下の写真は26歳のわたし。26年前。
中国の新疆ウイグル自治区からバスでカラコルム山脈を横断し、標高3千メートルのパキスタン側のイミグレに到着したところです。
頭にスカーフをかぶっているのは、それまでいたムスリムの多いウイグル自治区でのおしゃれのなごり。
わたしが通ってきて、この後も山を降りるまで通ることになる道は、1978年に開通したカラコルム・ハイウェイです。
この道は、「国境を横断する舗装道路としては世界一の高所を通る道路」で、建設中に1000人が命を落としたと言われています。今も時折、死傷者が出る。
それはなぜか? 行けばわかる。
切り立つ崖っぷちにへばりついた細い道には、ガードレールもないし、崩壊土砂を防護するネットなどもない。走行中に落石や土砂崩れがあれば(よくある)、乗客は全員降りて岩肌を這うように歩いて進み、軽くなったバスは慎重に難所を通り抜ける。そんなことを何度か繰り返す。
崖下を覗くと、1週間前に落ちたという車両が見える・・・。
国境近くの山間の村にしばし滞在したら、再びカラコルムハイウェイを通って、首都イスラマバードに向かいます。
その先ももちろん断崖絶壁。
今度は夜行バスで、街灯もなく、月明かりだけが頼りの中、そこそこスピードを出す。
寝てしまいたいが怖くて眠れない。
じっと目をつむっていると、突然スピードが落ち、車体がわずかに沈んだ。
おそるおそる目を開けると、バスは木でできてるとおぼしき細い吊り橋を、ギシギシいわせながら渡っていた。はるか眼下には月に照らされて輝くインダス川。
心臓が凍るとはこのこと。
夜が明ける頃、無事に首都イスラマバードに到着。
そこから近くのラワルピンディという町に移動し、ようやく安宿に落ち着くと、わたしはそのまま熱を出して寝込んだ。
あんな道だなんて知らなかったんです。シルクロードを旅したかっただけ。
知ってしまったらもう2度と通れません。
当時はネットもろくに普及してなくて、情報なんてほとんどなかった。
臆病者が冒険をするには、よい時代だったかもしれません。
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この話を思い出したのは、YouTubeのおすすめにこの動画が上がってきて、懐かしくて見たから。動画の後半の場所には行ってませんが、前半は体験したそのまんま。