4月に続いて、バッハを聴きに行きました。今回はピアニスト・富永峻さんのリサイタルです。
ゴールドベルク変奏曲は、ひとつのアリアとその30の変奏曲からなる壮大な鍵盤曲。
これまではなんとなく気持ちよく聴いていただけですが、集中して聴いていると、自分の部屋(主題のアリア)から出発して、30の国々を旅してまた故郷に戻ってきた、ような気持ちになりました。
不眠に苦しむ伯爵を元気づけるために作られた、というエピソードが頭にあったためか、バッハが伯爵を旅に誘って、世界の美しさや生きる喜びをよみがえらせているイメージが湧いてきました。
あとで調べてみると、変奏曲のなかにはポーランド風、フランス風、イタリア風などのスタイルも散りばめられているとのことなので、それもあるかもしれませんね。
緻密に構築された小宇宙の旅を堪能しました。
武蔵野市民文化会館小ホールはパイプオルガンも設置され、教会のような神聖な雰囲気
後半のショスタコーヴィチとフランクは、うって変わって暗く重い作品。
パンフレットにこの2曲については「懺悔」とありました。
2人とも大好きな作曲家ではありますが、なぜ、生きる喜びの後に懺悔なのか……。
フーガつながりの曲であり、2人ともバッハの影響を大きく受けている(受けてない音楽家がいるのか、という気はしますが)というつながりもある。
どちらも悲劇の荒波にもまれるような音楽です。でもなぜか慰めも感じる。なぜだろう。
喜びのなかだけではなく、苦しみ、悲しみのなかにも神がいる、どちらも神の祝福である、のかもしれません。
アンコールは、シューベルト(リスト編曲)、バーバー、そして再びバッハ。最後までフーガしばり。
富永さんのリサイタルは3回目かな。知人の知人というご縁。いつも隅々まで神経のいきわたった演奏で、求道僧のイメージがあります。
富永さんは2019年からゴールドベルク変奏曲を毎年演奏しているそう。どう変わっていくのか、また聴いてみたいです。