていき、万里の長城をゴビ砂漠の彼方に炎で1万メートル延長させたり、高さ500メートルの花火(というか爆発)の梯子「スカイラダー」を立ててしまう。スカイラダー制作のドキュメンタリーはNetflixで配信されています。

梯子の全容は本編しか見れないようですが、展覧会場のモニターでは見ることができます。圧巻です。いや、狂気。笑


展覧会のタイトルにある「原初火球」とは、「ビッグバン」のこと。それじゃあ、大爆発が必要なわけです。
宇宙とはなにか、なぜ生まれたのか、わたしたち人類と、地球以外の生命体にとっての宇宙とは。そんなどこにも答えのない問いに憑りつかれて、答えを求めてビッグバンを再生し続けているような。なんてことを感じました。
ひとりの人間の中にビッグバンがある。人間というのはなんて巨大な生き物なんでしょう。

 

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる

会期 ~ 2023年8月21日(月)

会場 国立新美術館