萌華(もか)の部屋で歓波(わいは)の初コルセットを手伝う美咲。
萌華(もか)の部屋の襖戸がぼんぼんという和太鼓のような音を立てた。

萌華(もか)の家は古くからある農家の建物だ。

家の中央には大黒柱がそびえ立ち板の間の廊下に純伊草の畳の部屋だ。
障子や砂壁、欄間などインバウンドの外国人旅行者地球が見たら間違いなくインスタに上げたくなるような感じだ。

しかし萌華(もか)本人は古臭くて気に入っていないようだった。

そんな家だから、萌華(もか)の部屋の入口はドアではなく襖戸で仕切られていた。

紙がぴんと張られた襖は、ノックしても合板やメラミンで仕上げられたドアのようにコンコンとは鳴らないのだ。

「萌華(もか)。おやつ持ってきたわよニコニコ

「おかあさん、ちょっと待って!!今、開けちゃダメあせる

美咲は普段あまり使わなくなったSサイズのコルセットからいつものXSサイズに着替えている最中だったのだ。

「どうしたのはてなマーク
「今、美咲さんが忙しいのむかっ

「あらそう。じゃあちょっと待ってるわね。」

美咲は大急ぎでXSサイズのコルセットに着替えた。

「おかあさん、もういいよ。」

すると嬉しそうに萌華(もか)のお母さんが入ってきた。

3人は乱れた着衣を直したばかりだった。
コルセットの着用の練習をしていただけなのに、何かちょっといけないことをしたような、達成感と罪悪感が空気を支配していた。

三人は思わず顔を見合わせてくすくすと笑い始めた。

「あら~。萌華(もか)。今日はずいぶん楽しそうねびっくり美咲さんもいつも萌華(もか)のこと面倒見てくれてありがとね音譜あと、そちらの・・・。」

「歓波(わいは)っす。モカッチャにはいつも『ごくそろう』になってます。」

「ご・く・そ・ろーはてなマークああ、ご足労ね。ご足労おかけしたのはこちらの方ですよ。」

おそらく「苦労かけています」と「お世話になっています」と「ご足労いただいてます」がごちゃ混ぜになっているのであろう。
歓波(わいは)の不思議な日本語に付き合っているとそのまま変な方向に盛り上がってしまうと美咲は思った。

「ところで、萌華(もか)。ずいぶん楽しそうにしてたけど、何してたのはてなマーク

「かあさんには関係ないよ。おやつ置いたらあっち行って!!

美咲は脱いだばかりのSサイズのコルセットをまだ手に持っていたので、萌華(もか)のお母さんにしてみれば何をしていたのかは一目瞭然だった。

歓波(わいは)は何かに気が付いた。

「もしかして、モカッチャのままりんもっすかはてなマーク

その言葉に美咲も気づいた。

「お母さんも一緒に加わりますかはてなマーク

萌華(もか)はどこまでも不機嫌になった。

「もうお母さん、ほんとに邪魔しないで!!

「だって、あんたがお友達二人も連れてくるなんて小学校のお誕生会以来だから、母さんも気になって仕方ないのよラブラブ

「もう、勝手に私の黒歴史拡散しないでよ!!

「ごめんなさい、美咲さん、歓波(わいは)さん。うちの萌華(もか)はこんな性格だからお友達がなかなかできなくて爆  笑

「ほんと、マジむかつくムキーおかあさんがそんなだから、お友達呼べないんだよ。」

「そうなのはてなマーク

「あとさあえーなんでお母さん今日変な服着てるのはてなマークどっか出かけるのはてなマーク

確かに萌華(もか)のお母さんは家の中で、スリムなワンピースとボレロといういう不思議な格好で、腰にはチェーンネックレスをベルトのように巻いていた。

「出かけないわよ。お母さんも仲間に入れてもらおうと思っておねがいどうはてなマーク大人の女って感じでいけてるでしょうはてなマーク米倉涼子みたいでしょうはてなマーク

萌華(もか)のお母さんはまだ2XLサイズをチャレンジ中だ。
ウエストは80㎝後半である。

「お母さんは米倉涼子じゃなくて、養豚場子だよ。もう屠殺場に出荷するよムキー

「何失礼な!!うちは養鶏場だよドンッパンチ!

どうやらこれは養鶏場を営む大関家限定のファミリーギャグのようだった。

「萌華(もか)ちゃんのお母さんっていつも面白いね爆  笑

美咲はフォローを入れた。

「で、萌華(もか)、あなたたち何をしていたのはてなマーク

「もうむかっ知ってるくせに!!

「どうぞ、お母さんもいっしょにやりましょうニコニコ

美咲の母ならこんな風に割って入ってくることはない。
萌華(もか)のお母さんはたくさん話すし、面白いから萌華(もか)がちょっとだけ羨ましかった。

「ほら、萌華(もか)、美咲さんはよく分かってるわよ爆  笑

「モカッチャはいいなぁラブいつもそうやって家族とギャグバトルとかできて。」


こうして4人のファッションショーが始まった。

 

 

XSサイズの美咲、Sサイズの歓波(わいは)、Lサイズの萌華(もか)、2XLサイズの萌華(もか)の母の貴理子。

体型はそれぞれ大きく異なる。

年齢もリアルに親子ほどの差がある。

しかし、4人それぞれがそれぞれきれいで、甲乙つけがたかった。

「おかあさん、みんなこんなに痩せててきれいなのにおかあさんだけただのデブだよ笑い泣き

「何言ってんの!!あんただって同じようなものよ笑い泣き

萌華(もか)と萌華(もか)のお母さんはそんな掛け合いをしていたが美咲はそうは思わなかった。

すでにコルセットを着けなれている萌華(もか)のお母さんは、ボレロとスリムなワンピースドレスでボディラインを整えているのも手伝ってか、とても素敵に見えた。

むしろバットウィングのオーバーサイズTシャツの歓波(わいは)の方が、せっかくのラインを台無しにしてしまっていてもったいなく感じた。

萌華(もか)も、コルセットでボディラインが整っているところに、コルセットのツルツルのサテン織の生地の上でトップスがいい感じに滑って、大きく緩やかな縦方向のドレープがきれいだった。

「モカッチャもモカッチャのままりんもすごい素敵っすラブなんかお金持ちの人みたく見えるっすラブラブ

「そだね。でも、萌華(もか)ちゃんちはリアルガチでお金持ちだよ爆  笑

「そうっすよね。家でかいっすもんねグッド!

二人の姿を見た歓波(わいは)は急にしきりとウエスト周りを気にし始めた。

「歓波(わいは)ちゃん、もしかしてコルセットが苦しいはてなマーク

「そうじゃないっす。ワイも、この辺りをちょっと絞ったらもっといいかなって思っただけっす。」

「あら、じゃあ、萌華(もか)のベルトを使ってみたらどうはてなマーク

萌華(もか)はタンスからベルトをとってきたが萌華(もか)のサイズに合わせたベルトだったから穴の位置が合わなかった。

「あっ、そうだ。ちょっとまっててニコニコ

そういうと萌華(もか)のお母さんは部屋から出ていった。

しばらくすると、新品のガチャベルトを持ってきた。

 

 

「これお父さんに買ったものだけど、ナイロンじゃないっていって使っていないのよ。」

そのベルトは農作業の作業ズボンにつけるアプリコットっぽい感じのカーキ色のベルトだった。

「これなんかいいっすねラブ

そう言って歓波(わいは)はトップスの上からベルトを少し緩めに巻きくびれの位置で留めた。

10㎝くらいトップスをたくし上げゆるふわ感を出すと、フォーマルなイメージのあるコルセットを下に着ているとは思えないほどカジュアルに仕上がった。
腰からだらりと垂れ下がったベルトもいい感じのアクセントになって、ヒップホップ系のダンサーのようになった。

「うわ~歓波(わいは)ちゃんもいい感じラブ

「そうねぇ。やっぱり若い子はいいわねぇ。私じゃこんな格好もう無理だわ。」

美咲は思った。

コルセットっていろんなコーデを楽しめるし、年齢とか体型とか関係なくそれぞれ素敵に輝かせてくれるものだな。

コルセットダイエットって、ダイエットとファッションを同時に楽しめて、本当にお得だとも思った。

しかし、美咲はまだ気づいていなかった。
コルセットダイエットの極意は、実はダイエットに励むのではなく、ダイエット(ボディメイク)を楽しむという発想の転換にあることであった。


To Be Continued...


■登場人物紹介■

浦埼 美咲 (うらさき みさき)

主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。


大関 萌華(おおぜき もか)

美咲と同じエンジェルスシンジケートで経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。

大関一家(年齢順)

 祖父:寅(とら)
 祖母:桂(かつら)
 父 :健人(けんと)
 母 :貴理子(きりこ)
 長男:塁(るい)
 次男:コナン
 三男:三斗(さんと)
 長女:萌華(もか)

本庄 歓波(ほんじょう わいは)

エンジェルスシンジケートの珍入社員でどこまでも問題児。
自分の気に入ったものにはとことん固執するのにそれ以外はとことんずぼら。
早合点で超短絡思考でおバカを絵にかいたよう。
自分勝手な性格と誤解されやすく取りつきづらいイメージを持たれ孤立しがち。
しかし本当は・・・。

阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長

会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。


秋ヶ瀬 翔太

美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。

水判土 迦皇(みずはた かのん)

元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。

岩槻 陽菜

23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。


戸田 由喜枝

正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。

神園社長

美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。

妻沼WEB営業課課長

美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている

川里経理課長

萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。

トリサミットソン社(やしろ)先生

旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。


■作者紹介■

)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストを くびれ させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット!
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。