無借金経営で増収増益を続けている優良企業。
この秋、同社からメインバンクに借り入れの
申し込みがあり、銀行は二つ返事で無担保で貸出。
ところが。
実はこの資金は増加運転資金ではなく、
デリバティブの評価損で証言会社に払う追証。
1ドル100円程度の円高であれば利益が出るが、
さらに円高に進むと損失が倍増するような契約を
結んでいたのだ。
契約した担当者は商品の中身を理解できておらず、
今なら販売した金融機関も
金融商品販売法で販売責任を問われる。
メインバンクとしてはたまったものではない。
自分たちが販売したもののであればまだしも、
知らないところで他社と契約されたもので
いきなり不良債権を押し付けられたのだ。
一方、この状況を事業会社から見てみると。
デリバティブ取引をちょっとしただけのような金融機関に
相談できないからメインバンクにお願いしているのに。
ビジネスで一番大切な普段の資金決済も任せているのに
困ったときに厳しい。もう少し親身になってくれないものか。
と写るのだろう。
ここに今の銀行の抱える課題がある。
銀行は事業会社にとって一番重要なはずの
社会インフラとしての「決済」では利益をあげられず、
デリバティブが高収益の商品になっているということ。
「決済サービスを提供する代わりに金利が低い」のが
当座預金だが、ゼロ金利政策が続いたこともあり、
このビジネスモデルが成立しなくなっている。
メインバンクも自分たちでデリバティブを販売するので
「銀行の利益率が高い商品だからうかつに契約しないで」
と啓蒙することもできなくなっている。
いまや大企業であれば、支店ごとの当座預金を集中管理し
無駄な資金を残すようなことはしない。
だから金利が上昇しても昔ほどには預金では儲からない。
だとすれば、
決済でも利益を出せるようにビジネスモデルを修正し、
預金・貸出・為替といった本業に経営資源を投入すべき
ときなのではないか?
個人的には通貨オプションの仕事もしてきたけれど、
本来「たくさん売れてはいけない」商品ではないかと思う。