ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
これは間違いなく美咲と歓波(わいは)だ。
萌華(もか)は直感した。
玄関を開けると2人が立っていた。
「おはよう萌華(もか)ちゃんお世話になります」
「おはようっすいいにおいっす」
「おはようございます。もう準備てきてるから上がってください」
「うわ~、なんか温泉に来た気分だね」
「ほんとっす」
「大したものないですけど」
食卓に襖戸を開放しきって応接間と客間をつなげた広間はまさに旅館の宴会場のようだった。
「今日は大人数なのでお座敷ですみません美咲さん、私の部屋で外してきてください」
「ありがと。そうさせてもらいます」
美咲は萌華(もか)の部屋へコルセットを外しに行った。
天からのAbooの囁き
コルセットしたままお座敷は辛すぎます。
予め緩めておいても容赦なく太ももにコルセットが突き刺さってくるので、素直に外しましょう。
美咲が戻ってくると萌華(もか)の家族7人もぞくぞくと現れ席に着いた。
長男の塁はまだギプスが取れていないので、次男のコナンと三男の三斗が手伝った。
歓波(わいは)は目を大きく見開いて興奮していた
すかさずスマホを構えていた。
勢ぞろいした家族が全員映るように撮影し始めた
ボウルの中にピラミッド状に積み上げられた玉子は特に美咲と歓波(わいは)にとって感動的なものだったようだ。
二人はフレームの中央に玉子をとらえるようにスマホをパシャパシャの鳴らしまくった。
最後に歓波(わいは)は自撮りモードで家族全員が映るように撮影した。
盛りに盛りまくった画像の何枚かがすかさず画像投稿サイトに投稿された。
「そろそろ食べましょう」
「は~いモカッチャの家って毎日こんな豪華な朝ごはんっすか」
「ちょっと、今日は豪華だけど、だいたいこんな感じ」
「玉子も食べ放題っすか」
「まあ、うちは養鶏場やってるから玉子はただみたいなものだから」
無邪気にはしゃぐ歓波(わいは)を萌華(もか)の家族は目を細めて見守っていた。
「とにかく食べましょう」
「いただきま~す」
「萌華(もか)ちゃん。」
「なんですか。美咲さん。」
「はしたないけど、TKGやってもいい」
「もちろんですよ大関農場のいちばんのおすすめです」
「ワイもやるっすしかし、モカッチャのところの朝ごはんはおいしいっす。」
歓波(わいは)は凄い食べっぷりだった。
今日はコルセットダイエットのために集まったのに、ダイエットはどこ吹く風という感じだった。
品よく食べ進む美咲とは全然違い、歓波(わいは)は、いちいち「モカッチャこれ旨いっす」といいながら食べ進めた。
2膳食べ終わったところで、母が言った。
「そちらの萌華(もか)の新しいお友達の方」
「ワイっすか歓波(わいは)でいいっす」
「歓波(わいは)さん、おかわりはいかが」
「もちろんっす。ワイ、母子家庭育ちだから、こういう食事あこがれてて・・・なんか、今日は、本当に、ほんとに、どうもありがとう、センキュー、フーって感じっす。」
「何それ歓波(わいは)ちゃん」
「えーちゃんの伝説の東京ドームライブの真似っす」
「はぁ」
「えーちゃん、知らないっすか矢沢永吉っす」
「ああ、名前だけは知ってるけど・・・」
すると普段は食事中あまり口を利かない父が反応した。
「歓波(わいは)ちゃんだっけか永ちゃん好きか」
「好きっすでも、ワイよりままりんの方が好きっす。ままりんはマジヤバいっす」
「おおぅ。いいねえ」
こうして調子に乗った歓波(わいは)結局ご飯を4膳も食べてしまった。
「歓波(わいは)ちゃん」
また父が口を開いた。
「玉子旨いか」
「ヤバいっすこれ旨すぎっす」
「じゃあ、今日持って帰るか」
「いいんすかマジヤバいんすけど」
「いいよ、何個くらいほしい」
「ままりんと2人だけだから・・・」
「じゃあ、ふた山でいいかな」
萌華(もか)には危険な予感がしてきた。
大関養鶏場のいうふた山は少なくとも60個はある。
電車でどうやって持って帰るのか少しは考えてほしいと思ったのだ。
「すんませんあざっす」
「美咲さんも、いつも世話になってるから持って帰っておくれ。」
「あっ、すみません」
すると、歓波(わいは)の方から何かはじける音がした。
そして何かが宙を舞い、壁を直撃した
それは歓波(わいは)のパンツのボタンだった。
「ヤバいっす、食べ過ぎたっす」
歓波(わいは)のお腹はパンパンに膨れ上がっていた。
萌華(もか)はそれを見て確信した。
やっぱり大関家の食事の量は尋常ではない。
大関農場は養鶏場と養人場の2品種飼育であると・・・。
To Be Continued...
■登場人物紹介■
浦埼 美咲 (うらさき みさき)
主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。
大関 萌華(おおぜき もか)
美咲と同じエンジェルスシンジケートで経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。
大関一家(年齢順)
祖父:寅(とら)
祖母:桂(かつら)
父 :健人(けんと)
母 :貴理子(きりこ)
長男:塁(るい)
次男:コナン
三男:三斗(さんと)
長女:萌華(もか)
本庄 歓波(ほんじょう わいは)
エンジェルスシンジケートの珍入社員でどこまでも問題児。
自分の気に入ったものにはとことん固執するのにそれ以外はとことんずぼら。
早合点で超短絡思考でおバカを絵にかいたよう。
自分勝手な性格と誤解されやすく取りつきづらいイメージを持たれ孤立しがち。
しかし本当は・・・。
阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長
会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。
秋ヶ瀬 翔太
美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。
水判土 迦皇(みずはた かのん)
元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。
岩槻 陽菜
23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。
戸田 由喜枝
正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。
神園社長
美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。
妻沼WEB営業課課長
美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている
川里経理課長
萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。
トリサミットソン社(やしろ)先生
旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。
■作者紹介■
)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストを くびれ させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。