夫が亡くなって

本人が居ない初めての誕生日。


この日をどう過ごそう…と考えていて


 彼の実家に帰ろう


と、ふと思った。


そして、こんなことが出来るとよいなぁと考えた。


 1️⃣吉本新喜劇を観る


 2️⃣誕生日のケーキを食べる


 3️⃣彼のお母さんに会いに行く


 4️⃣お母さんにありがとうと言う


唐突に思い立って

行き当たりばったりで行動した。


誕生日の予定を死守するために


 仕事を入れないでおこう


と、思って踏ん張ったのだけど

朝一で予定が入り、スロースタートとなった



ショートケーキショートケーキショートケーキ



朝から雨が降っていた。


雨が降るのは、

夫がここに居る、の合図だと思っていて

(夫は雨男だったので)


 実家に帰る気満々なのね爆笑


と思わずにはいられなかった


実家に帰るなら

お母さんに電話を入れとかなきゃ…と

思いながらも


生前の夫の行動が

いつも予告なしのぶっつけ本番だったので


居なくなっても相変わらずか…


と言うのもなんだかな…と思ったりして

途中で一回、実家に電話をしてみた。


が、電話に出んわ…ガーン


留守電にメッセージを残した手前、

あとで何か聞かれるのもな…と思い


兄貴にメッセージを送っておいた。


 大阪に来ています。

 寄れたら、寄ります。

 お母さんに会えたら、会って帰ります。


夫は生粋の関西人なので

吉本新喜劇が大好きで


今でも引き続き毎週録画をしていて


私は夫の遺言だと思って

毎週、その録画を観ている


結局夫とは一回も

吉本新喜劇をライブで観たことが

なかったけれど…悲しい


だから彼の魂を感じたい時には

大阪によしもとを観に行くの。


吉本新喜劇を観劇したあとで

再度、実家に電話をしてみたら


兄貴から伝言があったらしく

お母さんが電話に出て、


 待ってるから、おいでや

 有り合わせだけど、

 ごはんを作って待ってるから

 食べて帰りや


と言ってくれた。


高島屋で苺のショートケーキを買って

お母さんと一緒に

お母さんの息子🟰私の夫の


誕生日を祝おうと思った。



ショートケーキショートケーキショートケーキ



私が一人で

しかも電車移動で


夫の実家に行くのは初めてこと。


でも、道に迷うこともなく

すんなりと着いた。


出発が遅かったこともあり


実家に着いたのは18時で

外はすっかり暗くなっていた。


しとしとと雨も降っていた。


わずか2時間ばかりの

実家での滞在。


母は有り合わせだけど、と言いながら

手作りのごはんを出してくれた。


急に行くと連絡したにもかかわらず


たくさんのおかずを

用意してくれていた。


母のごはんは、美味しかった。


ごはんを食べてから


母と一緒に

夫の誕生日のケーキを食べた。


母は


 このケーキ

 美味しいなぁ

 ホンマに美味しいなぁ


と何回も言って

全部食べてくれた。

(生クリーム、キツかっただろうに…)


母は私(嫁)に


 こんなこと聞くと

 辛いことを思い出すかもしれないけど

 息子は最後苦しかったんちゃうやろか


と、聞いた。


夫は事故死だったので、


 いろんな状況を

 私が聞いて知る限りの判断では、

 夫は即死だったと思います。


 苦しむことなく

 彼自身でさえ、呆気ないほど突然に

 亡くなったんだと思います…


これは、確証していることだったので

そう伝えたのだけど、


自分でも驚くほど冷静に


その時の状況を

母に伝えることが出来た。


母は、それを聞いて

すこしホッとしたようだった。


帰り際に、


母がふわぁっと

私を抱きしめてくれた。


私の腕の中に感じる母の身体は、


とても痩せていて

小さかった。


 お母さん、ありがとう。

 彼を産んでくれて、ありがとう。

 出会ってくれて、ありがとう。

 ありがとう、ありがとう…


ふたりで泣きながら


ありがとう、と言った…


言えた…


夫が私に

乗り移っていたかのような


ありがとう、だった。



ショートケーキショートケーキショートケーキ



兄貴は仕事で帰りが遅いのでと、

会えない前提での弾丸帰省。


新幹線に乗るために、


兄貴には会えずに

地下鉄に乗って帰路についた。


ふと兄貴からのLINEが目に入った。


 JRのダイヤが乱れてるから

 新大阪まで地下鉄で向かった方が良いよ


と、情報をくれていた。


この駅で乗り換えて、と案内をくれていた

ちょうど案内されたその駅に

着いた時だったので


 今、この駅に着きました!


 え!何号車?


 一号車です!


嘘みたいな話…


電車の扉が開くと


兄貴がそこに居た…!びっくり


このタイミングで、大阪のまん中で

家族と会えるなんてあり得ない…びっくり



 奇跡…



でも、これは奇跡でもなんでもなく


 夫が、兄貴に会いたかったんや…


そう思った。



ショートケーキショートケーキショートケーキ



夫の誕生日


実家に帰りたかったのは

夫自身…


家族に会いたかったんやな…


そして、会えたんやな照れ




吉本新喜劇を観に大阪へ