ちきりんさんのVoicy「アラブの春 なんとネットじゃなくテレビが!」を聞いて、シリア難民を取材した時のことを思い出しました。
ちきりんさんはVoicyで、「アラブの春はSNSの力で広まったと言われていたけど、現地で話を聞いたら、実はテレビの影響が大きかった」と言っています。
「アラブの春」は、2010年にチュニジアで起こったジャスミン革命を発端に、中東・アラブ諸国に広がった民主化運動のこと。チュニジアやイエメンのように独裁者を打倒した国もあれば、シリアでは大規模な内戦に突入しました。
2015年、そのシリア難民を取材した時のことです。
当時は国際協力団体に所属していて、海外の難民支援の現場をときどき訪れていました。
訪問した地域では、一気に大勢のシリア難民が身を寄せたことで物価が高騰、単純労働は最低賃金以下で働く難民に奪われ、地元の人たちの生活も圧迫していました。それが3年近く続いていた頃。
住民の人たちは難民にとても親切でした。でも一触即発のような空気もあった。本当のところ、どう思っているのか? そこで、街中やカフェで現地の人たちに突撃インタビューしてみました。
みな一様に口を濁すのですが、くりかえし聞くと返ってくるのが、
「シリアの状況を見たら帰れとは言えない。早く平和になってほしい」
ということでした。
この地域では近隣の国のテレビ番組(たしか衛星放送)が入って、シリアでの紛争の映像が連日放送されていました。それを毎日見ているのだと。
距離的に近くでもあり、延々と続くモザイクなしの生々しい映像によって、この頃はまだ、苛立ちよりも共感や同情の方が上回っている、ということのようです。ああいう映像はどうなのか…と思いつつも、テレビの力、知ることの力は大きいと思いました。
ただ、この放送を見ているのは彼らだけじゃなかった。
学校に行けない難民の子どもも、1日中家にいてこの番組を見ていました。
そして、その紛争で大けがを負ったり、うつ状態になったりして家にこもっている大人も。
もちろん全員ではないですし、この方たちもわたしが目撃したその時だけのことかもしれません。
ちなみに、テレビは近所の地元民がくれた、というお宅が結構ありました。
良し悪しということでなく、ただとても印象に残っています。
連絡や情報のツールとしてのSNSの力もまた、難民支援では強く実感させられたのですが、それはまた別の話で。