つづき


なんのために問診票を書いたんだよと。

思い、

「私問診票に書きましたけどね。」

と、チクリと医師に伝えた。


医師いわく、

今からドレナージ両方を施すのだが、

その前に個室に入院するにあたって同意書にサインを記入して欲しいとのこと。


同意書には、

一泊2万円との記載だ。

分かり辛い表記だったが、

実際には室料差額代20000円と書いてあった。

ここまで来て病院から出て行くわけにもいかず、

最大の隔離期間は2週間と伝えられ、

28万円かいっ。。と思いつつ、

肺をなんとかしたいとの思いから同意書にサインをした。

ただ、胸腔から空気を抜いて順調にいけば、

肺の穴が塞がり1週間以内には、退院できる人が多いとのことだった。


サインが終わると、

医師の横には若い朴訥とした研修医が立っていた。

どうやらこの研修医がドレナージ施術をするらしい。

研修医かよ。。と心の中で毒づきながらも。

医師から施術の説明を受けた。

施術は研修医がするようだ。


説明によると、

肋骨と肋骨の間に小さな穴を開け、

そこから胸腔内にチューブを挿入、

挿入されたチューブを介して脱気する。

その後そのチューブは入れたままにして、

専用の容器に接続。容器の名前は忘れてしまったが、

その容器の役割としては、

胸腔から出てくる胸水の受けともなるし、

空気が胸腔内に入らないようにすることである。


説明が終わると、

恐る恐る研修医が横たわる私の横に来て、

局所麻酔を注射した。


痛かったらいって下さいね。


とのことだ。

麻酔が効いてくると、

肋骨と肋骨の間にメスのような器具で、

チューブを挿入するための穴を開けている感じが、

横側から伝わってきた。


どうやら挿入の準備が整ったらしい、

チューブが準備され、

なんともいえない、不快な感覚だが、

チューブがグッ、グッ、グッと挿入される。


感覚的には、

鎖骨のしたあたりくらいまでチューブを走らせると。


プシュー、プシュとチューブから空気が吐出する排気音がした。

同時に、

肺が拡がり呼吸が息苦しさが大幅に改善された。


あ〜救われた。。。


無事施術が完了したようだ。


個室の準備が終わるまで、

エアコンの効いていない部屋で、

呼吸できることの素晴らしさを噛み締めながら、

なされるがままにベットに横たわっていた。


少し時間が経つと、感染対策で防護服で完全防備の看護師が個室まで車椅子で搬送してくれた。

右手には、

点滴を入れながら病院内を移動した。

日頃健康が売りだった自分が、こういう経験をするとは思っていなかったので、

新鮮さを感じた。



個室に着くと、

簡易トイレが置いてあった。

隔離なので、部屋でトイレをしなければならないらしい。

まじか。。

排泄の処理も看護師がやるとのこと。

いやそれは恥ずかしいからいやだ。

と思いつつも、

この状況に慣れるよう努力しようと誓った。


部屋の中を物色しながら、

これから1週間くらい入院か、

折角1週間ぶりに日本に帰国したのに、

娘たちに会えない。

妻にワンオペをさせてしまうことへの申し訳なさ。

親に余裕がなければ、自ずと娘たちにもストレスを与える。

早く帰りたいなとブルーな気持ちに。


仕事はかなりキリの良いタイミングだったので、

そこまで周りに迷惑をかけないタイミングだから、大丈夫だろ。


気胸になるまでの間、

土日は日本の生活を4週間くらい続けていた。平日は、タイ、韓国、中国のいずれかの国で仕事をする生活だった。

コロナが明けてから、

コロナ期間できなかったことを一気にしたいという意欲のもと、

家族を蔑ろにしつつ、出張し続けた。

家族が一番と周りにはいうものの、

行動、時間の使い方は、明らかに仕事を選んでいた。

出張するたびに、

家族に対する想いと行動の矛盾に関してストレスを感じていて、

これ以上やるとメンタル的に乖離が生じすぎると思っていたタイミングでもあった。


そんな時に、

肺が割れた。


話はそれたが、

色々物色している間に、

担当医が部屋にやってきて、

今後の診療計画的な話をしてくれた。


簡単にいうと、

ドレナージ→肺からの空気の漏れが無くなるまで入院


肺からの空気のリークは、

自然治癒または胸腔鏡手術によって、

止めることができるとのこと。


まずは、自然治癒を待ちましょうという事だった。


ちなみに、

ドレナージ施術直後、

肺が膨らむ際に、尋常じゃない咳がでた。

その席とともに、チューブを差し込んでいる容器の液体がブクブクとバブリングしていた。


どうやら肺の穴が塞がれば、

咳や深呼吸した際に、このブクブクが無くなるとのことだ。


このブクブクが無くなり、

約1日、チューブをクランプし、翌日にレントゲンを撮影しても、肺がしっかりと拡張されていることが認められたのち、

脇腹に挿入されているチューブを抜き、

傷口を縫い晴れて退院との段取りらしい。


ブクブクさえ無くなれば退院できるんだ。

なんとなく先が見えた気がするではないか。


その日は、

説明を聞きしばらくすると夕食が出てきて、

食事をした。

思っていたよりとても美味しい。


夕食を食べる前後あたりで、

チューブの挿入部分がとても痛くなってきた。

さらに背中もかなり痛い。

麻酔が切れてきたようだ。


そのため、夕食後には、

ロキソニンと胃薬が処方されていた。


入院中は、3食後に薬を飲むようにも、

医師から説明があった。


夕食後、

病院に来た時よりは明らかにマシだが、

息苦しさを感じたため、

酸素を吸入させてもらった。

酸素があると呼吸が楽だ。

人間には酸素が必要なんだな。そんな当たり前のことを痛切に感じた。


食事をして、腸が動き始めた。便意だ。

簡易トイレは、排水のない洋式トイレのようなもので、便座したにはビニールがセットされていてそこにうんちをする必要がある。


つづく