毎年11月になると、ちょっとだけ憂鬱になる。
あのバナナ臭狂想曲が迫ってくるからだ。
あれがためにテレビもネットもラジオも新聞も、もうよってたかって大騒ぎ。
世界でテロが起きようが、株価が値崩れしようが、もうとにかくこのたった一銘柄のためだけに、作ってもいないわが国ニッポン列島が、飲むだけのニッポン列島が、狂う。

そう、ボージョレである。
ボジョレと言ったりボジョレーといったりややこしいが、私的慣習的にはボージョレと言っている。
いや、そんなことはどうでもいいが、とにかくこのバナナ臭の赤ワインがわがもの顔に歩き回るのが、嫌だ。

今年は21日がその運命の日だ。
あと2週間。
そろそろテレビで「ボージョレ(あるいはボジョレ、はたまたボジョレー)」とがなり立て始めるにちがいない。
しかも、毎年のように、「今世紀で最もおいしい(あるいは、最高の出来の)ボージョレ(あるいはボジョレ、あるいはボジョレー)ができた!」と宣伝している。
毎年、うまさの新記録更新中だ!

そんなバカなことがあるかい!
うるさい! ひっこめバナナ臭!
と、いつも斜に構えて見てはいるものの、何が一番腹立たしく情けないかって、「やっぱ1本は飲んでおくか」という俗物根性丸出しでいそいそと買い物をしている自分(あるいは私自身、あるいはみかっち)である!!

ああ、またこの季節がやってきた。
バナナ臭赤ワインの、年にわずかの楽しい収穫祭のイベントだからもっと大目に見てやれないものか、と批判される向きもあろう。
私もそう思わないではない。
しかし、こぞって騒ぎ立てるニッポン列島の、あの悩みの無いほがらかな笑顔が、ダメである。

やはり今年も苦々しく見ながら、こそっと1本買って飲むんだろうな。
なさけなし。

今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
21日(木)の午前0時になったとたんに乾杯するの、やめませんか?