以前のK-1と今のK-1…

以前あって今は無いモノとしてまず思い浮かぶのは、世界最高峰の大男同士の大迫力のド突き合い。

どれだけ強い選手でも、どれだけ優勢に試合を進めていても一発入ればそれで終わり…

その分かりやすさが嘗てのK-1の醍醐味の一つだったのではないだろうか。

今のK-1のヘビー級の外国人選手には、現時点では正直以前のK-1のヘビー級の様な華は無い。

軽量級の選手の素晴らしい技術には魅せられるが、やはりヘビー級に比べてしまうとどうしても迫力には欠ける。

ただ今回krushのタイトルをかけて戦うこの二人に関しては、以前のヘビー級に近いド迫力の試合を魅せられる伸るか反るか、超攻撃型の選手と言えるだろう。

 

木村ミノルはK-1ジム五反田チームキングス所属のキックボクサーの中でも一際目立つハードパンチャー…

戦慄のブラジリアンフックの通り名の他にも、嘗てのジェロム・レ・バンナと同様無冠の帝王と呼ばれる由縁はトーマス・アダマンドポウロス、ゲーオ・ウィラサクレック、城戸康裕といった強豪に勝利しているが何故か王者にはなれていないからだろう。

それは魅力的な攻撃力を持つ一方でメンタルが不安定で打たれ弱く、ここぞという場面で勝てないのが要因。

だがK-1ジム五反田チームキングスに移籍してからの充実ぶりには目を見張るモノがある。

木村ミノルの存在がきっかけで格闘技に引き戻された私からすると今度こそは王座戴冠してくれれば…という気持ちは強い。

 

塚越仁志はシルバーウルフ所属の叩き上げのハードパンチャー…

Mr.krushの呼び名の通り名に相応しい激闘派でどの試合にも外れ無しの名勝負製造機。

ただその名勝負は圧倒的な勝利ではなく倒し倒されの試合になる事が多い。

シルバーウルフは過去には魔裟斗氏が所属。現在も左右田泰臣、KANA、金子晃大といったボクテクの高い選手を輩出しているが、塚越はボクテクで勝負するタイプではなく、序盤は長いリーチを活かして戦うもいつの間にか至近距離に詰めてめちゃくちゃにパンチを振り回して殴り倒すという豪快なファイトスタイル…暴走ハリケーンとはよく言ったものだと思う。

シルバーウルフの中では異端の存在と言えるだろう。

 

互いに共通する点をあげるとすれば、双方パンチャーであり爪先が内側を向いているからかインロー含めたローキックをカットせず対処ができていない事がある。

特に塚越に関してはローキックは弱点と言ってもよく、久保優太との試合ではハン・ウェンバオ との1回戦で被弾していたと言えローキックでKO敗け。

前回の試合でも牧原圭太にローキックでKO寸前まで追い詰められてからの逆転勝ちだった。

じゃあ木村ミノルがローキック狙いでいくかと言うと、逆に足を痛める可能性が高くそうなれば弱点を狙う筈が諸刃の剣となるので無い…とは思う。

ただK-1ジム五反田チームキングスの選手は型にとらわれない試合運びをするので、もしかしたら…と言うのはあるかもしれない。

 

逆に塚越が木村ミノルの弱点を狙うとすればボディーを狙う事。

嘗て同門の左右田泰臣が木村ミノルを沈めた様に、ジャブでプレッシャーをかけてテンカオを突き刺してボディーを効かせて殴り倒す事ができれば…左右田の場合はボクサー顔負けの左ジャブを木村ミノル相手に当てたが、塚越の場合ほロングリーチからの左ジャブ…と言うよりジャブの用途でなく倒す用途の左強ジャブを巧く当てれば…

 

ただまぁ結局の所、この二人の試合はガードをきちんと上げてガード前提の攻防では無く、どちらが先に当てるかの試合になると思う。

おそらく打ち合いになればハンドスピードの速い木村ミノルのパンチが先に当たるかなとは思うが、互いにパンチの軌道が読めないのでいつどんなパンチが相手を捉えるか…

 

木村ミノルのファイトスタイルは相手に如何に圧力をかけ手を出させないかが大事なのでその意味では臆する事の無いハートの強い塚越は天敵と言っても良いだろう…

劣勢になったとしても怯まずに向かってくる塚越に対して木村ミノルが平常心で勇気を持って打ち合いができるか。

あるいは優勢でも冷静に相手の攻撃を見て下がりながらのパンチを当てる事ができるか m(_ _)m

 

1R:木村ミノル(三回ダウン奪取にて木村ミノルTKO勝利)

GONGが鳴ると同時に猛然と突っ込む…感じで一度停止してから前に出て強い左ジャブを入れる塚越。

二度目の左ジャブは体事預ける形になり側面に回る。そこに左フックを打つ木村ミノル。速い。塚越も同時に左フックを打つが互いにクリーンヒットせず。

塚越の左ジャブ。やはり前に踏み出しながら打っており牽制の左ジャブの用途ではないか。

木村ミノルも右フックを強振する。これは塚越もガードを固めて対処。木村ミノルは続けて前に出ながら左ジャブ。

塚越は前進し左ジャブを突き出しコーナーポストに押さえ付けたまま右ボディ→左フック→右ストレート。何だかボブ・サップVSアーネスト・ホーストを少し思い出す動作だな。木村ミノルは落ち着いている。

木村ミノルは左フックを振るうも塚越はやや態勢を崩しながら対処。

塚越は先程と同じように押さえ付ける左ジャブから右ボディ→左ボディ→左ジャブと攻撃するが木村ミノルは冷静に後ろに下がる。 

塚越の左ジャブに木村ミノルは左フック。

塚越はプレッシャーをかけながら前に出て左ジャブ。そこに木村ミノルは右フックを合わせようとし、クリンチの形になる。

そこから塚越は猛然と攻めるも木村ミノルは統べてガード。続けて塚越が左ジャブを突きだす。木村ミノルも左フックを合わせようとする動作が見られる。双方当たらず離れ際に木村ミノルが塚越の手を叩く。

一度間が空き、塚越がやや右テンカオを打つ仕草をするも当たらない距離。

ここで初めて木村ミノルが自分から左フックを強振するも塚越には巧く当たらず。クリンチ状態になる。離れ際に互いに手を出す。木村ミノルの左フックを態勢崩して受ける塚越が印象に残る。

続けて塚越の左ジャブを木村ミノルは後退して対処。距離が空いた所から木村ミノルは右フックを強振。塚越はガード。更に木村ミノルは右フックのダブル。速い…更にワン・ツー。これは塚越がバックステップにて対処。

更に木村ミノルは先程とは違い小さい振りの左フックのダブル。

ここで試合が動く。塚越の右テンカオに強振の右フックを合わせようする木村ミノル。ここは当たらないが狙っていたか?

そのまま左フック→右フックと強引に振り回す塚越に木村ミノルが下がりながら合わせる左フック‼️塚越ダウン‼️

このダウンはそれ程ダメージが無いように感じたが、再開後にガードを固めて放つ塚越の右テンカオは弱々しい。そこに木村ミノルはワンツー→左フック→右ストレート→左フックダブル→右オーバーハンド→左ジャブ。そして塚越の突き出す左ジャブに狙い澄ました左フックでの二度目のダウン‼️塚越は右ガードを上げていたが左ジャブを掻い潜ってのクロスカウンター。これは効いたか…

その後塚越は組みつこうとするも猛然と攻めかかる木村ミノルに薙ぎ倒され三度目のダウン‼️

試合終了で木村ミノルが無冠の帝王を返上‼️

最後のダウンはトーマス・アダマンドポウロスと木村ミノルの試合を思い出した。ただ巻き返すのはまず無理だっただろう。

 

自分で双殴者激突とタイトルをつけはしたが、早期決着とは言えまさかここまで蹴りが無いとは…

塚越はプレッシャーをかける作戦は良かったが、それ以上に木村ミノルが落ち着いていた。

途中右テンカオを狙うシーンがあったが、もし序盤のコーナーポストに抑え付けた時に出せていれば…

以前の敗けが込んでいた時の木村ミノルならそのまま飲み込めたかもしれないが、今の木村ミノルは冷静だった。

格闘技はレベルが高い選手同士なら後出しジャンケンが強いと思う。増して木村ミノルのバンドスピードなら…

あとは二回目のダウンを奪った時きちんと右ガードを上げて左ジャブを打つ塚越の左腕を掻い潜り放たれた左クロスカウンターは、今の日本のキックボクサーでは木村ミノルにしか打てない一撃だろう。


ついに元祖無冠の帝王ジェロム・レ・バンナと違い無冠の帝王を返上した木村ミノル…

もし今の木村ミノルが階級を上げた野杁正明と攻防をせず今回の様な試合運びをすれば…

あれだけ圧倒的な差があった再戦にはなるがおそらく、勝負論のある試合になるだろうm(_ _)m