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カミちゃんは、これまで最先端のテクノロジーを我流で研究し、銀河系一の研究者だった。
しかし、カミちゃんには他人にない大きな特徴があった。
それは、カミちゃんが人と話す時は必ず、両手に紙しでのついた竹串を握って、まず「う~ん」と唸り、しばらくそのまま、う~ん、う~んと一通り唸り、身体をブルブル震わせた後、ふと、「カミちゃん」と大声で言ってから会話に入るのだった。
カミちゃんは当年とって65歳。奥さんと子供達に囲まれ、ここ惑星Gに住んでいる。
・・・やはりその言動に、相手は一度あっけに取られるのだった。
カミちゃんのその言動は、言うなれば本題に入る前の儀式のようなもの。・・・意味するところ自分の培ったあらゆる知能を、カミと神にかけて話に入りますという意味のようであった。
そしてそれは、一種の決意表明のようなものであり、同時に日頃我知らず溜めたストレスの解消をしようとする行動心理であった。しかしながら問題はその後。
呪術師の睡眠状態からさめたようになったカミちゃんは、会話に入ると2、3時間は当り前、さらに議論好きのカミちゃんのハートに日がつくと2、3日~10日間は続けられるのだった。そしてそれは相手が根を上げ、疲れて倒れるまで議論が続くことを意味していた。
・・・当然ながら、人の反応は賛否両論。
・・・そんなことはさておき、議論好きのカミちゃんは今日も己の議論になる相手を探しているのだが・・・
次第にその話が国中に伝わり、いつしか国の研究員が興味本位にカミちゃんのところへやって来た。手に持つ機器は、魂年代測定器。
・・・「なるほど・・・」研究員が驚いた。
カミちゃんの魂を測定した結果、古代の密林の奥に住んでいた霊媒師のものと判明した。つまり、カミちゃんはその霊媒師の呪術的な行動の現れなのだというが・・・
しかし、よく考えると密林の霊媒師が紙しでを持つかなあ・・・などと疑念を持っても、カミちゃんは今日も
「カミちゃん!」と雄叫びを上げてしまうのであった。
ここは、とある惑星。
人の心はそれぞれが持つコレステロールで測られていた。
大都市の真ん中に、脂ぎった心に、たっぷりコレステロールのついた中年男Aがいた。
Aは日ごろの企業活動に策謀を重ね、コレステロールの量が人の域を超えいた。どん欲な心に際限が無くなり、それがコレステロールとなって身に付いていた。そして欲の塊が、X会社の社長に伸し上げていたのだった。
Aはとうとう善悪の区別がつかず、理による仕分けができず、この時既に流行り病の豚菌に侵され、話すのは豚語。
困った従業員は、ひそかに医療省に相談をした。
医療省職員「そうですか。それはお困りのことでしょう。それでは、エネルギー省に相談して、最新のコレステロール測定器にかけ、無駄なエネルギーを取って、心を入れ替えてしまいましょう」
そうしてAは架空のエネルギー省主催の企業懇談会で別室に連れていかれた。麻酔の後、人の域をはるかに超え、測定器にも惑星外生物と出てしまったAのコレステロールを、医療省とエネルギー省のチームメンバーがすべて吸い取った。
Aの心が悪の極みだったせいか、単に脂ぎった食事の摂りすぎだったせいなのかは分からないが、Aのコレステロールは、エネルギー省に備蓄され、国のエネルギーとして燃料とされることになった。
• •3ヶ月が過ぎ、X社の従業員が医療省を訪ねた。
従業員 「やはり、駄目でした」
医療省職員 「やはりそうでしたか」
Aは一旦スリムになったものの、元来の悪玉コレステロールがものの見事に増加、リバウンドし、しかも流行り病の豚菌に侵された体は、それまで以上に•••まるで狂った豚のような姿に・・・
この時、世界中にその菌に侵されると豚になってしまうという豚菌がまん延し、各国が対処方法を考えあぐねていた。
国は、悪の権化となり、豚菌に侵されたAの処分に困り、その結果を逆手にとって、国防省から、生物兵器・豚1号として飼うことになった。
まさに、Aの厚顔無恥な顔付に打って付けであった。
国民からは、こういう豚の利用方法があったのかと驚愕され、他国から豚兵器に侵されると豚になるのではないかという脅威が襲っていた。
そして、豚菌除けマスクをした医療省の職員が一室でつぶやいた。
「豚兵器はいいが、豚から採ったコレステロールを燃やして空中に菌が浮遊してるから、結局同じなんだよね」・・・
