英語を教えるものとして、母国語は一番大切なもの。
美しい日本語の語彙やセンスを蓄える事は
英語講師にとって英語のドラマや本を読む以上に
必要不可欠だと思うから。
最近読み終えたのはこれ。
宮尾登美子氏の『きのね』。
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人気役者の家に女中方向に上がった主人公の半生を描いたと言えば
いささか陳腐に聞こえるかも知れないが
ところどころに出てくる、今はほぼ絶滅した歯切れの良い江戸弁
今では考えられぬほどの貧しさ、病気への恐怖。
そして、堪えて堪えて堪えぬいた昭和の女性の
静かながらも強い意志。
何より私をひきつけたものは、この本の主人公光乃の故郷は
私が勤務する行徳だった事。
光乃は行徳の塩炊きの娘として生まれ、その後実家は廃業するが
幼くして離れた行徳の浜が何度も思い出の中に描かれる。
行徳は埋め立ての街だ。
東西線より南は、元は海、三番瀬の一部だった。
地元に残る「塩焼」「塩浜」という地名が表す通り
塩の生産を生業とする人が多かったらしい。
冒頭に出てきた「貝寄せ」という言葉。
春先の強い風で、波が大きくうねり
砂浜に貝を寄せるから「貝寄せ」という表現を読んだ時に
私の頭の中から、教室前の道路、信号、ビル、住宅がすべて消え
大きく広がる三番瀬に打ち寄せる強い風が見えた気がした。
静かな感動と熱い思いを残して読み終えた。
行徳で塩炊きと海苔の養殖に従事していた人々の多くは
行徳の地価の高騰で今や大金持ちだという事実は
主人公光乃には言わないでおこうと思った

