
でもね、今はそんな必要はないのです。
あくる日の事、上空高く飛ぶ飛行機を、ずっと目で追いかけていたことがありました。あの“人工鳥”はどこに行くのだろうね…と。
東から西へと、空に長い飛行機雲を残して、とうとう見えなくなりました。
2006年に公開されたアニメ映画『時をかける少女』──1回くらいは聞いたことあります…よね?嫌なことがあれば過去にさかのぼってやり直すことのできる「タイムリープ(Time Leap=時間跳躍)」というチカラを手にした少女の物語。主題歌もさることながら、感動的なお話です。
ラストの「未来で待ってる」「うん。すぐ行く。走っていく」のシーンは本当に泣けました(4回観て、真意をようやく理解した)。BD版(DVD版も?)のシーンチャプター名は「飛行機雲」。
この作品に限らず、飛行機雲が描写されている映画は少なくない。それは過去と未来のつながりを指し示している場合が多いと言われます。
そしてまた空を見上げると思うのです。あの“飛行機”はどこへ行くのだろうね…と。
はい、ペシミズムモード突入

前の記事で「空がみたい」と書きました。その最たる理由は飛行機雲を観たかったからです。自分の未来ってどうなるんだろうと、気になって仕方がありません。
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8年前、憧れていた先輩がいました。恋とかではなく、ひたすら自分の夢に向かって前進し続ける先輩の姿に…です。彼は小学生の頃からサッカー選手になってデビューするのが夢でした。中学卒業後は地元を離れ、サッカー選手の育成に名高い高校へ進学。どこまでいっても有名選手になる夢を掴みたい、情熱あふれる方でした。
彼はさらなる高みを目指して大学へ。数々のレギュラー出陣を叶え、もう彼の名を知らぬ人はいないほど、学外では有名なプレイヤーとなっていました。しかし転機は彼が大学4年の春に訪れました。足を酷使しし過ぎたため、右くるぶしが真っ青に腫れ上がってしまいました。レギュラーからは外され、陸続と下級生が入ってくる中、彼は必死に治そうと何度も病院へ足を運びました。
「これだけ手を尽くしても怪我は治らない。もう、サッカーはあきらめなさい…」と医者から宣告された時、泣き崩れたそうです。でも彼は、監督に黙って放課後密かに練習をしていました。「大学を出たらチームに入るんだ!」と、その時の先輩の笑顔は今でも忘れられません。
サッカーを辞めるのには、夢を追い求めるのを辞めるのには、即座に答えを出すことはできません。なぜなら、先輩は来年卒業──サッカーを選ぶか就職する道を選ぶか、苦渋の決断だったのです。しかし世間の目は冷ややかでした。怪我が災いして、もう試合に出してもらえない…。かつて名を馳せた彼を知る者は徐々に少なくなっていきました。
そして秋、先輩は「サッカーはもう辞めることにしたよ。この足じゃ、ただの木偶の坊だから」と宣言しました。その時もやはり笑顔でした。絶対辛いはずなのに。。。私は、その心情を察することはできませんでした。
今先輩は、医療機器販売の仕事に就いていて、職場で功績が認められるほど活躍しています。3年前に社内結婚もされています。
どうして彼は小学時代からの夢をあきらめながらも、新しい夢を掴むことができたのか。「人の歩む道ってさ、一つじゃないと思うんだ。サッカーを辞めなかったらこんな出会いもないし、夢一つ諦めたぐらいで人生の価値は決まらないよ」。
私も、一度は決まっていた道…それを踏み外して今ここに居る。先輩の言う通りなら、私にだってチャンスはある。要はチャンスは一度きりしかないと思うか、未開拓でも道を拓けと思うかの差だと思います。ペシミズムはまさにここが核心であり、後者を選ぶことができる勇気を持つ、これが私の未来を左右することになるでしょう。
そう考えると、飛行機雲は明日に向かっているんじゃないかなって。だから眺めたい。水晶玉には映らなくていい。明日に向かう飛行機雲を、ただひたすらに、眺めていたい──