見たこともない出血量。

 

頭は真っ赤に染まっていた。

 

 

救急車、一体いつ到着するのだ。

 

遅いっ!

 

まだ5分もたっていなかったが、時の進みが遅すぎる。

 

 

私の腕の中にいる彼に、意識が戻る様子はない。

 

声を掛けること以外、何も出来なかった。

 

 

「大丈夫です! もうすぐ救急車が来ますから、もう少し耐えてください!」

 

 

大声に応じることはなく、彼の出血だけが温かい。

 

五感が狂う。

 

常夏の国にいるはずが、厳冬の訪れのような寒気を感じた。

 

 

彼の下がっていく体温。青白くなっていく肌の色。

 

なぜこうなった?

 

刺された?

 

いや、撃たれたのか?

 

くそっ、負傷の瞬間だけ目を外していた。

 

何処かで私たちの行動は阻止することができたはず。

 

 

どうして俺の人生は狂った?

 

 

いつから狂った?

 

 

くそっ、くそっ、くそっ!

 

 

ああっ! 回想している場合ではないぞ! 

 

彼の脈を見失ってしまった。

 

無駄にぽっちゃりのせいだ。どこだ?

 

 

探すうちにどんどん生の色が消えていく。

 

もうただの人形のようだった。

 

 

人の死に立ち会ったことなどない。

 

しかし、

 

 

“彼はもうすぐ死ぬ”

 

 

それだけは分かった。

 

 

こんなことになるのなら、全てを断るべきだった。