馬鹿で悪いか！ #コルセットダイエットで #くびれまくるっす【第14話】締め上げ方～2～

上手くコルセットがバランスよく締め上がらず、美咲と萌華(もか)が再び見本を見せてくれた。
二人はコルセットの中で踊っているのかもがいているか微妙な動きをすると次の瞬間手品のようにコルセットの編み上げが均等になり、きれいに締め上がっていった。

歓波(わいは)も真似してやってみたが、一向に締め上がっていかなかった。

というよりもむしろ事態は逆行しているようでさえあった。

「ワイ、上手くできないっす」

「だって・・・歓波(わいは)ちゃん・・・運動音痴の芸人さんみたくなってるもん。」

「なんか悔しいっす。教えてほしいっす」

「えとね、最後は慣れないとどしよもないけど、一緒に真似してやってみてね」

「わかったっす。」

「歓波(わいは)ちゃんの場合、上の方が開いちゃっているから、上の紐をぎゅっと持って・・・まだ、引っ張っちゃだめだよ」

「こうっすか」

「そしたら背中を反らせて、肩甲骨を寄せて」

「こうっすか」

「うわ～、全然寄ってないよ」

もともと猫背がひどすぎる歓波(わいは)は肩甲骨を寄せる動作そのものがまだ上手にできないのである。

いかり肩になっていて肩が前の方で固まってしまっている人にはかなりきつい姿勢である。

天からのAbooの囁き

いわゆるスマホ首になってしまっていると肩甲骨が寄りません。
これが原因で肋骨も開いてしまっています。
スマホ首で肋骨が開いてしまう理由は別の機会に説明したいと思います。
そういう人は無理して肩甲骨を寄せて、その状態でコルセットが姿勢を固定し続けると体中痛くなるかもしれないです。

普段使わない筋肉を使いまくるからです。

できる範囲で無理しないようにしてください。

何度も鏡を見ながら、美咲や萌華(もか)がやるように肩甲骨を寄せようと努力していると、体がほぐれてきたのか、微妙に背骨が内側に凹んだ気がした。

「そしたら、ゆっくり紐を引くんだよ。背中が丸くならないように上の後ろの方に腕を伸ばす感じで」

「こうっすか」

全然紐を引けている感じがしなかった。

「う～ん。なんていうのかなぁ。なんかねぇ。バタフライするみたく肩を引くの。」

するとコルセットの上の方まで紐が締まっていくのを感じた。
どうやら美咲の「バタフライみたく」という言葉が歓波(わいは)にはわかりやすかったようだ。

何度かに分けてコルセットの上の方を締め上げていくと、下の方が緩み始めた。

「主任、ちょっと待って欲しいっす。コルセットが緩んだっす」

歓波(わいは)はコルセットの下半分を思いきり締め上げた。
そして再び美咲に言われた通り、できる限り肩甲骨を寄せコルセットの上半分を締め上げた。

これ以上引くことができないというところで完全に固まった。

歓波(わいは)は思った。

完璧にきつく締め上げることができた
しかしそう思ったのもつかの間である。

息苦しくなってきた。

どこまでも肋骨を圧迫されて勢いをつけて息を吸い込まないと呼吸がつらく感じた。

『この苦しさ、ワイの根性見せる時が来たっす』

スーパーマンのように胸を張っていた。
もはや下を見ることもかなわない状態だった。

「歓波(わいは)ちゃん締めすぎだよケロッグの虎みたくなってるよ」

「だ・だ・だ・だめっすかぁ・・・」

「ダメっすかって、ダメっす。めっちゃ苦しそうじゃん」

「ど・ど・ど・ど・どうしたら・・・い・い・い・い・いいしゅが～っ」

「紐から手を放して、めっちゃ猫背になって」

歓波(わいは)は紐を手放し、脱力した。
すると、2、3度カクン、カクンとコルセットが小刻みに緩み、その後するするとコルセットが緩んでいった。

「楽になったっす。でも、コルセットが超ゆるんじゃったっす」

「そんなことないよ。うまく行っているよ。」

歓波(わいは)は鏡で確認した。

「うぉっマジっす。これもモカッチャのおかげっす。」

「歓波(わいは)ちゃん、私、なにもしてないよ。全部、美咲さんが見本見せてくれたんだよ。」

「そうっすね。主任、血相もない」

「歓波(わいは)ちゃん・・・」

歓波(わいは)は何を勘違いしているのか「ありがとう」のことを「血相もない」というのである。
仮に「滅相もない」であったとしてもおかしな日本語である。

「まあ、いいか・・・。歓波(わいは)ちゃんだから許す。で、鏡を見て上と下の開きが同じくらいになったと思ったら、全部の紐を手に巻いて一気に引っ張るよ。」

コルセット全体がぎゅっと締め上がり、背筋(せすじ)がぴんと伸びていくのがわかった。

天からのAbooの囁き

コルセットはどういう姿勢でいずれかの紐を引っ張るあるいは緩めると特定の部分だけ締め上げたり緩めたりできます。
少しコツがいるので誰もがすぐにできるというものではないかもしれませんが、何度かやっていくうちに自然とわかってきます。
基本的なものを図でまとめてみました。

「主任、ぎゅっとなったのはいいんすけど・・・」

「うわ～、めっちゃ偏っちゃったね。」

「なでっすか」

「よくわかんないけど、歓波(わいは)ちゃん、背中曲がりまくってるから」

「そうなんすよ。でも、脊椎狭窄症ではないんすよ。」

「脊椎狭窄症それって骨が潰れちゃうやつだよ。もしかして脊椎側弯症のこと」

「そ、それっす。その脊椎なんとか症ではないっす。ままりんも心配してて病院に連れて行ってくれたから間違いないっす。」

「歓波(わいは)ちゃんってなんでも変な名前になっちゃうんだね」

「そうなんすよ。ワイ、漢字の言葉苦手なんすよ」

「そういえばさっきは横文字苦手って言ってたよね。」

「そうなんすよ。ワイ、横文字も縦文字も苦手なんすよ」

「た・て・も・じまぁ、もう、いいか。」

「で、コルセットの位置合わせはね、上の紐だけをピンとさせて適当に腰を振ってればそのうちいい感じにのところに来るよ。」

天からのAbooの囁き

どの動作でコルセットの位置がどう直るっていうのはとても表現しづらいです。
慣れてくると別にコルセットを緩めなくてもある程度直せるようにさえなります。
コルセットの上の紐を握って、チェ、チェ、コリ、チェッコリッサって感じでチェチェコリを踊るような感じの動作をするといい感じになります。
とにかく腰がゆすられているとそのうちコルセットのくびれ位置と体のくびれ位置ががしっとはまって、そこでいい感じに落ち着きます。

「これでどうっすか」

「あっ、いい感じ、あとは余った紐を処理すれば完成だね」

「結構大変っす。」

「そんなことないよ。慣れれば1分でできるから」

To Be Continued...

■登場人物紹介■

浦埼美咲 (うらさきみさき)

主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。

大関萌華(おおぜきもか)

美咲と同じエンジェルスシンジケートで経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。

大関一家(年齢順)

　祖父：寅(とら)
　祖母：桂(かつら)
　父　：健人(けんと)
　母　：貴理子(きりこ)
　長男：塁(るい)
　次男：コナン
　三男：三斗(さんと)
　長女：萌華(もか)

本庄歓波(ほんじょうわいは)

エンジェルスシンジケートの珍入社員でどこまでも問題児。
自分の気に入ったものにはとことん固執するのにそれ以外はとことんずぼら。
早合点で超短絡思考でおバカを絵にかいたよう。
自分勝手な性格と誤解されやすく取りつきづらいイメージを持たれ孤立しがち。
しかし本当は・・・。

阿倍沃(あべよう) 商品開発部長

会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。

秋ヶ瀬翔太

美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。

水判土迦皇(みずはたかのん)

元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。

岩槻陽菜

23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。

戸田由喜枝

正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。

神園社長

美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。

妻沼WEB営業課課長

美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている

川里経理課長

萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。

トリサミットソン社(やしろ)先生

旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。

■作者紹介■

)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストをくびれさせることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。