1

 

 わたしは香川咲人くんが好き。どれくらい好きかと聞かれれば難しいが、それはそれはもう咲人くんのお嫁さんになりたいと感じるくらい、咲人くんが好きだ。わたしのこの好きな気持ちは、つらい気持ちばかりで、わたしを幸せにしてはくれないし、わたしはこの恋で、成長できるとも思わない。それでも好き。だって、咲人くんのことが、世界で一番好きだっていう根拠があるから。

 

     2

 

 四月初旬、わたしは私立花山高校に入学した。ここでの目標は、『友達をつくること』。わたしは中学時代、友達がいなかったこともあって、絶対に友達がほしかった。いつも一緒にいて、仲良く楽しく笑いあえる。そんな『友達』に、わたしはとても憧れていた。

 通学の電車に乗っていると、美羅がいた。美羅はとても可愛い女の子だった。この子と友達になりたい。そう思った。だから、わたしは美羅に話しかけた。

 

     3

 

「あの、初めまして。わたしは、湯浅のぞみです。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「いわささん?」

「いえ、湯浅です。お湯が浅いって書きます」

「ごめんなさい。湯浅さんね。わたしは、佐藤美羅っていうんだ。佐藤はそのままで、美羅は、美しいに羅生門の羅。全然美しくないのにね」

「そんなことないよ! 美羅ちゃんは可愛いよ」

「ありがとう。のぞみって、どんな漢字なの」

「平仮名だよ」

「お父さんかお母さんが、新幹線好きだったり」

「もう。それ言わないでよ。よく言われるけど違うから」

「ごめんごめん」

 このときは思いもしなかった。わたしがなにかに狂い、美羅と絶縁することを。

 

     4

 

 わたしはあなたに恋をした。でも、わたしが自分の気持ちに気づいた日には、あなたはもう学校に来ていなかった。その日から、わたしは来る日も来る日も、あなたにメールを送った。送り続けた。そして、告白もした。でも、何回言ったところで、わたしの気持ちが届くことはない。わたしは狂って、おかしくなった。おかしくなってもなっても、この気持ちを辞めたくはない。そのことで愛想をつかした美羅は、わたしから離れて行った。

 

     5

 

 なんでみんなにあなたが嫌われるのか、ちゃんと考えた方がいいよ。同級生にそんなことを言われたことがある。このことについては、未来のわたしなら分かるけれど、今のわたしには分からない。

 咲人くんにさえ好かれれば、ほかの誰に嫌われてもいい。そんな考えだったから、そこまできつくはなかったけれど、本当はわたしだって、人に嫌われたくはないという、茫漠とした思いもあった。

 そこからわたしは咲人くんを忘れて、人に好かれるように懸命に努力した。その結果、わたしにはまた友達ができた。

 そのときに思った。

『人生にはときには回り道も必要で、間違えることにも意味はある。また、その間違いが、誰かの心を動かすかもしれない。だから、たとえ間違えても、ゼロに戻して、また一から始めればいい。マイナスからのスタートは最高だ』