「何でも一つだけ、 望むものが手に入るとしたら
何が欲しい?」
ぼんやりと 反芻した君は
「かぞく が いいな」
と つぶやいたね。
吐息にのせて、しゃぼん玉を生み出すように
そっと つぶやいて。
僕の視線が 問いただすかのように
感じたのだろうか
すぐに笑って ごまかして。
そんな様子に
ツキリ と 胸がきしんだ。
本当に さびしがりや なのだから。
孤児というわけでもあるまいに。
親とともに 生活しているというのに。
それなのに
「かぞく」が ほしいというのかい。
さびしがりやの くせに
家族に わがままを言わない君。
だからかい?
気がねなく 甘えられる存在としての
「かぞく」というものをほしがるのは。
「良い友達に恵まれている」
そういって笑った君。
それでも
「友達と家族って同義語ではないのよね」
そうも言った君。
ねえ、今でもまだ 寂しいのかい。
エンヌ。