大学生の頃の話。

友達がバイトしていたカフェの人手が足りないということで、軽い気持ちで手伝うことに。

店長は優しいイケメンでしたが、シフトは鬼のようでした。

ある夜。

店長はレジで精算中。
私は閉店作業を終えたので、着替えるためにキッチン奥のスタッフルームに向かいました。

キッチンの真ん中あたりに来た時、すぐ後ろから足音がしました。至近距離だったのでドキッとしました。


店長、近い…。


優しいイケメンだったので悪い気はしませんでしたが、慌てた私は気づかないふりをしてスタッフルームに入りました。



しかし店長は入ってきません。



真っ黒なキッチンを覗くと、誰もいません。



表に出てみると、店長はレジにいました。


「忘れ物ですか?」
「え?精算だよ」
「さっきキッチンまで来てましたよね?」


店長は困った顔をして、


「またか…。」


どうやら出るお店だったようです。


店長がいつも疲れていたのは人手不足のせいもあるけれど、これも原因だったそうで。



程なくしてカフェは閉店してしまいました。