「書籍(及びそれに依拠したほとんど同一の書籍)を経済的に利用されない営業上の利益」は一般不法行為上保護されるか

 

▶平成27年1月30日東京地方裁判所[平成25(ワ)22400]

3 争点3(一般不法行為の成否)について

原告は,被告が原告書籍に依拠して被告書籍を作成・発行した行為は,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる,原告の営業上の利益という法的に保護された利益を侵害し,しかも,原告の成果物を不正に利用して利益を得たものであるから,公正な自由競争として社会的に許容される限度を超えるものとして一般不法行為を構成する旨主張する。

しかし,「著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当」(最高裁平成23年12月8日第一小法廷判決)であり,原告が主張する,原告書籍(及びそれに依拠したほとんど同一の書籍)を経済的に利用されない営業上の利益というのは,まさに著作権法が規律の対象とする,原告書籍の著作物の利用による利益というべきものであって,著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益とは認められず,本件各証拠によっても,被告の営む事業が,自由競争の範囲を逸脱し原告に対する営業妨害等の不法行為を構成するとみられる事情も認められない。

したがって,一般不法行為を理由とする原告の請求(損害賠償請求)は,理由がない。

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