美咲は視線を感じていた。
遠くから萌華(もか)がしきりとこちらを気にしていたのだ。
新入社員のIT担当である迦皇(かのん)がパソコンを移動させてくれていた。
夕方の席替えといえば大抵定時を過ぎてしまうものである。
いままで島の中の席だったのが主任への昇進に合わせてお誕生日席になった。
左横には今までの上司ではない実質上の上司であった妻沼課長がいた、
右斜め前が迦皇(かのん)の席となるそうだ。
左斜め前はまさかであった。
陽菜が営業課のアシスタントから美咲のチームへと異動(移動
)となったのだ。
陽菜は派遣社員なので辞令に書かれていなかったのだ。
これからはこの3人の島で仕事することになるらしい。
以前の美咲の席には新しく別の人が来るらしい。
陽菜が抜けて空席になったところには新しい派遣社員が入るということだ。
「美咲先輩。遂にいっしょになりましたね
よろしくお願いします
」
「こちらこそ
」
「浦埼さん。新入社員の水判土(みずはた)です。これからよろしくお願いします
」
「あっ、もしかしてもしかして、萌華(もか)ちゃんのお兄さんのお友達の方ですか」
「そうです。こういう環境で仕事するの慣れてないので、いろいろご迷惑おかけするかと思いますが、よろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ」
すると荷物を片付けた萌華(もか)がこちらへ迫ってきた
「あっ、萌華(もか)ちゃん、今日はもう上がり
」
「は、はい
」
「何かよくわかんないけど、みんな集まったしどこかお食事でも行きましょうか
」
4人がわいわい話し始めるとやっぱりあいつが聞きつけてきた。
「俺も行っていい」
「いいけど、割り勘だよ。それか翔太の奢りぃ
」
「吉野家でも無理
」
「じゃあ、どこ行こうか」
「今日は美咲さんの昇進祝いだし・・・。」
萌華(もか)が言った。
「うわ～、それヤバいって、絶対ないよ
今日は秋ヶ瀬さんの入社祝いだよ
」
「僕は、そんな、いいですよ。」
「遠慮しないでで、何か食べたいものとかある」
「う～ん、とりあえず会社出てから考えましょうか」
「萌華(もか)ちゃん、頭いい
」
5人は会社を出るととりあえず駅の方へ向かって歩いて行った。
「美咲、ガッツリ系で肉バルとかどうだ
」
「やだぁ、ダイエット中だから
」
「何だよ、お前、どうせ失敗するんだからいいだろじゃあしゃぶしゃぶは」
「だめ～この間、萌華(もか)ちゃんと行っちゃったもん」
1300kcal制限下でコルセットをしっかりと締めてしまっている美咲にとって、店選びはかなり難しい。
先日、萌華(もか)と一緒にしゃぶしゃぶに行ったばかりでチートデーを発動することもできない。
「女子は、ちょっと今日はあまりお腹空いてないかもしれないです。ね、美咲先輩」
「そだね。じゃ、どうするか」
「そうだ
カクテルバーとかよくない」
「美咲先輩
私、賛成です」
「俺は何か食えるとこがいいだけど」
「おまけで付いて来てるだけなんだから、選ぶ権利な～し」
「分かったよ。秋ヶ瀬さんはそれでいいですか」
「僕はあまりそういうところには行ったことがないので、ちょっと興味あります。」
「私もあんまり行ったことないよ。陽菜ちゃんがおすすめしてるから。萌華(もか)ちゃんはどう」
「私もあんまりです。メイドさんのいるお店なら何度かヲタ友とオフ会したことありますけど・・・。」
美咲は萌華(もか)の言うお店にもちょっと興味があった。
「メイド喫茶はもっと食うもんないよなぁ、オムライスとかホットケーキとかそんなんしかないじゃん」
「それ十分カロリー高いですけど・・・」
美咲は思わず言ってしまった。
「お前、カロリー気にする柄か」
「悪い
」
天からのAbooの囁き
チートデー直後に思わぬ誘いがあるというのはダイエッターとしては最大のピンチと言えます。
無下に断るわけにもいかないし、かといってチートデーを連発するわけにもいきません。
こういう時は消化の良いものというか排出しやすいものを起用したいところです。
煮魚のようなものは最高によいですが、夜にこの手の和食だと出費もすごいことになりそうです。
万年金欠の翔太と、新入社員でまだ収入のない迦皇(かのん)、生活費が高すぎる美咲、派遣社員で収入の少ない陽菜にはちょっと難しそうです。
こうなると、お酒を中心にって安易な方法を取ってしまいがちですが、同じ名前の料理でも居酒屋メニューになるとカロリーが爆上げになることが多いです。
居酒屋系の場合、お酒が入っていてもしっかりと味を感じられるように濃いめの味付けで、マヨネーズやタルタルのような脂肪分の多い調味料を多用していることも多いです。
「美咲先輩
」
「何」
「この先におでん屋さんありますけどどうですか
」
「まさかの夏におでん
」
「夏のおでんって美味しいですよ」
こうして5人は暑い中おでん屋さんへと向かうことになったのだった。
お店の前に立った美咲は驚愕した。
『まさかその手があったか』
店頭に掲げられたのぼりにはこう書かれていた。
『冷やしおでん始めました』
To Be Continued...
■登場人物紹介■
浦埼(うらさき)美咲
主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。
大関萌華(もか)
美咲と同じ会社で経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。
大関一家(年齢順)
祖父：寅(とら)
祖母：桂(かつら)
父 ：健人(けんと)
母 ：貴理子(きりこ)
長男：塁(るい)
次男：コナン
三男：三斗(さんと)
長女：萌華(もか)
阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長
会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。
秋ヶ瀬 翔太
美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。
水判土(みずはた)迦皇(かのん)
元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。
岩槻 陽菜
23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。
戸田 由喜枝
正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。
神園社長
美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。
妻沼WEB営業課課長
美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている
川里経理課長
萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。
トリサミットソン社(やしろ)先生
旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。
■作者紹介■
)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストを くびれ させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。
