すこし荒れたような小道が、渓流に沿ってつづいている。
けさの八時すぎから、鉄道沿線の道路を歩いてきて、
昼下がりのいまになって、やっと土の道をさずかった。
道路の紅葉もなかなかよかった。けれどもハイカーには地道がふさわし
い。落ち葉と火山岩を踏む小道は、ちいさい上り下りをくり返してゆく。
地元のこどもたちは、この静かな小道をよく歩くのだろうか。
そのてづくりの道しるべは少し時がたっている。色も褪せている。
秋の光が澄んだ流れに反射している。無数の自然の閃光。その光がどこまで
届いているのかは知らない。
しばらく倒れた木に腰かけて、ふと、この川は流れているのかと。
川は流れるというが、あるいはそれは人の思い込みではないのか。
川はいま目の前にあるように存在していて、それを流れるといっている。
小道は大きな岩のつけ根をすぎる。
こういう風景の先には、なにかしらの変化があるのではと、誰でも思う。
やっぱり。というよりも、予想よりもずっとみごとな滝場だ。
すこしだけ梯子と鎖をつかって、滝の下流の橋に立った。
地形図からして、いかにも平凡そうなその渓谷の、秘宝のような景観。
一日のハイキングのさいごに、すてきな紅葉につつまれたきれいな滝をみた。
「一日の王」は尾崎喜八の詩のタイトル。きょうはこの滝をそう呼ぼう。
川上にきた。 ながれは浅く、木々は水をおおう。
静かなハイキングのフィニッシュは、小笹がはえた雑木林だった。





