富永峻 ピアノリサイタル
2023年5月7日 (日)
会場:武蔵野市民文化会館 小ホール

1.バッハ ゴールドベルク変奏曲
2.ショスタコーヴィチ 前奏曲とフーガ 作品87より 第24番 ニ短調
3.フランク 前奏曲・コラールとフーガ


4月に続いて、バッハを聴きに行きました。今回はピアニスト・富永峻さんのリサイタルです。

ゴールドベルク変奏曲は、ひとつのアリアとその30の変奏曲からなる壮大な鍵盤曲。
これまではなんとなく気持ちよく聴いていただけですが、集中して聴いていると、自分の部屋(主題のアリア)から出発して、30の国々を旅してまた故郷に戻ってきた、ような気持ちになりました。
不眠に苦しむ伯爵を元気づけるために作られた、というエピソードが頭にあったためか、バッハが伯爵を旅に誘って、世界の美しさや生きる喜びをよみがえらせているイメージが湧いてきました。

あとで調べてみると、変奏曲のなかにはポーランド風、フランス風、イタリア風などのスタイルも散りばめられているとのことなので、それもあるかもしれませんね。

緻密に構築された小宇宙の旅を堪能しました。


武蔵野市民文化会館小ホールはパイプオルガンも設置され、教会のような神聖な雰囲気


後半のショスタコーヴィチとフランクは、うって変わって暗く重い作品。
パンフレットにこの2曲については「懺悔」とありました。
2人とも大好きな作曲家ではありますが、なぜ、生きる喜びの後に懺悔なのか……。

フーガつながりの曲であり、2人ともバッハの影響を大きく受けている(受けてない音楽家がいるのか、という気はしますが)というつながりもある。
どちらも悲劇の荒波にもまれるような音楽です。でもなぜか慰めも感じる。なぜだろう。
喜びのなかだけではなく、苦しみ、悲しみのなかにも神がいる、どちらも神の祝福である、のかもしれません。

アンコールは、シューベルト(リスト編曲)、バーバー、そして再びバッハ。最後までフーガしばり。

富永さんのリサイタルは3回目かな。知人の知人というご縁。いつも隅々まで神経のいきわたった演奏で、求道僧のイメージがあります。
富永さんは2019年からゴールドベルク変奏曲を毎年演奏しているそう。どう変わっていくのか、また聴いてみたいです。