革 ~鞣しによる違い~
前回 「 革 ~動物の種類と牛の生育状態による種類~ 」 と題して、色々な皮の種類について記事にしました。
第二回の今回は「皮の鞣し(なめし)による種類」 について説明していきます。
その前に一言だけ・・・
レザークラフト、カービングはタンニン鞣しの革専門の技法です。
特にカービング、名前などの刻印入れはタンニン鞣しの中でもヌメ革やタンローなど限られた革でしかできない技法なので、革の種類を知らないと革購入時点で間違った選択をしてしまいます。
趣味で楽しんでいる方やこれからやってみたいという方には、是非知っておいてもらいたいです(*゚ー゚)ゞ
「皮」とは生きている動物の皮の事、もしくは剥がされた皮、要するに生の皮の事を指していて、皮は主に食肉用の牛などからの副産物として得られるものです。
生の皮はそのままだと当然腐ってしまいますので、塩漬けにした状態で保存し、その状態で輸出されます。
そこから加工された「革」にする作業が始まります。その作業を製革と言います。
その作業のメインが「鞣し(なめし)」と言われる工程。
鞣し終わった皮の事を革と呼び、服や鞄、靴、手袋、財布などの材料や素材の仲間に入ることができるのですが、簡単に言うと皮を柔らかくして腐らないように加工を施す事を鞣しと言います。
この「鞣し」から話がややこしくなっていきます(´0ノ`*)
鞣しには大きく分けると二種類あって、化学薬品を使う「クロムなめし」と
植物の渋(タンニン)を使う「タンニンなめし」(ヌメ革やタンロー)があります。
最近ではクロム鞣しの後にタンニン鞣しをする「混合鞣し」など色々な鞣し方があります。現在は少なくなっているものも含めたら10種類以上はあるはず、でも基本的には上記の二つです。
まぁ、鞣し方の違いとか、鞣しの工程を言い出すとキリがないのであまり詳しくは書かないですが、鞣しまでの準備工程と鞣しの種類によって革の種類がどう違うのかを説明します。
緑色の字の部分は専門的な工程を書いてますので、飛ばしてもらっても支障ありません(;^_^A
鞣し前の準備工程でも7~8工程あります。
その準備工程では汚れや余分な肉や油を落としてから「石灰漬け」にして革を膨らませて柔らかくします(革の膨潤)。
この時のペーハー値(以下ph値※)が重要で革がアルカリ性(ph値10~12)になったときに最大の膨潤が得られます。この工程によって革の性質が決まると言ってもいいんじゃない?ってくらい重要な工程です。
皮は動物の皮膚なので、コラーゲンによってできています。コラーゲンは線維(せんい。「繊維」ではない※)なので、その線維を膨らませる事で柔らかいモノにします。
この石灰漬けによって毛などを溶かして処分しちゃいます。(羊の毛などは利用できるので、毛を残す処理の仕方をします)
そこからアルカリ性になった革を中性(ph7.5~8.5)にする「脱灰」
タンパク質分割酵素により不要なタンパク質を分解除去し、銀面をなめらかにする「酵解(ベーチング)」。
この後の鞣しをしやすくするために革を酸性(ph値3あたり・革の条件によって変化)にする「ピックリング」
これらの工程の合間に分割などの工程があり、それぞれの工程で皮の内部の不要物質を除去しています。
※ペーハー値(ph値)
酸性、中性、アルカリ性を示す数値。
普通ph値7が中性。数値が7より下がるにつれ弱酸性~強酸性、上がると弱アルカリ性~強アルカリ性となる。
※線維(せんい)
医学上、生物学上、生物の肉の繊維の事を「線維」と書く。繊維状という意味では「繊維」の意味と変わらない。
ここからやっとこさ鞣しの工程です・・・・やっと本題(T▽T;)
クロム鞣し
クロムとは金属の一種。塩基性硫酸クロム鞣剤を使った鞣し。
ドラムと言われる↓のような樽に皮と鞣材を入れて数時間回して革を作ります。
出来上がった革の特徴としては、厚さは薄く柔軟性があって保存性、耐熱性、染色性が良いので鞣し後の加工によって多種多様な革の種類の元になる。
靴、鞄、手袋、ベルト、衣料、家具、など殆どの革製品はクロム鞣しと言ってもいいくらい使用されています。
鞣し後、染色加脂加工前の状態を「青革」と呼ぶのですが、これはクロム鞣しをした証で、染色後も床面(革の裏)やコバ(断面)などにうっすら青い色が残るのも特徴の一つ。(全てのクロム革に当てはまるわけでは無いのでご注意を。)
下の写真が鞣し後の青革。ここから染色などの加工をしていきますヘ(゚∀゚*)ノ
・・・身近なモノでは無いかもしれませんが、鉄工作業や溶接作業用としてホームセンターなどで売っている手袋が「青革」ですね(* ̄Oノ ̄*)
あの手袋は吟面(ぎんめん・革の表)をそぎ落としたあとの残りの革「床革(トコガワ)」をクロム鞣しによって鞣された状態。染色はしていない。耐熱作業用なので加脂はしてるかもしれないけど、耐久性を見る限りほとんどしていないと思う。
クロム革にはカービングなどの刻印を使う事はできません。
市販されているクロム革の革商品に入っている刻印は、専用の機械で熱と圧力によって入れています。
クラフトでクロム革を使う事はあるのですが、タンニン革とはコバの処理方法などが全く違うので注意してください。
タンニン鞣し
紀元前から行われている植物の渋を使った鞣し方。
その植物は・・・
南アフリカ産のミモザから抽出したワットルエキス
南米のケブラチヨから抽出したケブラチョエキス
欧州のチェスナットから抽出したチェスナットエキス
これらを単独で使用したり、混合して使用します。
クロムと違ってタンニンは濃度の違う浴槽(下の写真右上)に皮を順番に漬けていく方法で鞣します。
革の特徴としては、革の伸びが少なくて可塑性(※かそせい)に優れています。
しっかりとした堅さのある革なのでよく使われているものとしては靴の底材ですね(‐^▽^‐)
紳士靴の本革底にはタンニンなめしの革が使われています。
他にはヌメ革をはじめとしたクラフト用皮革の殆どがタンニン鞣しです。上記の底革よりも鞣し方が薄い(タンニンの濃度・充填度が薄い)革を言います。
※可塑性(かそせい)
物体(革)に対して物理的な力を加えた時に生じた革の変形が、力を取り除いても元に戻らない性質の事。
クロム革よりタンニン革に顕著で、水分、熱を加えることでより性質が大きくなる。
この性質が鞄などの保存の仕方や濡れた時の対処によっては害になることもあるが、この性質が無ければ靴を作る事が出来なくなるので、革にとっては重要で、大きな特徴の一つだと言えます。
レザークラフトの普及、アメカジなどのファッションの流行などによってタンニン鞣しの革が流行ってきているんですが、ファッション業界はイメージ先行なので勘違いされていることが多々あります・・・
ヌメ革はタンニン鞣しではありますが、タンニン鞣しの革は全てヌメ革というわけはありません。
「ヌメ革は染色をしていない」というのもよく言われている説明なんですが、実際革屋に行って見ていると若干染色をしているけど「ヌメ」という言葉を使った革の種類がたくさんあります。
ヌメ革でもタンニン鞣し後の革に加脂加工、物によっては染色加工、グレージング加工を施しているのもあるし、その度合いによって種類に違いがあります。染色がされていないもので、同じヌメでもベージュの色の濃淡があるのはタンニンの濃度で出すこともできます。
それと、「ヌメ革」として売っていても原皮の状態、鞣し工場、鞣し後の加工などによってかなり大きな差が出てくるのもヌメ革の特徴だと言えます。品質としての差もありますが、見た目の色合いや、てかり具合、加脂量の違いなどでもかなり雰囲気が変わりますね。
ヌメ革の特徴でもあるベージュの色合いについては「革本来の自然な色合い」と雑誌などでも書かれていますよね。間違ってはいないんですが、あの色は革の色では無くタンニンの色です。
匂いについても「革の匂い」は「タンニンの匂い、鞣し材の匂い」もしくは「加脂加工後の脂の匂い」なんです。
一回目の動物の種類と今回の鞣しの種類、これだけでも一言で「革」と言っても色々あるんだという事がわかるかと思うのですが、次回からはもっと身近な革、素材として製品に使う革の種類について書きます(‐^▽^‐)




