■主題:誤解されやすいぞコルセット
■メインキャスト:本庄歓波(わいは)



歓波(わいは)のスマホにメッセージが届いていた。
「早く帰ってこい

この一言だけだった。

このパターンは以前にもあった。
その時は友達と遊ぶのが楽しくてすぐに帰らずこっぴどく叱られた。

「主任、今日は急用ができたから定時で上がっていいすっか」

「うん。いいよ」

定時になると大急ぎで身支度をして帰宅した。

「ただいま・・・

玄関を恐る恐る開けると玄関口に大きな箱が置いてあった。

歓波(わいは)の帰宅を察した母親が目の前に現れた。

「ままりん・・・」
「歓波(わいは)~

いきなり怒鳴られた。

「何この箱は

「血相もない。歓波(わいは)何も悪いことしないよ
「じゃあ、これは何か説明しなさい」

「これは・・・

歓波(わいは)が箱の方に目を落とすと送り状が貼られているのに気づいた。
送り主はエンジェルスシンジケート戸田由喜枝となっていた。

「これは歓波(わいは)がもらったものだよ
「はぁもう会社クビになって荷物送られてきたんじゃないのかっ」

歓波(わいは)は以前バックレてクビになったバイト先から宅配で私物を送り付けられたことがあったのだ。

「ままりん、そんなこと絶対ないよ今度は上手くやてるもん。」
「あんた、いままでいくつクビになったかわかってんのか
「うん、でも、でも、今度は歓波(わいは)頑張ってるもん。正社員だし・・・」
「じゃあ、なんなのこれは

「多分・・・」
「多分何っ

「多分、ミシンだよ・・・」
「はあ

「ほんとだよ。歓波(わいは)が会社の先輩の由喜枝さんからもらったんだよ。信じてよ

「じゃあ、開けてみっ」

「うん」
「うんじゃない!!はいだろっ

「はい。」

歓波(わいは)が手でテープを剥がそうとすると、母親が歓波(わいは)を押しのけた。

「お前、いつも言ってるだろ。荷扱いは丁寧にしろって

母親は玄関に置いてある工具用のウエストバッグからオルファゼロハイパーAL型モデル193Bを取り出すと、カッターのグリップ部分についている突起でテープを切った。
そして歓波(わいは)に開梱するように顎で指示した。

 

 

中にはコンピュータミシン一式と予備のスレッドや他にもたくさんきれいに梱包されて入っていた。

「ままりん。歓波(わいは)の言ったとおりでしょ。もらったんだよ
「あんた、こんなたいそうなものどうしてちゃんと説明しなさい」

「うん。」
「うんじゃない、はい
「血相もない。はい。」

そういえば由喜枝さんの電話番号を知らないことを思い出した。
由喜枝さんはSNSも苦手でやっていない。
送り状に書かれた電話番号は会社の電話番号だった。

歓波(わいは)は仕方なく阿倍部長に聞くことにした。

プ、プ、プ、プ、トゥルルルル~

「あっ、阿倍部長っすか本庄っす」
「おお、どうした
「由喜枝さんの電話番号教えてほしいっす・・・」

歓波(わいは)の母は身振りでスピーカーフォンに切り替えるように指示をした。
歓波(わいは)はスピーカーに切り替えた。

「由喜枝さん今一緒にいるから代わるね

電話口の音が少し遠くなった。
向こうもスピーカーフォンに切り替えたようだった。

「もしもし。」
「あっ、由喜枝さん。ワイっす・・・」
「あら、歓波(わいは)さん、どうしたの
「今日、ミシン届いたっす・・・」
「わざわざそれで電話を、でも届いてよかったわ

いてもたってもいられなくなった歓波(わいは)の母が話し出した。

「お世話になっております。本庄歓波(わいは)の母でございます。」

「こちらこそ歓波(わいは)さんにはいろいろお世話になってます。」

「うちの娘は迷惑かけてないでしょうか

「とんでもないです。歓波(わいは)さんは私のいい話し相手もにもなってくれて楽しく過ごさせていただいてますよ

「ちゃんと仕事はできてますでしょうかうちの娘はいままでどこの会社もクビになっておりまして・・・。」

「とても才能のある子ですよこれからはお洋服のデザインのお勉強もしてもらおうと思いまして、勝手ながらミシンを送らせていただきました。私のお古で恐縮なのですが・・・

「ほら、ままりん、歓波(わいは)ちゃんと仕事してるでしょ。迷惑かけてないよ。」

電話口からクスクス笑い声が聞こえた。

「申し遅れまして、私、歓波(わいは)さんの上司にあたりますエンジェルスシンジケート商品企画部長の阿倍と申します。いつも歓波(わいは)さんの斬新な発想に助けられております

「け、け、け、血相もない。うちの娘なんか大してお役に立ててないのではないかと・・・。」

「部長からも言ってほしっす・・・。ワイちゃんと仕事してるって。」

「本庄、お前なぁ、それ自分で言うかまあよくやってはいるわな

「部長、ひょっとして、ちょっと酔っぱらってるっすか

「由喜枝さんと大人の話してんだよ」

どうやら向こうはこちらもスピーカーフォンになっていることに気付いていないようだった。

「歓波(わいは)さん、ごめんね。倍沃(べよう)ちゃんちょっと飲みすぎかもしれない

「血相もない。ワイもこんな時間に電話してマジに血相もないっす。ままりんもワイがちゃんと仕事してるって肝に銘じたっす。」

こうして電話が終わった。

「歓波(わいは)お前は相変わらず日本語が変だな。」
「血相もない
「まあ、親譲りだから仕方ないか。一応仕事できてるようで安心した。これで今日から安心して足向けて寝られる
「でも、ままりん、これ歓波(わいは)がちゃんともらったものだってわかったでしょ
「そやな。でも、なんでやなんでお前がもらったんや

歓波(わいは)の母は急にありがちな似非関西人口調になった。
歓波(わいは)の母の出身は茨城県稲敷郡美浦村(いなしきぐんみほむら)で関西とは縁もゆかりもない。

「歓波(わいは)のお気に入りの服あるでしょ
「あの何年も着てるやつか
「うん。」
「うんじゃないはい
「血相もない
「それ、歓波(わいは)が自分で直して着ていたよね。」
「そやな。昔は貧乏させてたからな
「それ面接のときにも着て行ってた。」
「お前、面接あれで行ったのか
「だって、あれ今の会社の服だから
「それで
「入社したあとまたそれを着て行ったら、そしたら、部長が昔デザインした服だったって入社してから教えてもらって、そしたら、それで歓波(わいは)が・・・。」
「お前、ガキみたいな話し方せんで、男らしくできんのか
「だって、だって、歓波(わいは)が、そんでね・・・

歓波(わいは)は、その服を手縫いで直したのを褒められたことをたどたどしい口調で説明した。

「でも、なんや解せんのじゃが、何でお前がそんな立憲出世できたんや

誤字を指摘されそうだが、本庄家の会話はおかしな日本語の羅列である。
あまり細かいことをこだわってはならない。

歓波(わいは)は萌華(もか)に優しくしてもらった入社したばかりのことから順に話していった。
必然的にコルセットの話も出てきた。


「それで歓波(わいは)もコルセットを買ったの
「コルセットってお前腰でも悪いんか
「違うよ。歓波(わいは)のコルセットはくびれを作るためのものだよ
「そんなもんして、親に与えられた体に文句あんのかっ
「そうじゃないよ。コルセットするともっとかわいくなれるんだよ
「かわいいって、お前は馬鹿なんだから無理やろ
「馬鹿でも可愛くなれるもん
「馬鹿は馬鹿なりにタイマン張らんいかんって言ってるやろ。」
「そんなことないもん。馬鹿でも可愛くなれるもん
「歓波(わいは)今もそのコルセットしてんのか
「うん。」
「ちょっと見せてみっ。」

歓波(わいは)はトップスをたくし上げた。

「なんや、これ、ごっつぅ高いんとちゃうか
「ううん。3000円くらいだよ。コルセットすると姿勢もよくなってきれいに見えるんだよ。」

「これ、そんな安く買えるのかびっくり

「うん

「腰痛くならないか

「ならないよ。逆にもっと楽だよ。」

「そうか。」

「ままりんも1個欲しい

「あ、いや、そういうのは・・・

「座るのにいいものもあるよ。もうちょっと高いけど3500円ちょっとで買えるから、歓波(わいは)の初任給でままりんにプレゼントする

「それくらい、ママだって・・・

「ままりんはマンションのローンで大変だから、歓波(わいは)が買ったげるよ

「歓波(わいは)・・・

「でも歓波(わいは)がちゃんと仕事できてるってわかって安心でしょ

「そやな・・・今度、歓波(わいは)の会社にお礼に行かんとあかんな。」

「ままりん・・・。それは・・・

「仁義立てなあかんやろ

「・・・


To Be Continued...

 

 

 


■登場人物紹介■


浦埼 美咲 (うらさき みさき)
主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。


大関 萌華(おおぜき もか)
美咲と同じエンジェルスシンジケートで経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。


本庄 歓波(ほんじょう わいは)
エンジェルスシンジケートの珍入社員でどこまでも問題児。
自分の気に入ったものにはとことん固執するのにそれ以外はとことんずぼら。
早合点で超短絡思考でおバカを絵にかいたよう。
自分勝手な性格と誤解されやすく取りつきづらいイメージを持たれ孤立しがち。
しかし本当は・・・。


岩槻 陽菜
23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。


阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長
会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。


戸田 由喜枝
正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。


秋ヶ瀬 翔太
美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。


水判土 迦皇(みずはた かのん)
元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。


WEB営業部WEB企画課の三人組
リーダー格で意地悪な須賀谷メロ
嘘付きの森掛(もりかけ)
強欲の倍賞泉花(せんか)
社内ではいわゆる腫物だが、本人たちは・・・


神園社長
美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。


妻沼WEB営業課課長
美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている


川里経理課長
萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。


大関一家(年齢順)
 祖父:寅(とら)
 祖母:桂(かつら)
 父 :健人(けんと)
 母 :貴理子(きりこ)
 長男:塁(るい)
 次男:コナン
 三男:三斗(さんと)
 長女:萌華(もか)


トリサミットソン社(やしろ)先生
旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。


■作者紹介


)プロクビレイター(Abooです。
世界中のウエストを『くびれ』させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。


 

 

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