この人はたぶん普通の文芸というか純文学だとか推理小説だとかで芽が出なくて、不本意ながらライトノベル界隈に活路を見出した方なんだと思う。
なんかこう恥ずかしがって書いてそうというか、なんか作者自体がもじもじしながら恐る恐る変なカタカナとか使ってる感じがすごい伝わってくる。
「こ、この大破局って書いてエンドロールって読むのほんとに使わなきゃダメですか?わ、わたし、耐えられない…。」
みたいな。作者男だけど。
物語の舞台は文明崩壊後で人間形態に変身できるドラゴンとそれと契約し乗って戦うドラグーンが戦力の中心となる世界。主要登場人物がみんな名前やら性別やらを偽っていてタイトルにふさわしい内容です。
1番心惹かれたのは生徒会長アダマスとそのパートナーである騎竜ソーニャ。
アダマスは性格を偽っているというか、生徒会長なんてやっているが本性はクズみたいな人。復讐にこだわったり、ヒロインが男装の麗人だと「気づかないまま」惚れてジェンダー意識に苦しんだりして精神的に追い詰められていき、メッキがはげていく。
ソーニャは才能はあるが指針を示されないと何も出来ない性格で落ちこぼれていたのを、自分に口出ししないが強い竜を求めていたアダマスに見出されてドン底の成績からトップに躍り出たため彼を盲信している。
物語が進むにつれ、周りからも痛い子扱いされ取り巻きからも見放されていくアダマス。そんな彼にパートナーのソーニャだけは常に影のように寄り添い、そしてついに衝撃の事実を告げる。主人公を殺そうとしたこと、ヒロインにその濡れ衣を着せようとしたこと、全て知っているが私だけはあなたの味方だと。逃げた取り巻きたちにかわって私がスパイの役目を果たす、と。
このときのソーニャがすごい嬉しそうなのが面白い。ソーニャは共依存のような関係を望んでいるからアダマスの孤立がむしろ嬉しいのだ。
対するアダマスもソーニャを無意識に手厚く扱っていて、上から竜が降りてきたときに突き飛ばしてかばう、敵襲のときに先にソーニャを棺桶に隠す、ソーニャが撃たれたときに激昂して敵に踊りかかる、落下するときに無意識に抱き寄せてかばうなど、マジでソーニャに「だけ」イケメン紳士なのです。
アダマスさん、美味しすぎる。ラストの後のアダマスさんとソーニャの人生を想像するだけでご飯何杯でもいけます。
