先祖の神=おおもとの神

昔のユタは、ナンカ・シューコーで墓にお供え物を持っていく時、供の者がうっか

りそのお供え物を墓の真正面に置いたりすると、ユタはそれを左側に置き直させ

た。そして「左からだよ、左からだよ」と言った。「なぜ左を拝むのですか」と聞く

と、「左にはウカチミ・ウヤクバがあるからだ」と答えたそうだ。

この「ウカチミ」とは、人間の運命を握っている支配者(神)という意味で、「ウヤク

バ」とは、その支配者のおられる役所(御役場)という意味である。そしてユタの

祈願のセリフを聞いてみると「今日(キュウ)ヌユカル、マサル日ニ、

生命アルムヌ血走(チバシイ)ユルムヌ、ウサギヤビラバ、親ウ元祖ヌ、不足、

罪咎、アヤビテン、ウイチチジュラサ、ウタビ召(ミ)ヨウチ、

ウナガミトウタビ召(ミ)ヨウチ、後生極楽(グソーグクラク)

通(トゥ)チウタビ召(ミ)ヨウリ」

その意味は「今日の良き日に、命あるもの、血走っているものを、おささげ致しますから、

ご先祖様の罪咎、不足ごとがありましても、お許しくださいまして、極楽に通してやってください。」ということである。

この祈りは、ご先祖様を神様として、祈願しているのではなく、

主権者としてのおおもとの神に、祈りをささげていることが分かる。

この祈りの場合、お墓の中央に向かってではなく、左側にいらっしゃる「ウカチミ」

に祈っていることになる。もちろん、お墓の中央にも、神がいらっしゃるのだが、

この左(ヒジャイ)ウカチミは、祈りを通してくださる神と言われている。