夏休みになると、その年の3月に卒業した生徒たちがよく遊びに来てくれる。
半年前まで高校生だった面影をまだひきずっている者がいる一方で、まあ、この短い数か月で見違えるように大人っぽくなった者など、様々である。

それでも、

「学校に行ってみらん?」
「うん、行ってみよか!」
「あん先生はどんげしちょっとやろか?」
「さあ、まだ結婚しちょらんで遊んじょっちゃない」

こんな会話を交わしながら会いに来てくれることを、私たちはとてもうれしく思う。

しばし、進学先の学校の話や、友だちの消息や、彼氏や彼女の話やらをひとしきりして、
「じゃ、また来ます」
「うん、またおいでよ。がんばるんだよ」
「は~い。先生もお元気で」
「今日はありがとうね」
「は~い。さようならぁ~」
別れの挨拶は、卒業式の時と違ってきわめてドライで明るい。

しかしながら、卒業して2年目に入ると、学校に来てくれる卒業生の数はぐっと減る。
ま、それは当たり前だろう。
バイトで忙しくなったり、短大生は就活中だったりするし、何よりも心にまだ残っていた高校生の頃の思い出の残滓もすっかり払底して、大学生としての自己が確立するのだから。
卒業生が来なくなるのは彼らが大人になった証拠ということだ。

まあ、それでも、毎年、ごくわずかながら数年前の卒業生がやってきてくれたりもする。
異動のない私立学校だから、定年や産休でないかぎり、お目当ての先生は学校にいるはずなのだ。
そうして、彼らの「今」を熱く語って帰っていく。
そんな話を聞くのも、教師冥利に尽きるということだろう。
話を聞きながら、その卒業生のこれからに幸あれと願うのである。

今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
一方で、まったく来てくれない卒業生もいます。
そちらの方が圧倒的に多いけど、風のうわさで消息を聞くときもあります。
そして思います、幸あれと。