またやってきた。何か嬉しいことがあると、そこから大切なものが失われていく感じ。今まで何度も味わったけどね。。。どうして嬉しいのに、嬉しいはずなのに、涙が止まらないんだろ…。嬉し涙じゃなくて、すごく悲しくて怖くて黒い涙。
「今回は得たものがあったんだよ?失せ物なんてあるはずがないじゃない」
違う…、得られたのは成長だったよ、でも、やっぱり失ったものがある
「それは君にとって、泣くほど大切なものなんだね」
そう。私が変わると、何かが去っていく。『去っていく』…じゃないな。私が前に一歩進んじゃったから、置いてきちゃったんだと思う
「もう取り戻すことはできないのかい」
取り戻すってことは、多分一歩後退することになる。なんて言ったらいいんだろ…
「それじゃあ見えない何か、ってことでいいんだね」
それもちょっと意味合いが違う気がする。なんかね、『助けて』って言ってる
「人の声か…誰だか分かる?声の特徴とかで認識できないかな」
霊的なものじゃないことは予め断っておく。その声は私の“後ろ”から聞こえてくるんだ。不思議なことに、その人がどんな姿形をしてるか分かる。そして、決して振り向いてはいけない事も
「…じゃあその人に手を差し伸べてあげる事はできない?それは君が一番してあげたい事なんじゃないかと思ったけど」
悔しいけど、それはできない。別れなきゃいけないんだよ、その人とは
「手を差し伸べられないことに葛藤し、どうしても決別しなければならない事実に、君は苦しんでいるんだね」
そう。科学が飛躍的進化していたら可能かもしれないけどね。でも過去を救う事は無理なんだよ
「その相手の正体が、一歩進む前の自分ってわけだ」
…そう。過去の自分のことは私が良く知っている。どんな境遇に在って、どんな面持ちで快復を待ち望んでいるのかも
「もし過去に戻れたら、病気になる前に忠告したい?それとも病気になった自分を救いたい?」
病気になった自分を救うに決まってる。私はパーフェクトな人間になりたいとは思わないよ。たくさんの弊害を受けて、ぼろぼろになった鎧を打ち直してあげるのがロールだから
「じゃあどうしようか。別れが辛かったら、君は泣きながらその場で立ち尽くす?失ったもの(過去の自分の苦しみ)を取りに帰る?それとも…」
どうして苦しさ・辛さを失せ物なんて考えるようになったかは分からない。そしてそれを失ったことが怖い。今更それらに愛着が湧くなんておかしな話だよ。取りに帰るだなんて真っ平御免だ
「君は涙するときどんな場面が多い?思い出してご覧。…成長しているからだと思うよ。だから悲しいんじゃなくて、乗り越えられたことが自分にとって信じ難い出来事で、拒絶反応を起こしているだけさ」
そんな安易な考えで割り切っていいんだろうか…
「嫌だと思うけど、もうすこし掘り下げて考えてみようか」
私はいつも自問自答して答えを導くんだったな。分かった、もう少しだけ手伝ってくれ──