Eugenの鑑賞日記

Eugenの鑑賞日記

クラシックCDの名盤やコンサートの鑑賞日記です。

Amebaでブログを始めよう!

 読売日本交響楽団第230回 土曜・日曜マチネシリーズ 鈴木優人指揮 ヴァイオリン独奏:郷古廉 2020年9月13日 池袋 東京芸術劇場

 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、交響曲第6番《田園》 

 久しぶりのブログ更新になりました。ここのところ、さぼりがちでしたが、今日は、久しぶりにどうしても書きたいことがありました。それが、読響演奏会。指揮は、7月5日の読響コロナ後初の演奏会と同じ、鈴木優人さん。そして、ヴァイオリン独奏は、郷古廉さん。注目の若手同士の共演、ということで12日にタイムラインをにぎわせていたため、急遽13日午後に出かけた次第。そういえば、芸術劇場もあの「再開演奏会」以来であった。

 ソーシャルディスタンス配置の客席もこれが最後かもしれないとのこと。隣との間隔があると、その分心身ともに余裕ができると改めて実感。ステージ上の配置も相変わらずソーシャルディスタンスだが、7月の演奏会の時に比べると、人数が増えており、少しずつ「日常」に近づいているのかな、という喜びを感じた。楽団員入場時からの拍手は、すっかり恒例化したか。

 さて、演奏である。前半のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、郷古さんのヴァイオリンは非常につややかかつ伸びやかな音質で、3階席までよく届くクリアな音色。第1楽章のカデンツァは、ティンパニが入ったり、弦の合いの手が入るなど、スリリングであった。ブゾーニのカデンツァのアレンジと聞いている。第2楽章の清楚で気高い雰囲気は白眉だったと思う。カデンツァは、ベートーヴェンのピアノ編曲版のカデンツァをもとにした、自由なアレンジで、文字通りの即興性があった。第3楽章は、速いテンポで活気あり、哀感ありの充実度満点の演奏。鈴木さん指揮のオケは、終始落ち着いていながら、新鮮さを失わないものだった。第1楽章の再現部直前のヴァイオリン独奏のたおやかなメロディを伴奏するファゴットを際立たせているのが特に印象的だった。

 後半の《田園》もまた爽快な演奏だった。快速テンポの第1楽章は、「タンタタタッタ」という主題に含まれた「動機」が楽章全体を支配していると実感させてくれるリズミカルで小気味よい演奏、のどかな第2楽章は、なんてことのないけれど幸福感に満ちた田園の日常を描くようだった。メリハリのついた第3楽章を経て、嵐の描写の第4楽章に入ると、ティンパニ(トロンボーン、ティンパニは第3楽章の前に入場)の烈しいとどろきが会場を震撼させた。まるで、キリストの受難のように荘厳で苦悩に満ちた嵐。完全に異世界であった。そして、第5楽章では、ベートーヴェンが、「神はいつも私たちを見守っている」と言っているかのような喜びの歌が続く。終結近くの、空に大きな虹がかかるかのような場面では、本当に空の彼方に神がいるような予感さえ感じさせた。非常に素晴らしい《田園》だった。

 ベートーヴェン・イヤーの今年の、良き思い出となりました。鈴木マエストロ、郷古さん、そして読響の楽団員の皆様、ありがとうございました。